【特集】新潟市民病院の医療ソーシャルワーカー・宮山流和さん「患者とご家族の望む未来に寄り添う」新潟青陵大学卒業生

新潟市民病院(新潟市中央区)医療ソーシャルワーカーの宮山さん
事故や体調不良で人生が一変する瞬間は、突然やってくる。高度急性期病院は、緊急性の高い患者を受け入れ、迅速に治療を行う医療の最前線だ。症状が安定した患者は、回復期病院や地域の医療機関などへとつなぐ。こうした連携を行いながら、「患者の未来」を支える重要な役割を担う。
新潟市民病院(新潟市中央区)で医療ソーシャルワーカーとして働く宮山流和さんも、その一員だ。新潟青陵大学(新潟市中央区)の社会福祉学科を卒業後、2026年の春、入職8年目を迎える。
「大変な状況を目の当たりにするわけですから、患者さんだけでなく、ご家族も強いショックを受けていることが多くあります。だからこそ、私たちはそうした気持ちをしっかり傾聴して、共感することを大事にしています」(宮山さん)
「入院前と同じ日常生活に戻れるのか」「治療や通院にいくらお金がかかるのか」とさまざまな不安を抱える患者やその家族たちの悩みに寄り添う医療ソーシャルワーカー(MSW)だ。
患者や家族の「不安」と「これから」に寄り添い地域医療機関などへとつなぐ伴走者

新潟医療圏で三次救急医療を担当する高度急性期・急性期病院の新潟市民病院(新潟市中央区)
宮山さんが働く新潟市民病院は、救命救急センターを備え、救急搬送7,473件(2025年1月〜12月)と、県内1位の受け入れ実績を持つ高度急性期病院。外来は紹介・予約制で、かかりつけ医と連携しながら、重症・重篤患者を中心に診療する地域医療支援病院でもある。
こうした病院の性質上、地域の医療機関などとの連携を図りながら早期退院、早期転院に向けた提案が行われる。その際、医師や看護師と相談しながら患者の次の一歩を示すのが宮山さんたち医療ソーシャルワーカーだ。
宮山さんは新潟青陵大学を卒業後、在学時から希望していた新潟市民病院に入職。あらゆる制度を理解するところから経験を積み、退院や転院する人の調整などの支援に携わってきた。

冊子を使いながら、患者一人ひとりにふさわしい制度をわかりやすく説明する宮山さん
「まずお聞きするのは、ご家族の構成です。誰とどのように暮らしているのか、同居していても日中は一人になってしまうのか、一人暮らしの方には支えてくれるご家族や周囲の方が近くにいるのかなど、日常生活の細かいところまで伺います」(宮山さん)
不安を抱えるのは、患者はもちろん、その家族も同じ。退院後、介護サービスを受けることで生活の質が向上するケースも出てくる。
経済状況や年齢など、抱える事情や背景は各患者によって千差万別だ。最適な道筋を示しながら患者とその家族の心に寄り添い、どの制度を利用できるか、一人ひとりの状況に応じた支援を探る。

患者の家族だけでなく関係機関とも退院や転院に向けて調整することが多いので、PHSは手放せない
「退院後に戻る住宅の状況も聞きます。たとえば、自宅に入るまでに数段の段差があり、ご本人は歩行が難しい場合、どうやって家に入るのかという問題が出てきます。車椅子の使用も含めて考えないといけませんし、玄関からの動線も確認が必要です。車椅子を使うとなると、車に乗せることも考えないといけません。そのニーズに対してはどんな制度が使えるか。介護保険だけではなく、身体障害者手帳に関連する制度など、いろいろな制度があるので、その患者さんに何が必要かを見極める必要があります」(宮山さん)
症状によって、案内する内容は変わる。介護サービスが必要になった場合、ケアマネジャーがついているのかいないのか、まだの場合、新規で申請するにはどうしたらよいか。リハビリが必要ならリハビリに適した支援へ、在宅支援が必要ならそれに適した支援への提案をする。
「医療や福祉に関する情報をわかりやすく提供し、複数の選択肢を整理します。そのうえで、患者さんやご家族の思いや不安に寄り添いながら、その人らしい選択の実現に向けて多職種と調整を行うことが重要だと思います」と宮山さん。

会議では退院後の支援について話し合う
患者の住むエリアで利用できる福祉サービスや連携可能な医療機関を探し、紹介することはもちろん、スムーズに引き継ぎできるよう患者の状況を各施設の担当者と情報共有するところまでサポートする。
院内の医師や看護師など多職種と連携しながら、患者の今後の生活へ向けた不安を可能な限り取り除き、「患者の未来」への道筋を示すのが、宮山さんの仕事だ。
「病院の中では医療職が多いのですが、私たちは唯一の福祉専門職です。治療して元気になって退院する方ばかりではなく、リハビリが必要になったり、生活が大きく変わったりする方もいます。患者さんの心の声に耳を傾け、これからの生活を支えるために、自分たちがいるのだと思います」(宮山さん)
常時複数名の患者を担当し、その家族とも連携を取りながら業務を全うする宮山さん。モットーは、患者やその家族の方々に共感し寄り添うこと。そんな宮山さんが今の道を志したきっかけは、大学時代の実習にさかのぼる。
進路のきっかけは福祉や心理への興味から

新潟青陵大学のキャンパス(新潟市中央区)
宮山さんは、新潟市出身。母親が小学校の特別支援学級の先生だったことに影響を受け、福祉や心理に興味を持っていた。そこで、福祉も心理も学べる新潟青陵大学に進学を決めた。
新潟青陵大学は、看護学部と福祉心理子ども学部の2学部で構成されている。福祉心理子ども学部には、社会福祉学科、臨床心理学科、子ども発達学科の3学科があり、それぞれの分野を専門的に学ぶことができる。

2017年に建て替えが行われた新校舎には実習室や大学生たちが集うスペースが広がる
同大学の特徴の一つが、同一学部内の3学科が共通して「福祉」「心理」「子ども」について横断的に学びながら専門性を高められる点だ。人が生きていくうえで必ず関わるこの3分野を多角的に学ぶことで、自分の生き方を見つめ直し、将来の生き方を想像できるようになる。自分の興味がある専門的な学修を深めていくうえでも、重要な学びとなる。
宮山さんの通っていた社会福祉学科では、国家資格の社会福祉士の他に、希望に応じて精神保健福祉士や介護福祉士などの資格取得を目指すことも可能だ。

新校舎には自習スペースがあり、開放感もある図書館が併設
福祉専門職はもちろん、公務員や一般企業など多彩な分野で活躍する先輩たちを輩出している。その秘訣は、「福祉」とともに学ぶ「コミュニティビジネス」にある。「コミュニティビジネス」とは、地域課題をビジネスで解決する手法だ。本学科では、この2つの分野を同時に学び、深めることで、地域の福祉や地域づくりに貢献する力を養う。
また社会福祉学科の教員とマンツーマンで話す機会が得られる「展開ゼミナール」も進路に悩む学生の一助になる。学生はこの期間に、資格取得に関する疑問や自身の方向性をしっかり相談できる。多岐に渡る活躍のフィールドを持つ「福祉」だからこそ、教師陣の手厚いサポートを受けながら、さまざまな可能性を学び、探れる環境も新潟青陵大学の強みだ。

大学生たちと進路について情報交換する花澤佳代准教授
実習でかけられた感謝の言葉から医療現場ソーシャルワーカーの道へ

福祉の現場で働きながら大学院を修了し、自身も精神保健福祉士の資格を有する花澤准教授
「福祉職は、お世話ではなく、その人がどう生きたいかを一緒に考える仕事です。未来へとつながる仕事に、福祉のおもしろさがあると感じています」
そう語るのは、宮山さんの恩師である、新潟青陵大学社会福祉学科の花澤佳代准教授だ。大学院に通いながら10年以上福祉の現場で働いてきた経験から「人を大切にする仲間がほしい」という思いで教鞭をとる。
「宮山さんは1年生のころから目立つ学生でした。とにかくどんな場でも発言するし、学友会や学園祭の企画、オープンキャンパスの運営など、さまざまな活動に自分から関わる選択をたくさんしていた印象があります。
さらに、早い段階から『医療ソーシャルワーカーになりたい』と明確に言っていたのもよく覚えています。当時、この学科では社会福祉士実習で病院に行く学生はいませんでした。でも、宮山さんが病院実習を希望して、最初にその道を切り開いたんです。結果として、後輩たちにもそのルートができました」(花澤准教授)
そうして、宮山さん自身が希望した実習が病院で行われた。この実習で、患者さんとコミュニケーションをとる中で、「話せてよかった」「ありがとう」という患者からの感謝の言葉が「医療ソーシャルワーカー」への未来を描く決定打となった。
「宮山さんの強さは、大学がつくったというより、もともと本人の中にあったものだと思います。印象に残っているのは3年、4年生になってもずっと単に『病院で働きたい』ではなく、『新潟市民病院に勤めたい』と言い続けていたことです。宮山さんはとにかく弱音を吐かない、芯のある学生でした」(花澤准教授)

卒業後も助け合い、相談し合える仲間になってほしいという思いから、仲間意識を抱くカリキュラムを実践する花澤准教授。「国家試験は入試と違って、基準を超えればみんな受かる」と伝える

学生時代の宮山さん。3年次の秋に行われる福島潟での合宿では、話し合いやロールプレイなど実践的な演習を中心に仲間と一緒に学びを深める
宮山さんは、在学中に社会福祉士だけでなく、精神保健福祉士の資格も取得。この資格は、現在、新潟市民病院で働くうえでも役に立っている。
治療後の「患者さんが望む生活」に寄り添う

専門科目の社会福祉士や精神保健福祉士の演習で、学生同士でロールプレイをする授業が印象に残っていると話してくれた宮山さん

テーマに沿って学生同士で議論し、コミュニケーション力を培う。新潟青陵大学では学生が主体的に学ぶカリキュラムを展開している。こうした実践的な学びが今の宮山さんを支える原動力となっている
現在宮山さんは、退院支援を行いながら、産科病棟の患者への対応や、精神科病棟での相談員業務も担当している。
「大学の実習で病院に行った経験や、演習で身につけたことは、今の仕事にかなり活きています。それ以外にも、新潟青陵大学でいろんな学生と交流できたことも、多職種と関わる今の仕事につながっています」
退院支援を数多く行う中で、時には困難なケースに直面することもある。一人暮らしで、家族や親戚を頼れない人、元の生活を送れない人、手続きのために役所に行けない人など、さまざまな障壁がある。厳しいケースでも、福祉に関するあらゆる制度を駆使しながら、地域の支援につなげられるよう、探っていく。

さまざまな状況の患者を限られた時間の中で必要な支援につなげていく
「まだまだ知識も経験も足りないと感じています。だからこそ、これからも経験を積んで、どんな患者さんやご家族にも対応できるようになりたいです。また、新潟市民病院のように短期間の入院の中でも、その時点でできる最大限の支援を提供できるようになりたいと思っています。患者さんが望む生活に向けて支援ができて、退院していく姿を見送れたときには、とてもやりがいを感じます」
今日も新潟市民病院には患者が運ばれてくる。その傍ら、転院や退院が決まった患者も、宮山さんたち医療ソーシャルワーカーがつないだ支援を受け、リスタートを切っていく。
(文・取材:坂本実紀)
(ディレクター:石橋未来)
【学校情報】

学校法人 新潟青陵学園 新潟青陵大学・新潟青陵大学短期大学部
住所:新潟市中央区水道町1丁目5939番地
新潟青陵大学は2000年に開学し、新潟県初の看護、福祉、心理系の大学として1学部2学科を開設した。現在は看護学部看護学科と福祉心理子ども学部社会福祉学科・臨床心理学科・子ども発達学科の2学部4学科で構成されている。
毎年、多くの卒業生が新潟県内に就職しており、新潟県の医療、福祉業界を支えている。
また、60年以上の歴史がある新潟青陵大学短期大学部も併設している。現在は人間総合学科と幼児教育学科の2分野を有し、新潟県の企業、保育業界への人材供給を担い続けている伝統校。
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