発達障害への理解深める企業向けセミナー 12社17人が参加、職場での「小さな配慮」学ぶ(新潟県長岡市)
2024年4月から改正障害者差別解消法が施行され、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化された。内閣府の「令和7年版障害者白書」によると、2023年10月から2025年3月まで試行された障害者差別に関する相談窓口「つなぐ窓口」には4,602件の相談が寄せられ、障害種別では発達障害が477件(10.3%)となった。法制度の整備が進む一方、職場など実際の生活の場で、個々の特性に応じてどのように対応するかが課題となっている。
こうした状況を受け、長岡市は2026年9月4日、市内企業の管理職や人事担当者らを対象に「多様な人材が活躍する職場づくりセミナー」をミライエ長岡(長岡市大手通)で開催した。発達障害の特性を知り、職場での適切な配慮や関わり方を実践的に学ぶもので、昨年に続く2回目の開催。今回は12社から17人が参加した。
昨年の初開催では、発達障害の特性を「弱点」ではなく「能力の違い」と捉え、会社と当事者が互いに歩み寄ることの重要性などが伝えられた。今回はその内容をさらに広げ、職場で起こり得る具体的な場面を取り上げながら、業務の割り振りやコミュニケーションの方法、合理的配慮の実践について考えた。
講師を務めたのは、昨年と同様、合同会社mojo(モジョ)の岩切健一郎代表である。同社は、発達障害者が働きやすい企業をつくる研修プログラムを広めるために設立され、当事者の感覚と産業医の専門性を掛け合わせた研修を展開している。

講義で岩切代表は、発達障害のある従業員への対応では、診断名だけで判断するのではなく、本人が何に困っているのかを理解することが重要だと説明した。表面的な行動だけを見て「仕事ができない」と決めつけるのではなく、本人の得意なことや能力に目を向け、力を発揮しやすい環境を整えることが必要だとした。
その上で、職場でのコミュニケーションについて、具体的な対応方法を紹介。話しかける際には相手が作業に集中しているかどうかを考え、必要に応じて事前に用件を伝えることや、口頭だけでなくメールやメモなど後から確認できる方法を併用することなどを挙げた。
指示の出し方についても、「なるべく早く」「ざっくり」といった曖昧な表現を避け、いつ、どこで、どのように行うのかを具体的に伝えることが有効だと説明。複数の業務を同時に進めることが難しい場合には、仕事を細かく分けて段階的に渡したり、工程ごとに確認するポイントを設けたりするなど、業務そのものを組み立て直す方法も示した。
こうした配慮について岩切代表は、発達障害のある人だけのための特別な対応として捉えるのではなく、職場全体の働きやすさにつながる仕組みとして考えることが重要だとした。仕事の渡し方や情報共有の方法を見直すことは、新人や繁忙期の従業員にとっても有効で、結果として組織全体の生産性向上につながるとの考えを示した。
座学に続いて行われたグループワークでは、実際の職場を想定した事例をもとに、参加者が対応方法について意見を交わした。昨年より幅広い内容を扱った今回は、グループワークも活発に行われたという。

参加したながおか医療生活協同組合の介護福祉士、西村研二さん(53)は、セミナーを通じて「小さなことの積み重ね」の大切さを実感した。日常の中の小さな気になる点が、将来的に大きな問題につながる可能性があることを学んだといい、「これまでの自身の経験に関連する点も含め、有益だった」と振り返った。

また、日本郵便株式会社信越支社で職場のダイバーシティ推進を担当する上村亜由香さん(30)は、「診断名は必須ではない」という点が印象に残ったと話す。仕事ができない理由は人によって異なるため、診断名にとらわれず、一人一人の困りごとを丁寧に聞き、特性に応じて対応することが重要だと学んだという。

長岡市商工部人材・働き方政策課の星野康也課長は、「法定雇用率の上昇などを背景に、企業側の障害者雇用や発達障害への関心は高まっている」とする。今回のセミナーも、「企業が障害のある人を受け入れる際に、制度上の対応だけでなく、日々の職場環境や仕事の進め方まで含めて考える機会になれば」と期待を寄せた。
長岡市では、今後もこうした相談活動を通じて企業のニーズを把握し、障害のある人が働きやすい職場づくりに向けた支援を続けていく方針だ。
(文・写真 北条隆士)