【日本唯一の「食の総合大学」が進化】新潟食料農業大学が2026年度から新体制へ

新潟食料農業大学の中井裕学長

新潟食料農業大学(新潟県胎内市、中井裕学長)が2026年4月から新体制でスタートする。

開学から8年目を迎える同大学は、農場から食卓までを一貫して学ぶ日本唯一の教育機関として、新科目の導入と新プロジェクトの立ち上げにより、さらなる進化を遂げる。学生たちが食料産業の全体像を理解し、どの分野でも中核として活躍できる人材となることを目指した改革だ。「2026年度は本学にとって大きな転換点となります。これまで培ってきた教育の成果を基盤に、時代が求める新たな学びを提供していきます」と中井学長は語る。

 

食料産業114兆円を担う人材を育成

新潟食料農業大学の胎内キャンパス(画像提供:新潟食料農業大学)

同大学が対象とする食料産業は、農林水産業に加え、製造、外食、流通を含めた国内生産額114兆円という巨大市場だ。これは農林漁業単体の約10倍、日本の全経済活動の7%に相当し、自動車産業(60兆円)や建設業(67兆円)を上回る規模となっている。同大学は、この巨大産業を支える人材を育成することで、日本の食料産業の発展に貢献する使命を担っている。

さらに、同大学の特徴は、農学部・食品学部・栄養学部・家政学部・経済学部の内容を一つの学部で学べる点にある。サイエンス、テクノロジー、ビジネスの三位一体の教育により、「高い専門性を持った食のジェネラリスト」を育成。知識を持つだけでなく、理論と実践の両面から食料産業を理解し、地域や企業の核となって自ら動ける人材の輩出を目指している。

食料産業を多角的、総合的に学ぶ仕組みになっている(画像提供:新潟食料農業大学)

就職実績も着実に成果を上げており、2025年3月卒業生の就職率は100%(就職希望者132名)を達成。就職先は食品関係が約5割、農業関係が約2割、公務員が1割で、大手企業への就職者も多い。特筆すべきは公務員試験の合格実績で、2025年3月には農林水産省(一般職農学)1名、新潟県(農業職)6名など計12名が公務員として就職。全就職者の8.3%を占める。大学卒対象の公務員試験を多数が突破しており、同大学の教育レベルの高さを示している。

「多くの高校生は、農業や食品という分野の可能性を十分に理解していません。実は極めて大きな産業であり、農業や食品以外にも多様なキャリアパスがあることを、本学での学びを通じて実感してほしいと思います」と中井学長は話す。

新潟食料農業大学学長・教授、東北大学名誉教授で農学博士でもある中井裕学長。2024年4月、学長就任。

 

2026年度からの注目科目と新プロジェクトがスタート

2026年4月から新体制の目玉となる科目がある。これらは学生たちの多様な進路希望に応えるとともに、社会が求める実践力を養うために設計されている。

「ドローンを活用したスマート農業などを学ぶ『スマート農業概論』、食料問題解決のため従来のフードチェーンに導入が期待されるAI、IT、電気などを活用した革新的な食品生産技術を学ぶ『フードテック』など、食品や農業に関わる科目だけでなく、社会で必要な思考法を身につける『ロジカルシンキング(論理的思考法)』、お酒やお茶、発酵飲料の歴史・文化・ビジネスを学び、実験実習も行う『酒学』『飲料学』、『データサイエンス』や『ビジネスプランニング』など、多角的な学びを取り入れていきます」と中井学長。

さらに、既存科目の「実践食育論(自炊塾)」も大幅に拡充され、のっぺなどの郷土料理、味噌造り、漬物・乾物加工など地域の食の伝統技術の伝承や、調理、製菓製パン実習などを充実させる予定だ。

リニューアルする科目と新科目では、多角的な視点と実践的なカリキュラムを通して、食や農業について学ぶ(画像提供:新潟食料農業大学)

2025年4月入学者の進路希望は、食品製造・加工が31%、農業法人が25%、食品流通・販売が15%、公務員が13%と幅広いが、中井学長は「それぞれの志望に対応できる、より実践的で社会直結のカリキュラムを新体制で用意しました。学生たちには、教室で学ぶだけでなく、実際に体験し、考え、行動する力を身につけてほしいですね」と意気込む。

また、新体制のもう一つの柱が、学生と教員が共に取り組む新プロジェクト「風土の食と飲」だ。このプロジェクトは学生と教員による活動で、1年生から参加可能になる。学年を超えた縦のつながりの中で、先輩から後輩へ技術と知識を継承していくプロジェクトだ。

「風土の食では、地域食材を用いた調理・製菓・製パンを実践し、新潟の食を中心に歴史・文化を学びます。一方の風土の飲では、日本や世界の酒、茶や発酵飲料の歴史・文化を学び、酒原料から醸造、製造、ビジネスまで一貫して触れることができる仕組みです。楽しみながら学び、教員や先輩たちと一緒に新しい製品を作る。この実践的な学びこそが、本学の強みです」と中井学長は強調する。

「風土の食と飲の活動は商品化、販売に繋げるとともに、卒業論文、修士論文、博士論文として学問的に深めることも可能です」と語る中井学長

 

最先端研究と2027年度改革への展望、さらに発展する“食農プロジェクト”

新潟食料農業大学×金鵄盃酒造株式会社×五泉市による産学官連携事業で日本酒を開発製造(画像提供:新潟食料農業大学)

従来から継続する多数のプロジェクトも発展させる。有機米、棚田、焼き畑、赤カブ、村上茶、イタリア野菜、アップルシードル、酵母、日本酒、乳酸菌、麹など、企業や県内6市町と連携したプロジェクトを通じて、学生たちはすでに多くの商品開発に成功し、実際に販売している。学生たちが企画段階から関わり、試行錯誤を重ねながら商品化に至るプロセスは、何ものにも代えがたい学びの機会となっている。

これまで学生たちと企業で手がけてきた商品開発の一例(画像提供:新潟食料農業大学)

研究面でも同大学は大きな成果を上げている。現在、農林水産省や内閣府から受託した、研究費総額5億円を超す、さまざまな大型研究プロジェクトが進行中で、環境保全型食料生産に関する研究を展開している。「これらの研究には学生も参加し、最先端の技術や知見に触れることができます。理論と実践を融合した教育環境が、学生の成長を後押ししています」と中井学長は語る。

棚田みらい応援団での活動の様子(画像提供:新潟食料農業大学)

同大学は2027年度にもさらなる改革を予定。2026年度の新体制を基盤にさらなる教育内容の充実を図る方針だ。

「理論だけではなく、自ら動ける人になってほしい。地域や企業などの核になって活躍できる人を育てたい。2026年度の新体制を基盤に、常に進化し続ける大学でありたいです」と語る中井学長。変化し続ける食料産業のニーズに応え、常に時代の一歩先を行く教育を提供し、食料産業の未来を担う人材育成することが、同大学の使命だ。

 

【大学情報】

新潟食料農業大学 胎内キャンパス(新潟県胎内市)

新潟食料農業大学
胎内キャンパス 新潟県胎内市平根台2416 Tel.0254-28-9855
新潟キャンパス 新潟市北区島見町 940  Tel. 025-212-3301

新潟食料農業大学 webサイト

新潟食料農業大学は、食・農・ビジネスに特化した実学重視の大学として、2018(平成30)年に開学した私立大学。開学以来、「食のジェネラリストの育成」を掲げ、農業生産から食品加工・流通・販売、さらには経営戦略までを一貫して学べる教育カリキュラムを展開。実習を重視した教育方針により、地域農業や食品関連企業との連携も活発で、新潟県内外の食料産業界に即戦力となる人材を輩出している。

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