【酒の神様がくれたご縁】世界遺産「佐渡金山」の落ち葉から日本酒酵母発見 島内5蔵が同一酵母で酒造り、「にいがた酒の陣2026」で初披露へ

佐渡金山「道遊の割戸」

世界文化遺産・佐渡金山の象徴的な場所「道遊の割戸」から、日本酒醸造に適した酵母菌が発見された。この酵母を使い、佐渡島内の酒蔵5社が酒造りを行う全国的にも珍しい取り組みが進んでいる。3月7日から新潟市で開催される「にいがた酒の陣2026」でお披露目される予定だ。

このプロジェクトは、新潟県が実施主体となる「GFP大規模輸出産地生産基盤強化プロジェクト事業」の一環。新潟県醸造試験場が技術面を支援し、佐渡酒造協会に加盟する天領盃酒造、加藤酒造店、逸見酒造、尾畑酒造、北雪酒造の5蔵が参画している。

発想のきっかけは2022年ごろにさかのぼる。自然界から採取した酵母で酒を造る事例が全国で話題になる中、佐渡酒造協会の蔵元間で「佐渡らしい酵母で酒を造れないか」という声が上がった。2023年7月に新潟県醸造試験場へ相談し、GFP事業の枠組みを活用して本格的な探索が始まった。

佐渡金山「道遊の割戸」付近の落ち葉から酵母を採取する様子(画像提供:佐渡酒造協会)

酵母の採取地点は島内56カ所。森林や果樹園、神社仏閣、陶芸窯元の土壌など、多様な自然環境を対象に、試験場職員と蔵元が実際に島内を巡って調査した。しかし、日本酒の発酵に適した酵母が確認できたのは、わずか1カ所。2024年に世界文化遺産に認定された佐渡金山「道遊の割戸」の落ち葉からだった。

佐渡酒造協会代表で有限会社加藤酒造店の加藤一郎代表は「うれしさと驚きがありました。特に象徴的な場所から見つかるとは思っておらず、酒の神様がくれたご縁のように感じました」と振り返る。

発見された酵母は育種や試験醸造を経て、2025年冬から各蔵で本格的な仕込みが始まった。共通条件は「佐渡金山由来の酵母を使うこと」と「佐渡産米を使うこと」の2点のみ。その上で、各蔵が独自の酒造りを行っており、味わいやアルコール度数には違いが生まれている。

仕込みの様子(画像提供:佐渡酒造協会)

佐渡酒造協会代表で有限会社加藤酒造店の加藤一郎代表

シリーズ名は「佐渡五醸(さどごじょう)」。各蔵名を冠した形で展開される。加藤酒造店では、吟醸香がはっきりと立ち、酸味がくっきりした、従来とは異なる表情の酒に仕上がったという。加藤代表は「初めて使う酵母なので探りながらの仕込みでしたが、吟醸香が立ち、酸味もくっきりした味わいに仕上がりました」と話す。

酒の陣では各蔵114本ずつ、生酒として提供される。一般販売は4月以降を予定しており、火入れした酒として販売する。生酒と一般販売分を合わせた総数は約1,000本。販売方法は、インターネット販売のほか、佐渡島内の酒販店での限定販売を予定している。価格は720ミリリットル入りで、税込2,000円を想定している。

今回は少量生産のため、輸出は見据えていないが、「佐渡金山酵母」という物語は将来的な海外展開やPRの大きな資産になる可能性がある。加藤代表は「佐渡金山や佐渡の地酒を広く知ってもらい、地酒の美味しさや佐渡の文化の奥深さにも触れてもらえたら」と話した。

 

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