湘南出身の若手経営者が挑む新しい八百屋の形、新潟県十日町市の八百屋「まつだいや」オーナー坂本竜司さん


有限会社松代ハイテクファームの坂本竜司代表取締役

神奈川県湘南の出身で、現在30歳の有限会社松代ハイテクファームの坂本竜司代表取締役は地元の高校を卒業後、歯科医師向けの商社に就職し、1年間営業の仕事に就いた。その後、弱冠20歳で起業した。

「高校生の時から何かしらやりたいと思っていた」と話す坂本代表取締役。起業は衣食住で考えていたが、着るものには興味がなかったほか、不動産などは資金がかかることなどから、食にしようと決めたという。

「たまたま、家の近くに軽トラックで野菜を直売している農家がいた。そこで食べたニンジンが美味しくて、『これをやろう』と会社を辞めて起業した」(坂本代表取締役)。

だが、資金は10万円ほどしかなかった。

「親戚から借りたほか、親戚が茅ヶ崎で不動産業を営んでいたので、お願いして一発目から茅ケ崎に10坪くらいの八百屋の店を出した」と回想する。これが21歳のころだ。

「半年でつぶれる」と周りからは言われていたが、契約更新まで3年間続けた。このころから、市場(いちば)を通さずに、農家と直取引をしていたという。

「最初はどこも契約してくれず、かなり苦戦していた。当時は農家のメリットもないので、とにかく『お願いします』と言うしかなかった。まわりからはつぶれると思われていたが、自分では『今に見ていろ』と思っていた。今でも常に反骨精神でしかやっていない」と語る坂本代表取締役。

「コロナの時は一番危なかった。2020年の1年間は365日のうち300日はつぶれると思っていた。それくらいの経営難だった。館が閉まっているので、店は営業できないし、卸先の飲食店も当時は緊急事態宣言でダメだった。売り上げは10分の1になり、給付金ではどうにもならなかった」(坂本代表取締役)。

従業員はアルバイトを含めて20人ほどいたが、給与はすべて坂本代表取締役が負担して払った。「相当赤字を食らい、半端ではなかった。地獄中の地獄だった」と振り返る。

「毎月3ケタずつお金が出ていく感じだった。借り入れもしたが、1,500万円を借りても3、4か月でなくなってしまった。結果的に追加融資になった。正直、未来がある借金ではなく、生き残るための借金だった」。

一旦コロナ禍を乗り切り、2021年の夏に新潟県十日町市にあるハイテクファームの改装工事を着工した。現在は、物流センターとしての機能を持つ拠点として、大規模な野菜用の冷蔵庫となっている。

八百屋「まつだいや」の外観

1週間の半分は十日町市におり、湘南との2拠点生活だ。東京でも営業しており、高級スーパー「クイーンズ伊勢丹」、「無印良品」横浜駅店などに野菜を卸している。「クックパット」のネット販売も展開しており、十日町市産のコシヒカリを2日間で800キログラム販売したこともあるという。

十日町市には、当時の松代町商工会の事務局長が茅ヶ崎出身だったという繋がりで、23歳のころに十日町市に初めて来た。当初は茶豆の仕入れだけだったが、2021年1月ころに全日食チェーンが閉店したことから、今年4月から「まつだいや」を始めることになった。

十日町市では、コシヒカリやメロンの栽培もスタートするなど新たな挑戦も始まっており、「まつだいや」は関東などからの産地直送野菜や手作り弁当などで特色を打ち出している。神奈川県三浦半島のキャベツは、坂本代表取締役が自ら収穫している。また、変わったところでは、パイナップルは沖縄県の西表島産だ。

「僕はすぐ飽きる人間だが、起業家は飽きない。サラリーマンは面白くなかった。仕事を覚えてしまったらそれまで。新しいことは自分でやった方が面白い」と話すが、坂本代表取締役の先祖も石炭鉱の会社を経営していたほか、祖母の兄弟は不動産会社や歯科医など、周辺には経営者が多い。その血統もあったのか、家族や親戚は八百屋の起業に反対せず、応援してくれたという。

湘南出身の若き起業家の挑戦はこれからも続く。

ウリでもある農家直送の野菜

パイナップルは沖縄県からの直送だ

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(文・撮影 梅川康輝)



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