「新潟ワンダーランド」(えちごトキめき鉄道社長 鳥塚亮)

えちごトキめき鉄道社長の鳥塚亮(あきら)です。

2019年9月に社長に就任し丸3年が経過し、新潟での生活が4年目に入りました。

東京生まれの東京育ち、東京と千葉にしか住んだことがない私にとって、新潟での生活は発見や驚きの連続です。

もちろん若いころから鉄道に乗って旅をして、日本中の地域を巡ってはいますが、数日間訪ねるのと住んでみるのとは大違いで、言ってみればそれがいわゆる「移住」の醍醐味なんでしょうが、全国どこにでも言えることですが、地元民には当たり前でも外から見たら不思議ワンダーランドなんです。

 

ということで第1回目は豆の話です。

新潟に来て最初に驚いたのは、上越だけかもしれませんが「茹で落花生」を食べること。

就任直後、ちょうど3年前の今頃の季節、居酒屋さんに入ってお通しに出されたのが茹で落花生でした。

私は単身赴任で千葉から来ていますが、千葉県は落花生が有名で、もちろん昔から茹で落花生を食べます。以前は農家の人の食べ物だったんですが、近年では茹で落花生用に開発された「おおまさり」という品種もあって、真空パックになって日持ちがするように加工された茹で落花生がお店で普通に売っているのですが、それは千葉だからだと私は思っていました。ところが新潟へ来たらいきなり茹で落花生が出て来た。

一緒に行った知人に「新潟でも茹で落花生食べるんですか?」と聞いたら「食べますよ。」

との返事。

「なぜ?」と聞いたところで多分返事は来ないだろうと思い、「そうなんですか」と答えただけでしたが、その人が「新潟は豆をよく食べますよ。特に枝豆。新潟県は枝豆の生産量が日本一なんです。」と言います。

「枝豆の生産量が日本一?」

私は不思議に思いました。

だって、そんなこと初めて聞きましたから。

聞くところによると枝豆の中でも味が濃くておいしい茶豆は新潟の黒崎が発祥らしい。

「え~、茶豆といえば山形なんじゃないの?」

これがおそらく東京の人間の常識だと思います。

 

いろいろと調べてみると確かに新潟県は枝豆の生産量が多く、年によっては日本一の時があるらしい。でも、何で知らなかったんだろう。

会社の中の人や外の人に聞くと、「枝豆好きですよ。」「枝豆よく食べます。」と皆さん言います。

居酒屋に入って枝豆を頼むとたいていのお店では盛りが良い。東京だと小さなお皿にちょこっと盛って来るのがふつうですが、新潟では大きめなお皿にどさっと来る。そしてみんなむしゃむしゃと食べてる。

ほほう、そういうことか。

何がそういうことかと言うと、皆さん枝豆をよく食べる県民だということ。

新潟県は枝豆の消費量が日本一だそうですね。

 

目の前でむしゃむしゃと枝豆を食べる友人たちを見て、私はあきれました。

なぜなら、自分たちで作った物を自分たちで食べてしまってるからです。

ふつうはあり得ないですよ。

東京の人たちは茶豆といえば山形県だと思っているのですが、それは山形県は一生懸命作ったものを東京に「輸出」して「外貨」を稼いでいるから。でも新潟県は自分たちで作ったものを輸出せずに自分たちで食べちゃってるんですからね。

 

何やってんだろう?

 

そこで、また考えてみた。

なぜ輸出してお金を稼ごうとしないのだろうかと。

そして気付いたのは、新潟は枝豆など出荷しなくても米や酒を出荷するだけで江戸時代から十分生きて来られたから、枝豆など特産品として特にこだわらなくてもよかったんです。

まあ確かに廻船文化の時代から米や酒のような重いものを運ぶことができた地域ですから、他の県に比べれば実に豊かだったわけで、その証拠に明治維新の前後に日本で一番人口が多かったのが新潟県ですから、つまり、人々を食べさせていくことができていたということで、武家屋敷で成り立ってきた東京は何も生産するところではありませんでしたから、東京にいても食べて行かれない人たちが皆さん新潟へ来たんでしょうね。

 

そのように新潟県は実に豊かなところなんですが、おそらく今問われているのは米や酒といった主力商品がいつまで都会へ輸出を継続することができるか、ということではないでしょうか。

もちろん新潟の米はおいしいですよ。

だけど気候変動で青森でも北海道でもおいしい米が作られるようになってきているし、酒だって今の時代は日本酒離れが進んでいるし、都会で今、一番人気のお酒は山口県ですからね。

観光客にいらしていただいてもお土産にするにはどちらも重いし、「この地方はお米がおいしいんです。」と旅館で言われても「だから?」ですから、集客のツールにはならない。

つまり、新潟県は今までは資源輸出国として原材料を供給することで江戸の昔から生きていたのですが、原材料を供給するだけであれば新潟じゃなくても良いという時代になりましたので、考えなければいけなくなってきている。

じゃあ、何をどう考えるかというと、原材料にどう付加価値をつけるかということではないでしょうか。

 

もともとお米もお酒も野菜も魚も抜群においしいところですから、それを原材料として東京へ輸出するだけではなくて、どうやって付加価値をつけていくか。

その付加価値の部分が一番「おいしい」部分ですから、そこを追求していくことに伸びしろがあるのではないかと思うのでありますが、いかがでしょうか。

 

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私がオーサーを担当しているYAHOOニュースの記事です。よろしければご一読ください。

ご当地あるある!「千葉県民は落花生を豆の品種で選ぶ」(鳥塚亮) – 個人 – Yahoo!ニュース

 

鳥塚亮
1960年東京都生まれ。明治大学商学部を卒業後、外資系航空会社に就職。2009年に公募でいすみ鉄道社長に就任。2019年、公募でえちごトキめき鉄道の社長に就任。鉄道に関する著書も2冊ある。

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