【特集】新しい職業教育・越境フリマアプリ・学生の起業支援──NIIGATAベンチャーアワード最優秀賞3団体に聞く

6月2日に開催された「NIIGATAベンチャーアワード2026」表彰式後の記念撮影
新潟県内で活動する個人のビジネスアイデアやベンチャー企業の事業を評価するコンテスト、「NIIGATAベンチャーアワード」が開催された。12回目となる今回も、人材育成や地域資源の活用などさまざまな分野で挑戦するプレーヤーたちが集まった。
6月2日のプレゼン審査会では、ファイナリストたちが自身のアイデアを審査員と来場者へ直接披露。審査の結果、株式会社LIGHTSHIP(新潟県上越市)がアントレプレナー部門、株式会社JPNX(新潟県村上市)がビジネスアイデア部門、開志専門職大学(新潟市中央区)が支援部門でそれぞれ最優秀賞を獲得した。
今回の特集では、最優秀賞を獲得した3団体の代表者に話を聞いた。
高校教育の新たなスタンダードをつくる・LIGHTSHIP

新潟ニュービジネス協議会の宇尾野隆会長(写真左)と、株式会社LIGHTSHIP代表取締役・ライトシップ高等学院学院長の松本将史氏(写真右)「NIIGATAベンチャーアワード2026」の表彰式で撮影
「職場体験や起業人講話等が高校でも散見されるが、生徒のキャリア意識を変容させるまでの効果は薄い」。現代のキャリア教育についてそう指摘するのは、LIGHTSHIP代表取締役でライトシップ高等学院学院長の松本将史氏だ。松本氏は県立海洋高等学校(新潟県糸魚川市)の元教員。生徒と共に鮭魚醤「最後の一滴」を開発したことでも知られ、2018年には教員を退職して株式会社能水商店(同)を立ち上げた。しかし、そうした中でも痛感したのは既存の教育現場の限界だった。
LIGHTSHIPは2024年10月、上越市にライトシップ高等学院を開校した。高校生が「働くことで学ぶ」教育システムを採用した通信制高校サポート校で、高校卒業を目指して教科を勉強するのと並行し、生徒は地元企業で週3日程度、OJTを受けながらパート社員として働く。ドイツには徒弟制度の流れを汲む「デュアルシステム」という高校教育制度があり、これを取り入れた形だ。

LIGHTSHIPのプレスリリースより

ライトシップ高等学院は直江津港佐渡汽船ターミナル内にある(2025年10月撮影)
日本人の大半が漠然と、あるいは漫然とした感覚で進学・就職してきた。そうした中、松本氏はこの新しい教育の場で「自分に何ができて、何が得意で、何が弱みで、高校卒業後にどんなキャリアに向かっていけば自分の能力を社会で発揮できるのかを経験から見極めてもらう3年間を作りたい」と話す。
そのために必要なのは、ボリュームのある職場経験だ。生徒たちは面談などを通じて希望先の職場を決めたあと、卒業まで原則同じ職場で約3年間働く。「しっかりと雇用されて、賃金を受け取る責任の中で自分の役割を果たすという、リアルな職業現場で学ぶことを重視している」(松本氏)。

「NIIGATAベンチャーアワード2026」で発表する松本氏
こうした革新性が、「NIIGATAベンチャーアワード」でも評価された。松本氏は「まだ全学年がそろっていない、歩き始めの段階で評価していただいたことは非常に嬉しい」と語り、入学を考える子どもや保護者、連携企業に対し「安心感を持って一緒に歩んでもらえる目印ができたという意味では、今後の事業活動にとって一つの成果」だという。
ライトシップ高等学院はすでに柏崎市と十日町市にもサテライト拠点を開設し、2027年には県央地域、さらに新潟市への展開も準備する。県内で事業を磨いてパッケージ化を進め、その先には全国展開を目指す。「日本の高校教育のスタンダードに育てていきたい」。松本氏はこの新しい教育について、そう熱意を込めて語った。
村上初の上場を目指して・フリマアプリ開発のJPNX

株式会社JPNXのCEO・板越太成氏(写真右)「NIIGATAベンチャーアワード2026」の表彰式で撮影
「メルカリ」「楽天ラクマ」「Yahoo!フリマ」……リユース市場の広がりとともに、フリマアプリ・サイトも急成長している。そうした中、気軽に海外へ出品できるフリマアプリの開発を目指すのが、村上市発のベンチャー・JPNXのCEO、板越太成氏だ。
「商品は海外のほうが高く売れるが、個人ではその相場のデータにアクセスできない」と板越氏は解説する。さらに、外国語の説明文を書く手間や国際発送、税務に関する知識など、国内で販売するのと比べて煩雑な部分は非常に多い。「eBay」など海外市場へアクセスできるものもあるが、日本人向けではないのが現状だ。
JPNXが目指すのは、こうした手間を省き「フリマアプリ感覚で使いやすいシステム」(板越氏)。特に、海外の相場データを収集・提供することで、個人でも適切な価格で海外に物を売ることができる環境の構築を目指すという。併せて構想するのが、AIによるスキャン機能の実装。スマホで商品の写真を撮るだけで海外の相場が把握できる仕組みだ。
アプリは現在開発中で、今年7月から8月ごろのリリースを予定している。

アプリとAIスキャンのイメージ(画像提供:JPNX)。多くの商品がある中でも特に、額面に情報が集約され、東南アジアやヨーロッパなどで人気が高いトレーディングカードなどに対して有用だという

「NIIGATAベンチャーアワード2026」でJPNXが最優秀賞に選ばれた瞬間の板越氏(写真左)
JPNXの社員は現在、板越氏と開発を担当する鈴木惇也氏の2人。アプリの開発や資金調達などで「今が一番大変」と板越氏は苦笑いする。しかし、今回の「NIIGATAベンチャーアワード」受賞を機に「多くの事業者や個人から連絡が来た。新潟に籍を置いておいて良かった、とベンチャーアワードを通して思った」と話す。
十数年前に登場した「メルカリ」がフリマ市場を開いたように、個人で海外へ商品を売ることができるようになれば、それによって生まれる経済効果は計り知れない。だからこそ板越氏は力を込める。「村上市には上場企業が1社もない。私たちは本気で、村上初のIPOを目指す」。
若者の起業家精神に火をつける・開志専門職大学

開志専門職大学の学長・各務茂夫氏(写真右)「NIIGATAベンチャーアワード2026」の表彰式で撮影
「NIIGATAベンチャーアワード」には3部門ある。これまで紹介した「アントレプレナー部門」と「ビジネスアイデア部門」は、新事業を展開している、あるいは検討している人を対象とした部門。一方、そうした起業家やベンチャー企業を支援してきた実績のある個人・団体を対象としたのが「支援部門」だ。今回、「支援部門」を受賞したのは開志専門職大学。AIによる評価で選出される「AI審査賞」とのダブル受賞となった。
開志専門職大学は2020年に開学。実務家教員の配置や600時間以上の企業内実習など社会での「実践的な学び」を重視したカリキュラムが特徴だが、同時に、起業家の育成にも力を入れてきた。

2025年11月、開志専門職大学で開催された「Open Gate NIIGATA」(ALL新潟大会)の様子
その取り組みの一つが、2023年から開志専門職大学が中心となって開催している「Open Gate NIIGATA」。高校生と大学生を対象に、社会課題の解決に繋がるアイデアを募り、発表の場を設けるビジネスアイデアコンテストだ。特徴の一つは県内各地に予選会となる「ラウンド」を設けている点で、開志専門職大学による「開志ラウンド」、新潟大学による「新大ラウンド」のほか、「長岡ラウンド」や「燕三条ラウンド」など、回を重ねるごとに規模を広げ、2025年には高校生・大学生を合わせて111組が参加するまでに成長した。
開志専門職大学の学長・各務茂夫氏は、若者の挑戦をスポーツに例えてその重要性を説く。「一度25メートルを泳げるようになれば、その感覚は身体に残る。同じように、学生はすぐ起業するとは限らない。しかし、企業に就職後、新規事業開発に携わることや、会社を立ち上げたいと思う日が来るかもしれない。その時、コンテストで人前に立ち、自らのアイデアを磨いた経験が生きてくる」。

「NIIGATAベンチャーアワード2026」で発表する各務氏
「Open Gate NIIGATA」は2026年、村上市や新発田市などを対象地域としたラウンドを設置する予定。さらに今後、魚沼や上越、佐渡などにも裾野を広げる構想だ。そうした中での今回の受賞について、各務氏は「大変感激している。受賞したからには、なおさら責任を持って、この広がりを継続していきたい」と語った。
新潟県の高校生・大学生にとっての「登竜門」へと成長していく「Open Gate NIIGATA」。だが、各務氏が期待を寄せるのは、規模の拡大だけではない。「継続は力なりだと考えている。10年続けばそこから起業家が生まれ、その人たちがロールモデルになり、今度は審査員やメンターとして帰ってきてくれるかもしれない」。若者が挑戦し、起業家となって次の世代を支える。「Open Gate NIIGATA」は決して一過性のイベントではなく、そうした循環が生まれる場に成長していくことが期待される。
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