【特集】専門知識よりも「一緒に悩みながら前に進める仲間」を ものづくりの街・燕を支える協栄信用組合

旋盤加工の有限会社イワセ(新潟県燕市)を訪れる協栄信用組合吉田支店・南吉田支店の支店長代理・石田光さん(写真左)と、イワセの瀬戸光一代表取締役(写真右)

新潟県燕市の旋盤加工業者・有限会社イワセ──同社の瀬戸光一代表取締役の隣に立ち、様々な加工機械の音が響く工場の中を見つめているのは、協栄信用組合吉田支店・南吉田支店の支店長代理・石田光さんだ。

30年以上前から取り引きがあるというイワセと協栄信用組合。瀬戸代表は言う。「きょうえいさんは、現場を一番知っている金融機関。我々は日々の経営にしか気が回らないが、次の投資、明日の投資に向けて、親身になって提案してくれる」……。

協栄信用組合の営業担当は、お金を貸すことだけが仕事ではない。1952年設立の同組合は、燕市を中心に新潟市南区、西蒲区、秋葉区、加茂市、田上町に展開。全国有数の「ものづくりの街」の経済を支えてきた。

銀行とは異なり、地域の事業者や住民と長期的な信頼関係を築くことを重視する同組合は現在、職員自身も腰を据えて働ける環境づくりにも力を入れている。今回は、組合を支える3人の職員に、仕事のやりがいと職場の状況を聞いた。

 

目次

○国内有数のものづくりの街を支える金融機関
○「うちに来ないか」企業からそう言われるまでの信頼を─営業担当
○どんな小さな困りごとにも相談に乗る─ 窓口担当
○求めるのは完璧ではなく「一緒に悩みながら成長する仲間」

○組織情報

 

国内有数のものづくりの街を支える金融機関

吉田支店・南吉田支店の支店長代理・石田光さん

「銀行と比べて規模は小さいですが、お客様一人ひとりと顔を合わせて相談に乗れるところが、私たちの強みです」と語るのは、吉田支店・南吉田支店の支店長代理・石田光さんだ。信用組合や信用金庫は、銀行と異なり非営利法人である点も大きな特徴。「数字だけでなく、お客様の思いなどを汲んだうえでご相談に乗れることが大きな違いです」(石田さん)。

また、協栄信用組合が力を入れているのが、創業や事業承継、新規事業開発といった融資にとどまらない総合的なサポートだ。毎年開催される無料の創業講座では、専門家を招いて財務計画などの方法を学ぶ場を提供。参加者がそのまま地域担当の営業職員に融資相談ができる流れを整えている。

金融機関の重要な仕事のひとつが、企業への資金面でのサポートだ。特に燕市は洋食器を代表とした金属加工業で有名な街であり、資金面でそれを支援する協栄信用組合も、地場産業を支える地域の一員である。

業務の様子

「社長というのは孤独な部分もあって、誰かに話を聞いてほしいというニーズがあります。こちらから『何か相談事はありますか?』と問いかけるだけでなく、セミナーなどをきっかけに悩みを引き出していくことも大切にしています」(石田さん)

物価高騰や金利上昇が続く昨今、製造業の集積地である燕市では、売上は伸びていても利益が取りにくいという声が増えている。後継者問題やM&Aの相談も増加するなか、協栄信用組合では伴走型支援を意識している。石田さんは「地域を支えているという使命感を持って、仕事をしています」と力を込める。

また、同じエリア内での異動が基本のため、長年にわたって地域の情報を蓄積できるのも強みのひとつだ。前任担当者への橋渡しもスムーズで、顧客との信頼関係を途切れさせない体制が整っている。

工場内で語る協栄信用組合の石田さん(写真左)と、イワセの瀬戸代表(写真右)

2026年3月、石田さんが訪れたのは燕市の旋盤加工業者・イワセ。同社の瀬戸代表と工場を眺めながら経営について語り合い、時には笑い合う。「きょうえいさんの職員は異動しても、この近隣にいるからずっと地域を見ていて、地域の会社がどういう仕事をしているのかを知っている」と瀬戸代表。

旋盤加工、プレス、メッキ、磨きなど様々な分野の中小企業が存在し、協力し合っているのが燕三条の特徴。その中で地域密着と蓄積された情報は大きな強みだ。瀬戸代表は「大手地方銀行にはできない差別化ができているし、AIやIoTでも代替できない。だからこそ、きょうえいさんは生き残っている」と太鼓判を押した。

 

「うちに来ないか」企業からそう言われるまでの信頼を─営業担当

白根支店の営業担当・佐藤凌太さん

白根支店の営業担当・佐藤凌太さんは、新卒で協栄信用組合に入組。現在の白根支店が4店舗目で、今年で9年目を迎える。

佐藤さんの仕事は8時40分からスタート。9時ごろから始まる外回りは、午前中は既存の顧客への訪問が中心で、午後は新規開拓に充てることが多い。夕方には帰店して書類作成や融資手続きを行う。残業する日もあるが、17時20分には退勤する日がほとんどだという。

一方で、協栄信用組合はフレックス制度も活用できる。柔軟な働き方ができるとともに、個人の顧客への営業の際には出勤時間を遅らせるなど戦略的に仕事ができることも特徴だ。

佐藤さんは、ある企業の新工場建設の案件に携わったことが強く印象に残っていると話す。設備投資の相談に乗り、土地・建物の取得から融資実行までを一緒に伴走した。「仕事が無事に完了した時、お客様から『うちの会社に来ないか』とまで言われました。それだけ信頼されたことが、とても嬉しかったですね」(佐藤さん)。設備投資という企業にとって大きな出来事に携わり、地域経済を支えていること。それは金融機関の仕事の醍醐味の一つと言える。

協栄信用組合は、県内企業のメインバンク対応状況に関する帝国データバンクの調査で、顧客満足度1位に選ばれた実績もある。「職員がお客様に誠実に向き合っている結果だと思います」と佐藤さんは誇らしげに語る

新卒で同組合に入組した佐藤さんだが、意外にも大学では特に金融関係を専門で学んできたわけではない。「お客様の相談に真摯に向き合える人なら大丈夫」と笑う。

協栄信用組合では、新入職員はまず1カ月間の本部研修で金融の基礎やビジネスマナー、電話対応などを学んでから、各支店へ配属される。その後も1年間月1回の本部研修を受けながら、先輩職員のOJTで実際の現場を見て基礎を固めていく。本格的に一人で仕事をするのは2年目からで長期間基礎を育成する方針にしており、「決算書の読み方なども実務を通して少しずつ習得していった」と佐藤さんは話す。

しかし、やはり営業担当に一番重要なのはコミュニケーションの力。「お客様が心を開いてくれるコミュニケーションを意識しています。あとはスピード感を持って対応すること。お客様から問い合わせがあれば、できる限り素早く回答する。それが信頼につながると思っています」と佐藤さん。どこまでも誠実な接客が、地域密着という同組合の立場を支えている。

 

どんな小さな困りごとにも相談に乗る─ 窓口担当

吉田支店・南吉田支店の主任・佐藤静香さん

「お金を扱う仕事なので、お客様の話をよく聞いて、間違いのないよう丁寧に確認作業をすることを常に心がけています」。そう話すのは、吉田支店・南吉田支店の主任・佐藤静香さん。2013年に入組した窓口担当のベテランだ。

窓口担当は来店した顧客の受付から事務処理まで、一連の手続きを担う。個人の顧客が中心だが、法人の担当者や税金の支払いに来る人など顔ぶれは多様である。

そうした仕事の中で、「税金の納付書の扱いがわからなくて困っていたお客様の案内など、どんなことでもお客様の相談に乗るのですが、些細な困りごとでも解決すると、とても感謝してくださることがあります。そうした際にやはり嬉しくなりますね」と佐藤さんは柔らかく微笑む。また、窓口では商品案内を行うこともあり、来店者に契約してもらった時にも大きなやりがいを感じるという。

窓口業務も経験に従い、為替や振込など担当できる仕事が増えていき、役職も上がっていく。そうしたキャリアアップもやりがいのひとつだ。佐藤さんはこの仕事について「お客様と会話をすることが多いので、そういったコミュニケーションを楽しめる方が向いてるのかと思います」という。

窓口業務をする佐藤さん

なお、佐藤さんは子育て中のため、現在は9時から16時の短時間勤務を選択。ライフステージに合わせた柔軟な働き方を実践している。職場の雰囲気については「有給休暇も皆さん取っているので、休みやすい環境だと思います。仕事の中では自分だけでは解決できないことも毎日ありますが、相談もしやすい環境なので安心して働けます」(佐藤さん)。

また、1時間単位の時間休が取れるのも協栄信用組合の特徴のひとつだ。特に子育て世代は子どもの急な発熱・けがなどに対応しなければならないことも多い。前出の白根支店の佐藤凌太さんも、こうした同組合の制度には助けられていると話す。

 

求めるのは完璧ではなく「一緒に悩みながら成長する仲間」

協栄信用組合では近年、新築による店舗環境の整備にも力を入れており、職員が働きやすい職場づくりが着実に進められている(写真は2025年11月に新しくなった白根支店、新装開店時撮影)

一方制度面では、土日祝日休みに加えて連続休暇・季節休暇があり、1時間単位の時間休取得が可能。育児・介護に関する各種制度や短時間勤務制度も整備されており、男性職員の育児休業取得も進んでいる。転勤はあるが、燕市を中心としたエリアに展開するため、転居を伴うようなものはない。(写真は白根支店)

3人はともに、「金融の専門知識よりも、人と向き合う姿勢が大切」と語る。石田さんは同組合の職員に持ってほしい心持ちについて「金融の仕事は、常に正解があるわけではありません。問題に直面した時に逃げずに向き合えるか、1人で悩まずに周りに相談できるか、そこが大事」と語る。「職員には完璧さよりも成長し続けようという姿勢を持ってほしい。一緒に悩みながら前に進める仲間と一緒に仕事ができたら非常に嬉しいと思っています」。

「一緒に悩みながら前に進める仲間と働きたい」という石田さんの言葉は、協栄信用組合の文化をよく表している。世界経済が厳しさを増す中でこそ、企業にも個人にも、そして職員自身にも寄り添い、一緒に考えながら伴走する。地域密着という言葉の本質を体現しているだろう。

 

組織情報・協栄信用組合

協栄信用組合

協栄信用組合は1952年設立の金融機関で、新潟県燕市を中心に、新潟市南区、西蒲区、秋葉区、加茂市、田上町に計14店舗を展開。役職員数は154人(2026年3月末時点)。「相互扶助」を基本理念に、創業や事業承継、新規事業開発といった融資にとどまらない総合的なサポートにも力を入れ、全国有数の「ものづくりの街」を支えている。

協栄信用組合 webサイト

 

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