【社長インタビュー】M&Aで高める提案力 変化に対応できる会社へ、タカヨシ・高橋佑代表

株式会社タカヨシの高橋佑代表取締役
株式会社タカヨシ(新潟市江南区)は1920年創業。紙袋製造を祖業とし、現在は商品パッケージやラベル印刷、ノベルティ制作のほか、企業のプロモーションやブランディングなども行っている。県内では、老舗・加島屋の手提げ袋や、新潟ご当地キャラクター「レルヒさん」の企画・デザインなど、県民に身近な仕事も数多く手掛けてきた。
こうした中、2020年以降同社は積極的にM&Aを行い、印刷だけでなく、イベント運営や動画、ウェブまで、ワンストップで対応できる体制を整えている。単純な規模の拡大ではない。高橋佑代表取締役が重視するのは、「顧客の価値と成果の最大化」を可能にする選択肢を揃えること。そして、変化の激しい現代に対応できる筋肉質な組織づくりだという。
提案力を高めるM&A

高橋代表はタカヨシについて「先代、先々代も印刷業という括りではなく、顧客が欲しいもの、顧客が良くなるものを提供する、という信念でやってきた企業」だと語る
タカヨシは2020年、株式会社アド・メディックの全株式を取得し、同社をグループ会社の株式会社ディモルギアと合併した。ディモルギアは同年、タカヨシの企画制作部門を分社化した会社で、現在はイベント・展示会など幅広い企画と制作を行っている。また、2022年5月にはWEBやSNSマーケティングの株式会社デジプルを設立。同年11月には映像制作の株式会社MAD PRODUCTIONを完全子会社化し、2026年3月には広告デザインやウェブ制作などの株式会社桐朋(新潟県上越市)から事業譲渡を受けている。
映像制作やウェブ制作など、周辺領域まで広げるM&Aは案件ごとに狙いが異なるが、会社を筋肉質にして「顧客のニーズに応える」という方向性は変わらない。「弊社のミッションは『顧客の価値と成果の最大化』。顧客が何を求めているのか、どうなりたいのか、にしっかり共感した上で提案している。ゴールは印刷することではない。最終的に印刷なのか、動画なのか、ウェブなのか……様々な選択肢を提供できることが弊社の強み」と高橋代表は語る。

加島屋、小嶋屋、県内酒造メーカー……数多くの商品パッケージやラベルなどを手掛けてきた

タカヨシのデザイナーが毎月制作している「デザインカレンダーハガキ」は、新しい印刷技術の試作であると同時に、デザイナーが自分のアイデアを試す機会にもなっている
また、タカヨシは先代、先々代の時代から営業に力を注いでおり、営業部門にも多くの人員を配置している。M&Aや事業譲受で加わった各社の力を、タカヨシが培ってきた営業力と組み合わせることが、グループの強みになっている。
一方で、高橋代表が重視しているのは単に商品を売り込むことではなく「ストーリー営業」だ。例えば、顧客から「カタログを作りたい」「WEBサイトをリニューアルしたい」と相談されても、それ自体を目的にはしない。なぜ必要なのか、現在どんな課題があり、最終的にどのような姿を目指しているのかまで掘り下げた上で、印刷、動画、ウェブ、イベントなどを適切に組み合わせ、ディレクションする。
「顧客自身が、自分たちのニーズや課題に気付いていないこともある。顧客のストーリーをきちんとつくった上で、その中で我々がどんな機能を提供できるのかを考えることが大切。この考え方を社内でも徹底している」(高橋代表)。
こうした営業スタイルが成果として表れている市場の一つが東京だ。高橋代表によると、以前は新潟と東京の売上規模は同程度だったが、近年は東京の割合が徐々に高まっている。新潟の売上が大きく変化していない一方で、東京での伸びが全体を押し上げている形だ。中でも成長しているのがプロモーション分野で、特に展示会の引き合いが強い。高橋代表は東京について、これまでの人間関係や取引関係だけではなく「提案が良ければ採用される」市場でもあると見る。タカヨシが蓄えてきた営業力と、M&Aなどによってつけた力を発揮できる市場として、東京の存在感は高まっている。
「前後際断」5年後10年後よりも、この1年を全力で

高橋代表が心掛けているのが「前後際断」という言葉だという
高橋代表の経営観を象徴するのが、中期経営計画を策定しないという方針だ。
「来年、世界がどうなっているかなんて誰にも分からない。コロナ禍も、現在の国際情勢も誰も予想できなかった」と高橋代表。5年後、10年後を決めてもその通りになるとは限らない。また、計画を決めることで社員がそれに縛られ、一方で計画を変更すれば社員から不満が出る。だから、タカヨシでは中経ではなく1年ごとに目標を設定している。だが、それも状況が変われば途中で戦略を変える。「4月に決めたことでも、5月に『違う』と思ったら変えればいい。それをそのまま1年間続ける必要はない」(高橋代表)。
こうした経営姿勢にも通じる言葉として、高橋代表が現在大切にしているのが禅の言葉「前後際断」だ。「過去を悔やんでも戻れないし、未来を憂えても、まだそこには行けない。結局あるのは『今』。だから社員にも、今を全力でやろうと言っている」。
ただ、変化に対応するには準備がいる。新たな需要が生まれた時、「やろう」と決めても、人材やノウハウがなければすぐには動けない。M&Aなどを通じて機能を増やしてきた背景には、その考えもある。先を読み切ることが難しい時代だからこそ、変化に備え、必要な時に動ける土台をつくる。その積み重ねこそが、100年を超える企業が次の時代へ進むための強さなのかもしれない。

タカヨシ(新潟市江南区、写真提供:タカヨシ)
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