【連載】新潟の教育 第2回「新潟コンピュータ専門学校 ゲームクリエーター科・eスポーツ科」


ゲーム制作現場に必要とされる人材とは

NSGsquare1階、NSGeスポーツスタジアム

新潟県内の高等教育機関へ取材し、教育と企業の関わりについて検証する連載「新潟の専門学校・大学」。前回は、新潟コンピュータ専門学校の「情報システム科」と「AIシステム科」を取材し、企業との積極的な人材育成協力と県内企業の展望を見ていった。第2回となる今回は、同じく新潟コンピュータ専門学校から「ゲームクリエーター科」と「eスポーツ科」を取り上げる。県内では類を見ない独特の学科だが、その学習スタイルや就職状況には、ゲーム業界ならではの状況があるようだ。

まずは、ゲーム業界が必要としている人材について見ていこう。VR、ARなどの先端コンテンツを製作するGugenka®のテクニカルディレクター・エンジニアの姫路拓也氏は、やはり他のIT業界と同様にチームワークやコミュニケーションの能力が重要だという。ゲーム業界では特に、大まかに分けると企画職、デザイン職、プログラマーが一体となって働く。作品の設定や世界を実現したいクリエーターと、実際に実装するプログラマーの中で意見が対立することもあり、そうした状況をうまく調停し、作品を作っていかなければならない。「まず相手の話を聞こうとする姿勢が重要。技術的に高い能力を持つ人ももちろん重要ではあるが、しっかりとコミュニケーションをとって、チームで作品を高めていこうという気概のある人の方が入社後には伸びる印象がある」(姫路氏)。

また、ゲームをする側ではなく、ゲームを作る側に回るということは、相応の情熱が必要になってくる。姫路氏は「やはりゲーム製作を仕事にしようとすると、『なんとなくゲームが好き』ではなくて、かなり強い好きという気持ちを持っていないといけない。学校で教えられて作品を作るだけじゃなくて、プライベートでも自主的に作品を製作して、SNSなどで発信しているぐらいの情熱がある人も近年は多い」と話す。

左から、ゲームクリエーター科学科長の川原健氏、ゲームクリエーター科3年の佐藤智希さん、eスポーツ科講師でプロゲーマーの農頭恭平氏、Gugenka®統括・プロデューサーの三上昌史氏とテクニカルディレクター・エンジニアの姫路拓也氏

eスポーツ科を担当するプロゲーマーの農頭恭平氏も同様に、チームワークと人間性を強調する。「ゲームが強いというのはもちろん大切だが、それはもはや基本。団体戦競技ではチームワークが大切だし、プロゲーマーとして人の前に立って活動していく以上、人間性がしっかりしている人でないと、見ている側としても楽しくない」。

 

企業と積極的に関わることができる専門学校の強み

ゲームクリエーター科では、ゲームプログラマの育成を中心に、プログラミングや3DCGのモデリングなどの授業を行っている。また、企画職としての教育は、選択授業として展開している。

今年新設されたeスポーツ科では、プロゲーマーとしての育成と、ゲーム制作の授業を並行して行っている。農頭氏は「プロゲーマーという非常に狭い門のために教育するのではなくて、しっかりと生徒の就職先を作ってあげられるように教育しないといけない。ゲームを通して、社会に必要なPDCA(計画・実行・評価・改善)もしっかり学んで欲しい」と話した。全国的にも貴重な学科であるため、入学者は県内外から集まるという。

ゲーム関係の学科でも、実際の企業で働く社員を講師として呼び、公演や特別授業を行っている。姫路氏は、同校の卒業生である縁から昨年までVRやARなどに関する授業を行っていた。こうした取り組みにより、生徒へ授業と仕事の違いに気づきを持たせることが重視しているようだ。

実習の様子

ゲームクリエーター科3年の佐藤智希さんは、チームでの作品製作の経験が何よりも貴重であったと話す。近年はゲーム製作のツールやノウハウが普及してきているが、グラフィック担当などの人員の確保や予算などの面で本格的な開発は未だハードルが高い。スケジュール管理や役割の分担などを含めて現場の感覚を掴むことができるのは、専門学校ならではの体験と言える。

また同校では、企業を招いてのゲームプログラムとCGグラフィックの作品添削会を学年前期と後期に1回づつ開催している。企業からは開発者から人事担当、中には社長も参加し、目にとまった学生とコミュニケーションをとる。佐藤さんは「1年生の時、初めての添削回では『こんな未熟な作品を出していいのか』と思い、参加したくなかった。でも経験を積むうちに、どうすれば人に面白いと思ってもらえるか、と考えるようになり、2年生の頃には作品作りへの意気込みが湧いていた」と話す。学生にとっては、自分の作品がプロに評価される嬉しさと同時に、作り手としての意識変化が誘発される機会でもあるようだ。企業の側から見ても、面接試験よりも学生の人間性やパーソナルな部分が見える機会になると姫路氏は話す。

 

就職は関東に集中

新潟コンピュータ専門学校では、ゲームプログラマの育成を中心に据えているため、卒業生の職種も多くがプログラマ、またはエンジニアとなる。実際にゲーム開発を行うデベロッパーの企業へ就職し、キャリアを積んでいくことで、よりハイエンドなゲーム開発企業や、ゲームの企画・販売を行うパブリッシャーの企業へ転職していく人も多い。また、ゲーム業界だけでなくIT系へ進む学生も存在する。

一方で、他のIT関連学科と同様に卒業生の約8割は関東へ就職し、県内に残る生徒は2割程度。ゲームクリエーター科学科長の川原健氏は「やはり入学生や受験生も、ほとんどの子が県外就職になることを理解している。企業の地方化が進む兆候は見られるが、関東圏や近畿に拠点を置くゲーム企業がわざわざ新潟に支社などを置くメリットは薄く、新潟にゲーム企業は増えないのが現状」と話す。

VR・ARの実習も行っている

 

これからのゲーム業界はより海外志向に?

Gugenka®の統括・プロデューサーの三上昌史氏は、今後Gugenka®はよりワールドワイ
ドに展開していくと話す。「国内向けだけにコンテンツを開発、発売していくだけでなく、海外でも購入できるように作っていかなくてはいけない。そのために首都圏に留まらず、地方や海外のクリエイターを採用し、その価値観を作品にも反映していきたい」。
Gugenka®は、2018年にフィリピン首都マニラにスタジオを設置。海外クリエイター
の採用にも積極的だ。今後、日本のゲーム開発の教育でも、海外市場を見据えた幅広い視点
が必要となってくるかもしれない。

農頭氏はeスポーツという世界について「eスポーツも新型コロナウイルスの影響で、注目されるようになった分野の一つだと考えている。もともとゲームというのはオンライン化が進む現代と相性が良い。一箇所に人が集まらなくても、面白いコンテンツを作ることができるということが認知され加速していけば、人の需要も増えていく」と話す。プロゲーマーだけでなく、近年はゲームプレイをYoutubeなどで配信する人も急増している。これからこの分野がどのように成長していくのか、注目したい。

 

ゲーム業界を目指す人々へ

最後に、ゲーム業界を志す学生たちへのアドバイスを聞いた。

川原氏は「現代は、情報過多な時代だと思う。選択肢が多すぎて自分が何をしたいのか分からないという人も多い。分からないのであれば、とりあえず飛び込んでみて欲しい。当校ではオープンキャンパスを定期的に開催している。新潟県の人にとっては、地元にこうした環境があるのは貴重だと思う」と話す。

農頭氏も「なんとなく好きなものではなく、自分が本当に好きだと言えるものを見つけるためには、業界を知った上で、さらに他の世界にも目を向けて判断していく必要がある」と業界へ積極的に触れていくことを勧める。新潟コンピュータ専門学校では、3月まで毎月2回ほどのペースでオープンキャンパスを開催している。

eスポーツスタジアム 外観

実際にゲーム業界で働く姫路氏は、「『ゲームが好きだ』という気持ちを持って、周りに飲み込まれないようにして欲しい。ゲーム制作の学校へ進学する選択をしたからには、信念を持って勉強していってもらえば、卒業する頃には企業から見ても優秀と思える人材になっている。遊びでやっていたものを、どう変化させていくのか、学生には考えて欲しい」と話す。

佐藤さんは「ゲーム作りはすごく難しいと思っている人が多い。でも、自分自身専門学校に入ってからプログラミングなどを始めて、ゲーム業界に就職することができた。最初から何もやらずに諦めるのではなくて、新しい世界へ挑戦して、しっかりと努力することで、ちゃんと自分がやりたいことをすることができると伝えたい」と自身の経験を交えてアドバイスを送った。

【新潟コンピュータ専門学校】



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