【妻有新聞】「雪国杉」世界が関心 北米輸出開始 「赤身」人気

スギ林の伐採も専用機械を購入し行い、森林整備を進めながら総量確保に取り組んでいる

「雪国のスギは極めて貴重。豪雪に耐えてきた強いエリートツリーが残っている。この地域ならではの自然資源だ」。雪国産スギの世界出荷への道を進めている株式会社ROUTE(ルート、十日町市姿)。林業に力を入れ10年余、いまアメリカやカナダなど北米で建物の外壁に使用するスギ材の需要が高まるのを受け、同社は県内6社が認可を受ける輸出材供給業者の一つとなり、5月の大型連休明けの本格輸出に向け準備を進めている。5月輸出予定のスギは県内6社で3千立方㍍、うち5百立方㍍を同社が用意する。

事業を進める江村文里社長(よしのり、46)と熊倉広大取締役(33)は「雪国のスギは使い時を迎えているなか、世界で需要が高まっている。木材輸出を図ることでこの地域の若い職人の育成や山林整備にも繋がる」と意欲を話している。 日本の輸出木材はスギが全体の1割余を占める。そしていま需要が高まっているのが芯を含め『赤身』部分が多いスギ。「赤身は水を吸わない堅く強い素材。外側の白い部分は成長している部分で、温かい地方では成長が早いため白身が多く、木が弱く腐りやすい。赤身が多いスギがいま世界で求められている」。

一方で、雪国のスギは水分の多い重い雪に耐え、1年の半分は雪に埋もれるため成長はゆっくり。「その分、水を吸収しない赤身の部分が増える。赤身は導管を閉じて油を貯めこむため、腐朽菌が極めて少ない。雪国のスギは優良な建築素材」。特に日本海側の新潟や秋田のスギにはこの赤身が多いという。

外壁材用のスギ需要増加は北米を中心に高まっている。新型コロナ禍で経済活動が一時止まったなかでも、北米では住宅需要が高止まりし、木材は品薄感が高まり世界的に価格が高騰するウッドショックが発生。一方で北米原産スギが干ばつや山火事など異常気象の影響で出荷量が減少。北米では赤身の多いスギを外壁やベランダ、デッキに使う住宅文化があり、さらに今後人口増加が見込まれており、建築材としてのスギ需要も高まる見込みが出ている。

昨秋、同社の案内で木材輸出を扱う業者が十日町市を視察。「赤身の多いスギが取れると伝えたら『需要がある。ほしい』と関心を示している。今は林業の輸出に取り組む企業や県内森林組合と連携を進めている。5月から本格的にスギ輸出に取り組む」。県内の木材輸出の港は新潟東港がこれまで中心だが、直江津港も活用し木材輸出増を図る動きもあり、各企業と連携を図りながら注視している。

先達の植林から60年余が立ち、使い時を迎えている雪国のスギ。「特に十日町のスギは良質。製材しプレーナーをかけるとテカテカと光る。赤身部分の密度が濃く、油分が多いから。こんなスギは他にはない。県内外のいろんな地のスギを見たが、特に標高200〜400㍍地帯にある雪国のスギは別格。普段は意識することはないが、実は極めて貴重な財産が残っている」。会社名『ROUTE』は今春に変更(前・株式会社丸山)。日本語なら『道』。未開の森林作業道を切り拓く、ライフラインである雪の道を切り拓く、林業人材を育成し活躍の道を切り拓く、といった理念を込めた。

現在職員は20〜40代含め10人余。「今年はさらにスタッフを増やす。若い職人を育てることも地域の山の環境を守るには必須で、会社の使命でもある」。同社は北米での現地調査も予定する。「北米など世界の需要動向をしっかり調査しながら事業を進める。雪国スギの質の良さを世界に伝え、これまでにないサプライチェーンを作りたい」。雪国スギのブランディング化を進め、世界での飛躍をめざす。

堅く締まった「赤身」が多いスギが取れる雪国スギに世界が注目。左が江村文里社長(十日町市中手で)

 

妻有新聞 2023(令和5)年5月6日号】

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