工業団地にサウナ&レストラン&工場見学の複合施設 老舗メーカー・青芳が手がける「ARS」、産業観光を牽引

体験型複合施設「ARS」
新潟県燕市に3月5日、体験型複合施設「ARS(Aoyoshi Renovation Studio)」がオープンした。手がけるのは、地元の老舗メーカー・株式会社青芳。サウナ、レストラン、ワークショップ、工場見学などの機能を一体化させたこの場所は、単なる観光施設ではない。同社は「産業観光」をキーワードに、「ものづくりの街」燕三条の地域課題へ挑もうとしている。
薪ストーブのサウナと、弥彦山を望む外気浴スペース

「ARS」のサウナ。周辺には工場が多いため、観光客だけでなく仕事終わりにサウナや食事を楽しむ人でも賑わいそうだ
「ARS」の目玉は、自社設計・施工によるオール国産材の薪サウナだ。壁や床などに新潟県産杉材、水風呂には国産ヒノキを使用。延床面積は約290平方メートル、定員最大20名、利用料金は2,200円。新潟の田園風景と弥彦山を一望できる外気浴スペースも見どころのひとつだ。
青芳の青柳修次代表取締役社長によると、サウナストーブの選択もこだわった。大阪・コロケット社の薪ストーブを採用。サウナ室自体も高い断熱性を備える。一般的な電気ストーブを使用したサウナは高温かつ乾燥しがちだが、薪ストーブは遠赤外線の効果で身体の芯まで温まるという。

サウナの外のスペースには水風呂と温浴槽、シャワーなどが備え付けられている

外気浴スペースからは田園と弥彦山を眺めることができる
薪には併設の木工所や地域から出る廃材などを再利用。「廃棄した方が安く済み合理的かもしれないが、循環型の仕組みをつくることで付加価値になる」と青柳社長。廃棄された電子機器などから貴金属を見つける都市鉱山のように、工場の中にも有益な資源が眠っており、無駄なく使うことで新たな価値を生む。
また、併設レストラン「VINTAGE HALL」でも新たに「サウナ飯」を展開。「青芳スパイスカレー」(1,200円)は、オリジナル配合のスパイスで仕上げたバターチキンに雑穀米を合わせた一皿だ。スイーツには「塩レモンアイス」(400円)を用意。レモンピール入りアイスに岩塩を好みで削りかけるスタイルで、発汗後の塩分補給をコンセプトにしている。

レストラン「VINTAGE HALL」

「青芳スパイスカレー」と「塩レモンアイス」
産業観光の旗振り役に

青芳の青柳修次代表取締役社長
青芳は洋食器製造業から始まり、現在は生活雑貨や福祉用品の企画開発や製造、販売も手掛ける。一方で2020年からは、木製家具やレジン家具の製造、リノベーション事業も開始。今回の施設にはその技術を注ぎ込んだ。
全国各地の地場産業の担い手たちと同様、燕三条の工場も苦境に立たされており、近年は後継者不足や物価高が課題をより深刻化させている。こうした中で注目されるのが、産業観光やオープンファクトリーの取り組みだ。青柳社長は語る。「『工場の祭典』には6万人を超える人が来た。年1回のイベントだけでなく、通年で取り組むことで地域産業の発展の材料になるのではないか」。
構想するのは、工場見学や食事、お土産購入などを一体で楽しめる施設が点在し、特別なイベント日だけでなく、日常的に観光客が訪れる地域の姿。「ARS」は、そうした施設のモデルケースを目指す。

青芳が手がける家具のショールーム

施設内の休憩スペースには県内の観光関連の書籍も置き、周辺地域への観光も促す
「やってみないと変わらない」と青柳社長。「まず、この施設を成功させる。上手くいっている実例がないと、ほかの企業も『ウチでもやってみようか』とはならない」。自社だけでなく、地域全体を巻き込んでいくための「見える成果」を作ることが目標だ。
機械の音が響く工業団地の中に生まれた、サウナと食とものづくりの拠点。「ARS」は、産業の現場を観光へとつなぐ新しい場所だ。地域のものづくりを存続させ、次の世代へ受け継ぐための挑戦が始まっている。
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