27億年前の微生物も「日焼け止め」を使っていた? 新潟大学などが岩石から探る
今からおよそ27億年前の地球には、酸素もオゾン層もほとんどなく、強い紫外線がそのまま地表に降り注いでいた。生き物にとってはとても過酷な環境だったが、そんな時代を生きた微生物たちは、二酸化チタンを「天然の日焼け止め」にして紫外線から身を守っていたのかもしれない。新潟大学などの研究グループが、西オーストラリアに残る岩石を調べ、その可能性を示した。
二酸化チタンは、私たちがふだん使っている日焼け止めにも、紫外線を防ぐ主な成分として含まれている。はるか昔の小さな生き物たちも、私たちと同じ物質の力を借りていたことになりそうだ。
研究の手がかりになったのは、ストロマトライトと呼ばれる層状の構造物だ。シアノバクテリアなどの微生物の活動によって細かな層が積み重なってできたもので、地球の初期の生命活動を示す代表的な痕跡の一つとされている。今でも一部の浅い海や塩湖で見ることができるという。研究グループは、西オーストラリアのピルバラクラトンに広がる約27億2千万年前の地層「タンビアナ層」で、このストロマトライトを詳しく調べた。
岩石の中をのぞいてみると、直径1~3マイクロメートルほどのとても小さな管が見つかった。管は曲がったり枝分かれしたりしながら伸びていて、中はカルシウムとチタンを含む鉱物「チタナイト」でぎっしりと埋まっていた。
こうしたチタナイトの管はこれまで主に火山ガラスの中で見つかっていて、微生物が岩石を溶かしながら掘り進んだ跡の化石(生痕化石)ではないかと考えられ、最古級の生命の痕跡の候補として注目されてきたという。ストロマトライトの中で見つかったのは、今回が初めてだそうだ。
ところが、透過型電子顕微鏡などを使って原子のレベルまで詳しく調べてみると、この管は微生物が掘った跡ではなかった。有機物や黄鉄鉱の周りで岩石が部分的に溶けてできた細い通り道を、後からチタナイトが満たしたものだと分かったという。
それでも、微生物とのつながりがなくなったわけではない。管を埋めるチタンが集まった背景には、当時の微生物が関わっていた可能性が高いそうだ。
研究グループが思い描いた筋書きはこうだ。水辺に広がった微生物の群れが、紫外線から身を守るために二酸化チタンを作る。やがて地中に埋もれて地熱で温められると、微生物の有機物が分解して酸が生まれ、その酸が岩石を溶かして細い管ができる。さらに年月がたつうちに、二酸化チタンやメタンなどを含む流体からチタナイトができて、その管を埋めていったとみている。周りの炭素を分析した結果からも、生き物に由来するメタンがこの反応に関わっていたことがうかがえるという。

チタナイトの小さな管ができるまでのモデル。左から、紫外線を浴びる微生物が二酸化チタンをため込み、岩石が溶けた跡をチタナイトが埋めていく(新潟大学の資料より)
今後は、実験室で当時の環境を再現したり、シミュレーションを行ったりしながら、微生物がチタンを集めて二酸化チタンを作る仕組みや、紫外線を防ぐ効果を確かめていくことが望まれるとしている。強い放射線にさらされる火星や氷衛星などで生命の痕跡を探す研究にも、役立つことが期待されている。
この研究は、新潟大学理学部のM. Satish-Kumar教授や同大学大学院自然科学研究科博士後期課程のS. Kiranさん(研究当時)、産業技術総合研究所地質調査総合センターの中村佳博主任研究員、東京大学大学院理学系研究科の大藤弘明教授らのグループが、オーストラリアのカーティン大学と一緒に進めたもの。成果は9月2日に学術誌「Geoscience Frontiers」に掲載され、新潟大学が10月23日に発表した。