【特集】地域医療を医療機器でアシスト 新潟薬科大学卒業生・クロスウィルメディカルの瀧澤遼さん

新潟薬科大学の応用生命科学部、生命産業ビジネス学科出身でクロスウィルメディカルの第3営業部、第3グループで営業をしている瀧澤遼(たきざわりょう)さん
手術を終え、「無事に終わってよかったな」と胸をなでおろすのは医師だけではない。事前に医師や看護師と打ち合わせを行い、症例に合わせた備品を準備するクロスウィルメディカルの営業部で働く瀧澤遼さんも、その一人だ。
瀧澤さんが担当するのは、済生会新潟県央基幹病院。400床を有する大規模病院で、インプラントやペースメーカーなどの医療機器を取り扱い、手術に合わせて機材を準備する機会も多い。必要に応じて手術に立ち会うこともある。

午前中はメールなどの事務を中心に行い、倉庫の商品を確認して車に積み込み、病院に届ける
常に緊張感を伴う日々を送る瀧澤さんは、入社6年目。地元新潟の医療を支える地域密着型の業務にやりがいを感じている。そんな瀧澤さんは、新潟薬科大学の応用生命科学部、生命産業ビジネス学科卒。全国的にも珍しい、理系大学の文系学部で学びを深めた後、理系の医療機器を扱うクロスウィルメディカルに入社した。現在、地元病院のニーズに応えながら活躍する瀧澤さんに話を聞いた。
現場に寄りそう営業スタイルで地元医療をサポート

企業理念の「尽くす・豊か・感謝」を基軸に社員が活躍しているクロスウィルメディカル本社
瀧澤さんの働くクロスウィルメディカル(新潟市東区)は、2025年に創業109年を迎える県内有数の医療機器商社。新潟に本社を置き、東北(秋田・山形・福島)と関東(東京・埼玉・千葉・群馬)に営業拠点を展開する。地元密着の営業を強みとし、800人を超える従業員で新潟県と秋田県でトップシェア、新潟県を含めた東北全体でも売上トップの地位を誇る。
取り扱うのは、シリンジや針などの消耗品からCT・MRIといった大型医療機器、インプラントやペースメーカーなど高度な医療材料の販売まで幅広い。医師・看護師との打ち合わせや手術準備、立ち会い業務にも対応し、病院内の椅子など備品の納入まで含めた総合的なサービスを提供し、地域の医療現場を支えている。

日々の業務では、商品知識を深めることも欠かせない。医師と共に学会に参加することも
瀧澤さんは現在、三条市内の病院を訪問しながら医師と共に最先端の医療を学び、現場に必要なあらゆる備品を提供しながら医療機関を支える日々を送っている。必要な医療機器や医療備品がないと、患者の症状悪化や手術の失敗にも直結しかねない重要な業務でもある。
また、緊迫した医療現場では、医師や看護師とコミュニケーションをとるのも簡単ではない。最初はうまくかみ合わないこともあったという。

現場の医師に助けられたこともあると語る瀧澤さん
「私の知識が足りてなかった頃、ご迷惑や不安を感じさせてしまうこともあり、現場の方から教えていただくこともありました。その時の『しっかりしなきゃいけないな』と強く思った気持ちを今でも胸に刻んで働いています」(瀧澤さん)
病院は医療材料や消耗品が科ごとに異なる。担当する病院の専門的な分野の、進化し続ける医療機器についても学び、仕事で信頼を積み重ねていかなければならない。
「常にやりがいを感じられる仕事ですが、その中でもやっぱり立ち会い業務は特別ですね。無事にオペが終わった時は、大きなやりがいと達成感を得られます」(瀧澤さん)

病院への備品を用意し社用車に積み込む瀧澤さん
確認と準備、そして学びを怠らない姿勢を支えるのは、医療機器の販売を通して地域に密に、役に立っているという実感だ。
この仕事の鍵は、病院との密接な関係構築を重視する地域密着型の営業にある。相手のニーズを把握し、コミュニケーションを通じて明確な目標を設定し、取り組む。そういったマインドは、瀧澤さんが大学時代にしてきた様々な課外活動での体験が活きていると話してくれた。
薬科大に新設されて2年目の文系学部を選択

瀧澤さんが学んだ新津駅東キャンパス(新津まちなかキャンパス)
瀧澤さんは五泉市出身。高校時代は寮生活だったため、大学は実家から通いたいと考えていた。気になったのは新潟市秋葉区にキャンパスがある新潟薬科大学。
実は、生命産業ビジネス学科に入った仲のいい先輩に誘われたオープンキャンパスで、学生主体の屋台販売運営やさまざまな体験プログラムに惹かれ、「ここならいろんなチャレンジができそうだ」と新潟薬科大学への進学を決めた。

新潟県内出身者の比率が高く、多くの卒業生が県内で医療機関や企業に就職している
新潟薬科大学は、1977年創立の新潟県で最初の4年制私立大学。日本海側のオピニオンリーダーとして、薬剤師や薬科分野に関わる人材を育ててきた。その後、応用生命科学部などを加えて学部を拡大し、現在は薬学・応用生命科学・医療技術学・看護学の4学部5学科を擁する総合大学へ発展している。
地域密着型を掲げ、実習や共同研究を通じて医療・食品・環境分野の産業と強く結びつく実学重視の教育を行っている。文理融合の生命産業ビジネス学科では、経済・経営を中心に学びつつ理系基礎も履修でき、多様な進路に対応できる。今後は、「文系6割・理系4割」の新学科体制を視野に、次代の地域産業を担う人材の育成を進めている。

新潟薬科大学の副学長を務め、食品ビジネス分野でも教鞭を振るう伊藤満敏教授
「一粒で二度美味しい。じゃないけれども、うちの大学でビジネス学科に入った学生は、1年生の時から理系の授業も履修登録できるんです。そして、食品分野の知識から、経済・経営まで学べる。ここで学べば、どんな分野にでも行けるよ、全学部全学科の中で一番つぶしがきくよ、と学生たちに伝えています」(伊藤教授)
そう語るのは瀧澤さんの恩師で、新潟薬科大学の副学長を務める伊藤満敏教授。地元大企業に勤めた後、生命産業ビジネス学科創設時に新潟薬科大の教授にキャリアチェンジした経歴を持つ。

明るくオシャレで、景観も居心地もいいキャンパス
新潟薬科大学では座学だけでなく「実学一体」という実際の実技と共に学ぶことも重視しており、特に生命産業ビジネス学科は課外活動も多い。瀧澤さんの通った新津駅東キャンパスは、近くに商店街があり、学科の課外活動を通して大学生が商店街の方々と関わる機会も多かった。
「自分が全く経験したことない新しい活動にたくさん参加できました。商店街が主催するイベントやお祭りに参加したり、情報発信のひとつとして、秋花火や、白玉の滝打たれの様子を入れ込んだプロモーションビデオを作って、新津駅で流してもらったりしたこともあります。食品ロス活動に取り組んだときには、新聞社さんにも取り上げていただきました。初めて会う方にご挨拶させていただく機会もすごく多く、人とのつながりや、新しいことにチャレンジできたのはいい経験だったと思っています」(瀧澤さん)

構内には卓球スペースもあり、「良く学び、よく遊べるキャンパスだった」と瀧澤さん
まちなかのコミュニティスペースで商店街の店主さんと打ち合わせを行い、どんな動画を撮ってほしいかヒアリングしてプロジェクトをすすめる。何を手伝ってほしいかコミュニケーションを取りながら探り、その都度ニーズを明確にして実行してきた。そんな様々な地域貢献活動を通して、問題意識を持って主体的に取り組む姿勢は瀧澤さんの人生の糧になってきた。
大学は、生まれ育った新潟の地を学び、地域に貢献できる人材を育てることを目標に掲げている。実際に、新潟薬科大学を卒業した生徒は、地元新潟で就職、活躍する人も多い。横繋がりも生まれやすく、同大学の地域貢献の高さを物語っている。

所属していたフットサルサークルでは、学部学科の垣根を超えて交流が生まれ、薬剤師仲間に仕事で会うこともあるという
そんな風に大学で様々な経験を重ね、家電量販店のアルバイトをしていた瀧澤さんは、直に「ありがとう」と言ってもらえることに嬉しさを覚え、営業職を志すようになった。内定企業の中からどこに決めるか悩んでいた時、恩師の伊藤教授に「ここだったら間違いないよ」という言葉をもらい、クロスウィルメディカルに入社を決めた。
医療現場をアシストして人の役に立つことの実感が原動力

同一部署になって約一年、瀧澤さんを見守ってきた山口副部長
緊張感のある毎日を送る瀧澤さんを見守るのは、瀧澤さんと同じく文系大学出身の第3営業部、副部長の山口さんだ。
「地域医療は今後も高齢化で患者さんも増えていく状況です。それに合わせて事業も幅広く拡大していきたいと思っております。その中で、瀧澤くんのような細部まで確認し、自分の仕事もきちんとできて、周りに気を配れる社員がいるのはとても心強いですね」(山口さん)
医療の現場は、医師も緊張感のある現場で患者さんのために手術を行う。その近くで働く瀧澤さんたちは、毎日の準備等をしっかり行わなければ信用が得られない。失敗や困難は最小限にしなければいけないが、同時に常にチャレンジ精神を持って取り組み、経験を積むことも求められる。
「業務では個人の力に加え、チーム力も求められる。瀧澤くんの挨拶などの基本がしっかりしている人間力は現場で活きていると感じます。また、彼は自分の仕事が終わると、先輩に『何か仕事はありませんか』と聞いてくれる。その心遣いは素晴らしいと思います。でも、最近はお子さんも生まれたので、早く帰ってほしい。そこはちょっと心配です」(山口さん)

尊敬する方々や、目指している先輩に少しでも近づきたいと話す瀧澤さん
いつも常に明るく、笑顔が印象的な瀧澤さんの原動力は、新しい家族と、そして担当病院の医師から言ってもらえた「瀧澤くん頑張ってるよね」の言葉だ。万全に準備して挑む手術立ち合いの日、「無事に終わってよかったな」とホッとしながら帰路につく瀧澤さんの笑顔はまぶしい。
(文・撮影/坂本実紀)
【学校情報】

新潟薬科大学 新津キャンパスの全景
学校法人新潟科学技術学園 新潟薬科大学
新津キャンパス(大学本部) 新潟市秋葉区東島265-1
新津駅東キャンパス 新潟市秋葉区新津本町1-2-3
西新潟中央病院キャンパス 新潟市西区真砂1-14-65
新潟薬科大学は、薬学・応用生命科学・医療技術学・看護学を柱に1977(昭和52)年に開学した私立大学。「人と地域に貢献する人材の育成」を掲げ、医療・健康・環境・食品など幅広い分野で実学重視の教育を展開し、地域と連携した実習や研究を通じて、医療・産業の第一線で活躍する人材を輩出している。
2027(令和9)年の大学創立50周年には、応用生命科学部に「グリーン・デジタル学科」、医療技術学部に「救急救命学科」を設置し、学部・学科の名称を刷新。さらに大学名称を『新潟科学大学(Niigata University of Science)』へ改め、「科学」を通じて「ひと」と「地域」に貢献する総合大学として新たな歩みを進める。
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