ふるさと納税とものづくりの街・新潟燕三条 燕市編「寄付額県内2位に下落、リピーターを狙いにくい工業製品と次の一手」


燕市のふるさと納税返礼品、金属加工品のほかにヤクルトスワローズに関連するグッズも

ふるさと納税の規模は全国的に拡大し続けているが、新潟県内では「ものづくりの街」燕三条がこの分野で強みを見せている。前回は、2021年からふるさと納税政策に本腰を入れはじめた三条市の取り組みを紹介した。

一方、燕市は早期からふるさと納税に力を入れており、カトラリーや家電製品など市の特徴を反映した独自の返礼品で2014年から一貫して県内トップの寄付額を維持していた。しかし、2021年度の寄付額は45億円弱で、前年度の49億円から減少。南魚沼市に県内1位の座を譲ることとなった

この結果には「感染症禍の巣篭もり需要が落ち着いた」こともあるが、もう一つ重要なのは「工業製品は前年と同じ品を選ぶ人が少ない」という点だ。農産物など「消費物」が少なく、リピーターがつきづらいという弱点である。今回は、燕市のふるさと納税担当者へ、これまでの市の取り組みと次の一手について聞いた。

 

目次

◎金属加工品と家電製品で8割
◎耐久品ゆえのピリーター不足
◎新規顧客獲得へ向けて
◎直営サイトで狙うリピーター

 

金属加工品と家電製品で8割

燕市への申し込みの内訳を見ると、返礼品は金属加工品と家電製品がそれぞれ4割づつを占め、農産物その他は残り2割と、ものづくりの街の特徴が色濃く出ている。加えて、食料品と比べて返礼品の単価が高いことから、一人当たりの寄付額も大きい。

また、「燕市ブランド」を維持するため、選考会を通して良質な品目のみ返礼品として認可している。こうした独特な返礼品群が全国的に注目を集め、さらに感染症禍による巣篭もり需要が家電の人気を押し上げた。特に人気なのは、テレビ番組などでも取り上げられることの多いツインバード工業株式会社の「全自動コーヒーメーカー」だという。

市役所に展示されていた金属加工品

そんな燕市であるが、最初は農産品や市内施設の入場券などが主だったという。返礼品に工業製品を増やした結果、その独自性が評価された。燕市の鈴木力市長は振り返る。「もう十年近く前、(ふるさと納税が浸透する以前は)返礼品という考え方に賛否が分かれていたが、他県の成功事例を見て『やらなければ損なのではないか』と思い当市でも力を入れ始めた。すると前年20万円程度だったものが急に1億円になり、それからは順調に上がっていった」。

ふるさと納税の恩恵を受けたのは市だけではない。新型コロナウイルス感染拡大初期は特に全国で百貨店の営業が休止したが、そうした店舗へ商品を出品していた市内企業も大きな影響を受けた。しかし、ふるさと納税による返礼品の売上が、ある程度その損失を補填した事例があったという。最初期はその在り方に賛否が分かれていた返礼品の制度だが、窮地に立った市内企業を支えた結果となった。

 

耐久品ゆえのピリーター不足

燕市総務部総務課ふるさと納税係の近藤晃弘係長

ものづくりの街らしい返礼品は寄付額増加と市の魅力発信に大きく寄与してきたが、巣篭もり需要の落ち着きとともに2021年度の寄付額はやや減少。そして前述の通り、工業製品ゆえの弱点も鮮明になった。

「モノが良いければ良いほど、買い替えが少ないんですよね」と燕市総務部総務課ふるさと納税係の近藤晃弘係長は苦笑する。「耐久品なので、同じ方が同じ商品を申し込むことは少ない。リピーター確保をどのように進めるかがこれからのポイントになる」。さらに、昨今の原材料費の高騰も追い討ちをかけている現状だ。

ちなみに、2021年度県内1位となった南魚沼市との寄付額は僅差(南魚沼市webサイト)だった。同市は「南魚沼産コシヒカリ」はもちろん、日本酒や雪室貯蔵の特産品など、多種多彩な食料品が特徴。県内トップの2市であるが、その性質は対照的だ。

 

新規顧客獲得へ向けて

農産物の寄付額も40億円超のうち2割のため少ないわけではないが、リピーター獲得のためにはさらに強化していきたいところだ(画像は燕市役所から撮影した田園と国上山・弥彦山)

買い替え需要が少ないため、燕市の戦略としてはまず新規顧客の獲得が基本となる。これまでも、ふるさと納税サイトの横展開を積極的に進めて来た。「ふるさと納税利用者は、楽天なら楽天、ふるなびならふるなび、と自身の登録したサイトを使いつづける傾向がある」(近藤係長)。新たなサイトへ参入することで、新たな利用者獲得を狙う。

しかし、現状ですでに大手にはすべて出品しており、利用者の少ないサイトへ入ったとしても大きな効果は見込めない。そこで、プロモーション方法もこれまでの方法から少し手を変えた。

ふるさと納税は基本的に、年末に申し込むことが多い。そのため多くの市町村が年末に重点的なプロモーションを行い、燕市もそれに倣ってきた。しかし逆に言えば、他市町村のプロモーションに埋もれやすい時期である。また、燕市の場合は前述のように原材料費の高騰に伴う返礼品(寄付額)の高額化が顕著であり、年末の衝動的な購入が狙いにくいとの予想もできる。

そのため、「長いスパンで検討してもらうようにバナーを年間出しつづけるようにした」(近藤係長)。まずは商品との接触機会を増やし、年末まで購入を検討させる時間を作りたい考えだ。

また、工業製品は寄付額が高額なものが多いことから、燕市への寄付者は若年層よりも所得の安定しやすい30、40歳代以上が多い。市でもweb上のターゲッティング広告や雑誌広告でもそうした年齢層を狙い打つようにシフトし始めている。

 

直営サイトで狙うリピーター

燕市のふるさと納税の直営サイト「つばふる」

そして8月にオープンしたのが、県内初となるふるさと納税の直営サイト「つばふる」だ。これによりサイトの手数料削減と共に、新たなプロモーションを展開していく。

既存のふるさと納税サイトでは、「米」や「果実」、「肉」などメジャーで定番的な返礼品や、寄付額が大きく大々的に広告を打てる市町村の意向に合う特集が組まれる場合が多い。ここでも、燕市の独自性が仇となる。また「おすすめ」に別市町村が出てくる点も問題だ。

そこで、自由度が高い直営サイトで燕市と金属加工品に焦点を当てた特集記事を展開。すでに一度寄付した利用者へ対しても、例えば「同じメーカーの別商品」や「揃えたくなるテーブルウェア」、あるいはテーブルウェアに関連した市の農産品など、関連商品を提案することでリピーター化を狙う。

一方、課題は、直営サイトを利用してもらえるかである。市直営サイトの場合はポイント還元などの面でも弱点がある。近藤係長は、webバナー広告などで直営サイトへ誘導すると同時に「直営サイトでしか申し込めない限定品、限定セット、パッケージ化による値引きなども検討している」と明かした。そして、今後の目標について「毎年掲げている50億を今年も目指したい。1位を奪還できるよう、地域の事業者とも協力しながら進めていきたい」と意気込みを語った。

鈴木市長も力を込める。「ふるさと納税は当市の重要な財源。我々としてもライバルに負けないよう、一定額を維持できるよう色々な戦略を考えていきたい」。

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ふるさと納税利用者は人口の2割未満、まだまだ成長の見込みがある。全国の自治体が収入増と魅力発信を狙って鎬(しのぎ)を削るなか、今後も県内でユニークな動きが出てくることを期待したい。

 

【関連リンク】
燕市 ふるさと納税の直営サイト「つばふる」

 

【関連記事】
ふるさと納税とものづくりの街・新潟燕三条 三条編「直営体制の構築と、市のファンをつくる取り組み」(2022年8月17日)

 

(文・撮影 鈴木琢真)



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