【世界につながる樹脂加工】日東成工(新潟市北区)の技術が半導体産業に頼られる理由

半導体産業界は樹脂加工の技術が活躍する場だ
先端分野で際立つ存在感
「産業の米」という言葉がある。それぞれの時代においてあらゆる産業の基盤となる、欠かすことのできない物資を指す言葉だ。かつて日本の高度経済成長の時代では「鉄」だった。現代は言うまでもないが「半導体」である。半導体産業は今や、地政学的にも大きな影響力を持つ戦略物資に他ならない。
AIやEVが普及し、各地に大型のデータセンターの建設が相次ぐ今、常に最先端技術が必要とされ、投資も莫大なものになる。2025年には、予測よりも5年前倒しで100兆円規模の市場に成長したと報じられている。
半導体産業は産業構造そのもので分業化が進んでいる。半導体の設計、前工程(製造)、後工程(パッケージング・テスト)が分業化されており、材料メーカー、装置メーカー、ファウンドリ(受託製造)など多くの企業が密接にかかわっているが、一方で専門技術、特に微細な加工技術が必要とされるため参入障壁は高い。「半導体産業に身を置く」という企業の付加価値はますます大きな存在としてクローズアップされる。

新潟市北区の日東成工株式会社
新潟市北区に本社を置く日東成工株式会社。同社は屋上防水工事や外壁補修工事などを請け負う「建設工事部門」と、塩ビを含む樹脂製品の加工や加工装置製作を手掛ける「樹脂加工部門」という、まったく違う二つの事業を柱としている稀有な企業だ。半導体産業へと繋がっているのはもちろん後者である。
同社の主な取引先は、半導体製造装置の国内大手メーカーであり、その先には世界市場を席巻するメガファウンドリにつながっている。なぜ樹脂加工技術が半導体産業で重要視されるのか。半導体の製造工程、ウェハーの洗浄・エッチング・レジスト処理などには薬液による洗浄が不可欠だが、金属は薬液に弱く腐食などの影響を受けやすい。硫酸、過酸化水素水、アンモニア、フッ酸などの高純度化学薬品が使用される半導体製造工程において樹脂製の精密部品や装置が存在感を増すのである。

畳よりも少し大きめの樹脂板が切削されて製品になっていく
そうした中で日東成工が「選ばれる」理由は何か。石田忍代表取締役社長は少し考えて「材料の調達、加工から部品の組み込みまで、要するに装置の完成までのすべてですが、それを一貫して請け負えるからでしょう」と話す。
先述したように、半導体産業は分業制が進み、それぞれの専門技術によって担われている。特に日本が世界的なシェアをいまだに有しているのは半導体製造の前工程だが、そこからさらに細分化されている。そうした中で「装置については一気通貫で」という業者であれば、確かに強みがある。
石田社長の「工場を見てみませんか」の言葉に甘え、足を踏み入れることになった。
先端分野における「手作業」そして「女性活躍のステージ」
日東成工の樹脂加工工場は、想像していたよりかなり広大な規模だった。社員50人ほどの規模の工場とは思えない規模感があり、機械設備もごっついものが多い。工場の上部には大型のクレーンも設えられているところを見ると、かなり大型の製品も手掛けているのだろう。冷暖房完備で、作業するにも実に快適な工場だ。事務所や休憩所を含め、会社全体にはフリーWi-Fiも実装されている。
工場に入ると、まず目に入るのは積み上げられた材料、板状の樹脂。これがNCルーターや旋盤で切削加工され、まるでプラモデルの部品のように断裁されていく。

形状はデータ入力され、NCルーターなどで切削される

樹脂にも溶接がある。半導体産業とはいえ手作業が意外に多い
その先には組立場があるのだが、驚かされるのは、半導体産業という先端分野にあって、樹脂溶接(樹脂も溶接される)など細かい部分は意外なほどに「手作業」が多い。なおかつ、そうした精密な作業が求められる工程には女性が多く配置されている。

精密な作業が求められる工程で、女性ならではの繊細な器用さが重用される
「家庭の主婦がほとんどですが、彼女たちはまぎれもなく熟練工ですよ。今の時代『女性が、男性が』と言うのもはばかられるところですが、やっぱり細かい作業に関しては女性の手の方が丁寧ですね。そのため重要な工程は技術力の高い女性にお願いしています」(石田社長)
生産現場を見て気付くのは、同じ形状のものを大量に流れ作業で作っている光景が、ほとんど見られない点だ。オリジナル製品の試作や、部品1点からのオーダーメイド製作に力を入れているのもわかる。工程の下流の方には組み立てられた装置が並んでおり、一枚の樹脂の板が最終的に装置に組みあがるまで一気通貫で完結しているのがよくわかる。こうした多様な要求への対応力は大手がまねできない分野であり、安定した需要獲得への道筋になっている。
半導体製造装置のような最先端分野にして、製造工程では人の手が重要なパートになっている。高付加価値な製品を供給し続ける同社ですら、人材確保に関しては楽ではないという。製造業における構造的な課題だと再認識する。日東成工では、新卒・中途ともに積極的な採用活動を展開中だ。
【日東成工株式会社ホームページ】
https://www.nitto-seiko.co.jp/