【社長インタビュー】新潟のものづくりを陰で支えて85年 工場向けの生産財を扱う専門商社・昭栄産業

昭栄産業の平沢修一郎代表取締役社長
昭栄産業株式会社(新潟市中央区)は、主に製造業の工場向けの生産財を扱う専門商社。工場に必要なものといえば、工作機械や工具を思い浮かべるかもしれない。しかし同社は、一台数千万円の工作機械から、従業員の作業着や照明といった備品まで、文字通り「工場に関わるありとあらゆるもの」を扱い、時には設備導入のコンサルティングなども手がける。
創業85年。ただ物を売る会社ではなく、「工場の課題を解決するパートナー」を目指して県内のものづくり産業を陰から支えてきた。
「工場のものなら何でも」物売りに留まらない商社

昭栄産業本社外観
昭栄産業の主な顧客は、県内各地の製造業の工場や工業系の学校など。同社の営業担当者は日々、県内の工場へ定期的に足を運んで現場の課題を拾い上げる。
その取り扱い領域は業界外の人が考えるよりも遥かに幅広い。商品の製造に直接関係する機械だけでなく、工場の机や椅子、空調設備、さらに季節によっては除雪機まで扱う。「冗談ではなく、『蛍光灯が切れたから持ってきてくれ』と言われたこともある」と話すのは、同社の平沢修一郎代表取締役社長だ。
ただ工場から指示を受け、モノを届けるだけではない。工場で用いられる工作機械は高価な投資。そのため同社は導入にあたっての提案や補助金の相談など、コンサルティングに近い役割も担う。
「ただモノを売るだけ、ではない。工場ごとに課題があって、それを解決するために我々がいる。例えば『新しく導入する工作機械の横に、このロボットをつければ省人化にもなります』とか『この機械を導入すれば、部品の製造時間が短縮できます』などと提案し、SIerも絡めて、みんなで設備を構築していく」(同)。
複数のメーカーに問い合わせる必要なく、昭栄産業一社で機械・周辺設備・補助金申請までを一貫して対応できる。これこそが昭栄産業の強みだ。
現場を知るからこその信頼

「世の中からモノが無くならない限り、この仕事は存在する」と平沢社長。世の中にあるあらゆる製品が工場で作られ、その裏方で昭栄産業のような商社が支えている
昭栄産業の営業は徹底して現場主義を貫く。機械の状態を「音と振動と匂い」で見分けるのも、工場に足を運んでこそわかることだ。近年はAIの急速な普及により仕事の代替が進むが、「パソコンでは音も振動も匂いも感じ取れない」と平沢社長。だからこそ、同社の営業担当者は信頼を得る。
県内全域をカバーするが、同社の営業は20数名。工場に関連する様々な品目や専門知識、業界動向を把握しなければいけないだけに、一人前と認められるまでの道のりは厳しい。
だが近年、「女性の営業候補者を採用できた」と平沢社長は笑顔を見せる。「この業界で女性の営業職は今まで少なかった。本人も『私がフロンティアになります』と言っている。これからどう育っていくか楽しみにしている」(同)。
新潟への恩返しを胸に、3代目として
昭栄産業の創業は1941年。平沢社長の祖父が東京都新橋で「昭和精工社」を創業するが、戦時統制強化のためやむなく休業。戦後、縁あって新潟で商売を始めることになった。
創業の精神には「正しい商道」という言葉が入る。日本経済が浮かれたバブル期にも本業以外の事業には手を付けず、「工場の縁の下を支えてきた姿勢が今日の経営の礎になっている」と平沢社長は胸を張る。「最近はミッションやビジョン、バリューをどうするかとよく言われるが、弊社では、『わが社創建の精神』がMVVのコアをなしているのではなかろうか」。

旅が趣味だという平沢社長
平沢社長は3代目。商社で修行を積んだあと、2014年に昭栄産業へ入社。2022年に父から跡を継ぎ、代表取締役社長に就任した。新潟へ戻る決意をした背景には、「自分が子供のころ、ご飯を食べられたのは社員が汗をにじませて稼いだお金があったから。やっぱりそれは、自分の人生をもって返さないといけない」という思いがあった。
それと同時に、新潟への貢献も理由の一つ。「微力ではあるが、自分のパワーを誰のために使うかと考えたとき、新潟の人のために、地域のために働くということが自分の中にあった。今もそれは大きな原動力」(同)。
「みんなが喜べる商売」という矛盾に立ち向かう商社
平沢社長は目標について、「みんなで喜びたい。これが私の目指すところ」と話す。自社だけが利益を得ればいいという発想ではなく、顧客・仕入れ先・そして自社の三者がともに喜べる状態を作ることが目標だ。「これは、商売をするうえでは矛盾をはらんでいる。しかし、私はこの矛盾に立ち向かいたいし、この矛盾を解決するのが我々の仕事だと思っている。自分たちだけが嬉しい状態は寂しい。みんなで喜びを分かち合いながら商売をしていきたい」(同)。
板挟みになりながらも、顧客と仕入れ先の双方が「よかった」と笑顔になれる落とし所を作り続ける──それが商社としての真骨頂だ。
昭栄産業の仕事は工場の裏方で、表に出ることは多くない。しかし、新潟のものづくり産業を確かに支えている。創業者が記した「正しい商道に基づく」という言葉を胸に、3代目社長と営業社員は、今日も現場へ向かう。