【キシャメシ】これは私が記者になる前の話。涙の味、思い出の『家系ラーメン上越家』(新潟県上越市)

「お客様は我が味の師なり、家系総本山吉村家 統将 吉村実」

これは、私が記者になる前の話だ。

上越市の大型ショッピングモールで働いていた頃、ちょうど「家系ラーメン 上越家」がオープンした。職場から近かったこともあり、開店当初から半年ほど足しげく通っていた。当時は今ほど混雑しておらず、気軽に立ち寄れる店だったことを思い出す。

店に入ると食券を買い、「麺かため、味うすめ、油ふつう」と注文する。すべての家系ラーメン店がそうではないと思うが、常連になると好みを覚えてくれるのが家系ラーメンの魅力の一つだ。何度か通ううちに、大将から「いつものですね」と声をかけてもらえるようになった。

半年ほど通った頃、両親が高齢になったこともあり、私は上越での仕事を辞め、下越の実家へ戻って新しい仕事を始めた。

それから約1年半後、たまたま上越へ行く用事ができた。せっかくだからと思い、久しぶりに「上越家」を訪れた。

店舗外観

(店内、平日11時30分開店、11時40分には駐車場は満車、外にまで行列が出来る)

店に入った瞬間、大将と目が合い、「久しぶりだね」と声をかけられた。

久々だったこともあり、自分でも好みがあやふやになっていて、「麺かため、味ふつう、油ふつう」と注文した。すると大将は笑いながら、「いや、お客さんは『麺かため、味うすめ、油ふつう』ですよ」と教えてくれた。

その一言で、上越で過ごした1年間の記憶が一気によみがえった。

見知らぬ土地で始めた小売業の仕事。店長候補として厳しい指導を受け、友人も少なく、決して楽な毎日ではなかった。

そんな自分のことを、この店の大将は覚えていてくれた。

「ああ、自分はこの街でちゃんと生きていたんだ」

そんな思いが胸に込み上げ、気づけば涙が止まらなかった。

たった一杯のラーメン屋で名前も知らない客として過ごした時間。でも、その時間は誰かの記憶の中にちゃんと残っていた。そのことが、何よりもうれしかった。

大将に「味うすめ」で頼んだラーメンだったが、その日は涙のせいで、いつもより少しだけ味が濃く感じた。

涙の味、思い出の『家系ラーメン 上越家』。

15年ぶりに食べた一杯も、やっぱりおいしかった。

また上越へ行くことがあれば、きっと私は迷わず「上越家」の暖簾をくぐるだろう。

行列を並んで、ようやくラーメンが登場!

開店当時は、入れ放題だったと記憶している。美味しいから入れすぎるお客さんがいるのだろう、かくいう私も当時かなりの量をラーメンに投入したものだ。

麺は、中太でスープと馴染んでスープと麺の絶妙なマリアージュを感じさせる。

「ごちそうさまでした!」

【キシャメシ】は、にいがた経済新聞編集部のメンバーが、日々の取材活動の合間にいただく昼ご飯を日替わりで、真正面から他意を入れず、何モノにもとらわれず、お仕着せのグルメリポートに背を向け綴った、キシャの日常モノローグ。さて明日の担当キシャはどこで何を食べるのか、お楽しみに。

(文章・写真 伊舞静華)

月曜日、火曜日定休日
水曜日、木曜日、金曜日、土曜日11時00分~14時30分、17時00分~20時30分
日曜日、11時00分~14時30分
〒942-0051 新潟県上越市下源入173-4

【グーグルマップ 家系ラーメン 上越家】

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