【UMAMIの領域展開】 だしパックのフタバ(三条市)が繰り出す「多彩なパンチ」に驚愕、だしカフェ展開から野菜工場、チョウザメ養殖まで

株式会社フタバの江口晃代表取締役社長
稀代の発明「だしパック」
株式会社フタバ(三条市)の歴史を紐解くと、同社が類まれなる発想力によって作りあげられた会社だというのが良くわかる。
会社の設立が1966年。会社を大きく成長させたのは日本初の業務用「だしパック」。「鰹節や昆布、乾物の販売で身を立てて」という前段はない。現在のフタバは「だしパック」から始まり、その延長線にある。日本に輸入され始めた紅茶のティーバッグにヒントを得て「これにダシを入れたら」と創業者が発想したのだという。この人物が、現代表取締役社長である江口晃氏の祖父にあたる。

フタバの礎を築いた業務用だしパックの発明
おりしも日本は高度経済成長によって、全国にホテル・旅館が急激に増加した時期。手軽に、簡単にだしを取れる業務用だしパックは、全国のホテル、外食産業で急速に普及し、だしのフタバの礎を築いた。
これ以降の同社は、業務用だしの製造販売に徹する一方で、三条市西本成寺に「中央研究所」を設立し、かつお、昆布、煮干し、しいたけ、野菜など、ありとあらゆる「うま味」への研究を深め、まさに「ダシを科学する」メーカーとなった。その品質の高さから、業務用だしの市場では圧倒的な強支持を集め、確固たる販路網を築き堅調な成長を遂げた。さらにだしパック100種類以上、削り節100種類以上という多彩なアイテム群を築くことにもつながった

中央研究所では「うま味」の分析が行われる
UMAMIのグローバル化、BtoC市場への参入
2000年代に入り「うま味」は国際的な食科学界において「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」に続く「第五の味覚」として認知されるようになる。日本にルーツを持つこの味覚は、国際的にも「UMAMI」と表記されている。日本食ブームも相まって「UMAMI」は世界的に認識されるに至った。

一般消費者向けのギフト向けパッケージ
江口社長は29歳でフタバを事業承継した。多くの社員が自分より年上であり、だし屋としての経験値も商品知識も上という環境下での新社長就任。そうした中で、江口社長はこれまでのBtoB路線一辺倒から、一般の消費者を対象とした路線へもシフトする。
「業務用だしパックは、あくまでプロの調理場に置かれているものなので、一般の目には触れません。地元の三条市でも『何を売っている会社なのか』を知らない方は多い。UMAMI=だしを通じて様々な提案をしていくことで、だしから広がる食文化を多くの人に知ってもらいたい」(江口社長)
2017年に自社ブランド「ON THE UMAMI(オン ザ ウマミ)」を立ち上げ、ギフト市場を中心にBtoC市場へと参入した。「UMAMI=だし」は商品開発の拡張性を一気に広げる。従来の調味料としての使い方から、炊き込みご飯の素、乳幼児の離乳食、さらにはハンドドリップでコーヒーカップに注いで、くつろぎの時間に楽しむ「飲むおだし」など、抜群の商品開発力を発揮していく。中央研究所で続けてきた、UMAMIに関してのたゆまぬ研究が生きている。それらの多彩な商品群がデザイン性あふれるパッケージで展開され、これまでだしに接する機会の少なかった若い世代にも、だしの新しい楽しみ方を提示した。

世界基準の衛生管理体制を持つ生産工場
また海外市場への参入も積極的に行い、韓国、台湾、タイ、シンガポールなどアジア諸国や北米、カナダなどにもジェトロやNICO(にいがた産業創造機構)の後押しを受けて拡大。グローバルな見本市にも参加し、パートナーとなる現地販売代理店を通じて広げていった。特に海外進出しているラーメンチェーンや手打ちうどんのチェーンを通じての市場開拓が、ここまで成果を見ている。この10年で輸出先は20カ国にまでなった。
2010年にHACCPを取得し、2020年にはFSSC22000・ISO22000認証も取得した。こうした衛生管理体制も、国内外の取引先からの信頼につながっている。化学調味料、保存料などを使わず天然素材から作られる動物由来ではないダシについては、欧米で広がりを見せるヴィーガン市場もターゲットになりそうだ。
「だしをUMAMIと捉えれば、鰹節や昆布に限らず、大豆、発酵食品、野菜などにも可能性が広がる。素材を組み合わせることで、うま味の相乗効果も生まれる。この文化を多くの人に伝えていきたい」と江口社長は語る。

2023年にオープンしたカフェ&LAB「
2022年には三条市西本成寺の中央研究所に隣接する用地に、アンテナショップとカフェの複合施設「ON THE UMAMI~ TSUBAME SANJO PORT ~」がオープン。カフェで提供される「ダシのうまみを感じる」スイーツの数々は、消費者への新たな提案となり、連日多くの利用客でにぎわっている。
同施設では「体験や学びを通して、ダシをもっと知ってほしい」との思いから、参加者が用意された素材を組み合わせて「オリジナルだしパック」をつくるイベントを、定期的に開催している。

LABでは定期的に「オリジナルだしパック」をつくるワークショップを実施している
新たな挑戦~野菜工場とチョウザメ~
フタバの目下のチャレンジ領域は「野菜」だ。野菜が持つ天然のUMAMIに着目し、ダシに活かそうという。自社で畑を耕作し、野菜作りを行うところから手掛ける。同社では「野菜のだしパック」も商品化されているが、そこに使われている玉ねぎは燕市に耕作する自社の畑で栽培されたものが用いられている。
さらにカフェで提供されるサラダに使うレタスは、隣接地にあるプラントで水耕栽培されている。

江口社長は「ただの水耕栽培では面白くないので」とほくそ笑む。このプラントは、まだ日本では数少ない「アクアポニック」を導入したものだ。
アクアポニックスは水産養殖と水耕栽培を合わせた新しい生産システムで、野菜と魚を並行して育てる。90%の節水と物質循環(魚からアンモニアの排泄→微生物による硝酸塩への分解→植物の栄養素として吸収、浄化された水→魚のいる水槽へ)による高効率の食料生産を可能にする、サステナブルな循環の仕組である。2025年に開催された大阪万博ではアクアポニックスの展示ブースが注目を集めた。

水耕栽培されるリーフレタス

大型の水槽にはチョウザメが養殖されている
ここで養殖されているのがチョウザメだ。3つの超大型水槽に約1,500匹が養殖されている。日本国内のチョウザメ養殖プラントとしては最大級の規模だ。江口社長は「いずれキャビアの採取も軌道に乗せたい」と言う。
UMAMI=だしの柱の元、幅広い領域への展開や豊かな発想力を支えるのは、だし屋として質が担保された実力であろう。今後の展開からも目が離せない。
<グーグルマップ ON THE UMAMI TSUBAME SANJO PORT >