「地域おこしNPOはあくまで脇役」、新潟県上越・中越地域NPO法人の県外出身者たちの苦悩と希望


NPO法人かみえちご山里ファン倶楽部の松川菜々子理事兼事務局長

かつて地域を変えるのは「よそ者」「若者」「ばか者」の3者と言われた。日本で起こった変革は、しがらみにとらわれない人たちによって行われたことが多いが、この場合の3者とは、いわゆる「外の眼」がある県外出身者(よそ者)、そして行動力のある若者(若者)、さらに常識にとらわれない地元の人(ばか者)などのことだ。

しかし、近年はこの定説に疑問を呈する声も聞かれるようになった。成功している、あるいはその兆しがあるという事例において、プロジェクトに「若者」や「よそ者」が入っていない、「ばか者」と呼ばれる人も不在であるというケースが多くなってきたという論考もネット上などで発表されている。

今回は新潟県上越地域、中越地域で活動している2つのNPO法人の役員または職員2人に取材した。どちらも都会と呼ばれる首都圏の出身者である。2人ともいわゆる「田舎」である新潟県の里山に移住するなどして活動に関わっているわけだが、県外出身者(よそ者)としてどんな思いで活動してきたのか。その点などを探った。

古民家カフェ「平左衛門」

NPO法人かみえちご山里ファン倶楽部(新潟県上越市)の松川菜々子理事兼事務局長は東京都出身で、このNPOの設立当初から関わってきた。

このNPOは、旧上越市の桑取地区という雪深い地区で活動している。数百年前から伝わる「鳥追い」「馬」「オーマラ」(サイの神)などの小正月行事の継承のほか、水源森林公園や環境教育施設の管理、高齢者サロン、古民家カフェ「平左衛門」、宿泊施設などの運営も行っている。

かつて、戦中戦後の報道カメラマン、故濱谷(はまや)浩氏は桑取地区に興味を持ち、小正月行事などを撮影した。濱谷氏はのちに、写真集「雪国」を出版することになる。

松川理事は「全国各地で地域づくり団体や人材が増え、今は県外出身者でも珍しい存在ではなくなってきた。私たちの役割は、外の眼で地域の物事に価値を見出すこと、そして地域内と外をつなぐこと」と話す。

そのためにもまずは地域のことよく知ることが大事である。地域行事に参加したり、草刈りなど共同作業を行う中で、住民と一緒に汗をかきながら、少しずつNPOという存在や活動を理解してもらったという。

御多分にもれず、桑取地区でも地域や会員の高齢化が進んでいる。

「次世代へつなぐのが課題。地元小中学校には「Uターン教育」と題して、地域の良さ・豊かさを知ってもらうための授業を行ったり、放課後活動をサポートしたりしている。また地域活動盛り上げる新たな担い手として、地域外に住む人も重要な存在だ。この土地やコミュニティを好きになって何度も通ってくれる人を増やしたい。その中から移住にもつながってくれたら」と話す松川理事だが、その言葉にはNPOを背負っているという責任感が感じられた。

NPO法人越後妻有里山協働機構の坂口裕昭シニアディレクター

一方、NPO法人越後妻有里山協働機構(新潟県十日町市)の坂口裕昭シニアディレクターは神奈川県の出身だ。NPO法人越後妻有里山協働機構は、女子サッカーチーム「FC越後妻有(つまり)」の運営のほか、大地の芸術祭の運営や棚田の保全・管理などを行っている。

「私は神奈川、東京、神戸などずっと都市の人間だったが、親も東京出身などのため、夏休みに里帰りする場所もなく、地方への憧れもあった」と吐露した。

坂口シニアディレクターは東京大学法学部を卒業し、司法試験に合格。弁護士として企業法務を手がけていたが、子どものころから全国の地理や歴史が好きだったという坂口シニアディレクターは、地方への興味を持ち続けていたところ、四国の独立リーグ(野球)の社長の話が舞い込んだ。37歳で未知の土地へ単身乗り込み、9年間経営トップを経験した。

NPO法人越後妻有里山協働機構の事務局長が中学、高校の同級生だったことから、昨年シニアディレクターに就任した。

「十日町市が大好き」という坂口シニアディレクター。拠点とする東京から十日町市に出向いてくる時は必ず3泊ほどして、地域の人との関りを大切にしている。

女子サッカーチーム「FC越後妻有」のメンバー

「よそ者が地域を変えるなんて無理だし、おこがましい。地域の歴史や生活習慣を聞かせていただき、我々は理解しなければいけない。主役は地域の方々で、私たちはあくまでサポート役であり、脇役だ。それを忘れてはいけない」と語る坂口シニアディレクター。

坂口シニアディレクターは最後に言った。「地域のお年寄りには学歴をひっさげても何も意味がない。いかに共感してもらうか。大事なのは心ですよ」と。日本最高峰の大学を卒業した人が言うと重みが違う。結局のところ、地域を変えることができるのは、その地域の人しかできないのだといえるだろう。

 

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(文・撮影 梅川康輝)



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