ドットコム・マーケティング 大江孝之社長×アルファドライブ 春川英広拠点長 トークセッションで語られた「事業承継、新規事業のリアル」

写真左がアルファドライブ新潟拠点長・春川英広氏、右がドットコム・マーケティング・大江孝之代表取締役社長

4月11日、新潟市中央区の沼垂テラスで、「事例の数だけ学びがある/新規事業のリアルを語る」と題した勉強会が開かれた。会場には起業家や若手ビジネスパーソンらが集まった。

勉強会は、株式会社ドットコム・マーケティングの大江孝之代表取締役社長と、株式会社アルファドライブの春川英広新潟拠点長の2人によるトークセッションを軸に構成された。セッションでは意外にも、2人がそれぞれの「過去の失敗」を率直に語る展開となった。

大江氏がドットコム・マーケティングに入社したのは2005年である。以来、Webデザインやディレクション、コンサルティングなどで実績を重ねてきた。2021年には創業者の政金一嘉氏から事業を承継し、社長に就任した。ただ、カリスマ経営者と呼ばれた創業者からバトンを受け、自分より社歴の長い社員もいる中での事業承継だったため、当初は大きな重圧がのしかかったという。

同社は2000年6月、Web制作・マーケティング会社として創業した。2009年には「医療介護情報事業部」を立ち上げ、人材難に悩むこの分野の課題解決に向けて舵を切った。人材紹介事業はその後、対象領域を広げ、2017年には「新潟転職Komachi」を立ち上げた。事業は拡大し、新潟トップの紹介実績を挙げるまでになった。

大江氏は当時を振り返り、「事業承継したプレッシャーから肩に力が入ったこともあり、ミッション・ビジョン・バリューの構築を追い求めるあまり、社員一人ひとりの気持ちに向き合えていなかった」と反省する。一部の社員からは「もうついていけない」と厳しい言葉も投げかけられ、社内の一体感は失われていったという。「ミッション・ビジョン・バリューの前に、現場の仕事を理解することが先決だった」と大江氏は悟った。

大江氏はWebクリエイターとしての実績は積み重ねてきたが、医療介護や人材紹介の分野については本質的な部分を理解しきれていなかったという。そこで一念発起して学び直し、自ら採用エージェントを務めるまでになった。カリスマの引退以来、まとまりを欠いていた会社も、そうした新社長の姿を目の当たりにし、再び一丸となっていったという。

多くの若手にとって「わかりみ」が多い勉強会となった

一方、春川氏は32歳のときに家業のギフト店を継いだ。ギフト業界そのものが先細り傾向にあったうえ、同一エリア内には競合も多く、事業承継の時点で会社の業績はすでに下り坂だったという。それでも春川氏は何とか家業を立て直したいと考え、競合に対抗しようと価格競争や営業強化に身を投じた。しかし、会社は2年後に倒産した。

春川氏はその当時を振り返り、「会社の長期課題が放置されていたことが大きかった。競合他社ばかりを見た商売をして、肝心のお客様を見ていなかった」と語った。

この挫折を教訓に、春川氏は中小企業の経営サポートを仕事にすることを決意した。フリーランスとして活動した後、2012年10月に新潟IPC財団へ入職。在籍した10年間で約6,800件の経営相談に対応した。相談分野は「起業」「新規事業開発」「販路開拓」「事業再生」など多岐にわたる。2024年に中小企業支援大手のアルファドライブが新潟に進出したことを機に、拠点長として春川氏に白羽の矢が立った。

いわばこの分野のエキスパートである2人が、自ら味わった挫折を語ることで、そこから得られる教訓の多さが浮かび上がった。それだけ事業承継には、一筋縄ではいかない現実があるということでもある。承継直後はどうしても肩に力が入り、目の前の課題に意識が向きがちである。後継者が自らの経営を少し引いた視点で見られるようになるまでには、ある程度の時間が必要なのだろう。

カリスマからの事業承継と、業績不振に陥った家業の跡継ぎという2つのケースを通じた今回の「しくじりレクチャー」は、その場にいた多くの若手にとって、深い共感と学びのある時間になったようである。

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