【住まいの新発想】新築でもリノベでもない第3の選択肢「+Modify(モディファイ)」 ― 「あの名作」が時空を超えたリファイン

「現状」を否定しない考え方=+Modify

2026年の今、新築住宅の建築コストは高騰を続け、これまで「いつかはマイホームを」と考えていた若年層も、購入をためらうケースが増えているという。そのスピードはすさまじく、「そろそろマイホームを」と思い立ち、各社を見比べて検討している間に価格が上昇してしまうことも珍しくない。都市部で一戸建てを取得するハードルは、年々高まっている。

一方で、中古住宅を購入してリフォームやリノベーションを施すという選択肢も広がっている。ただ、一般的な改修では断熱性能や耐震性能などを新築同等まで高めることが難しいケースもある。全面改修に近いフルリノベーションになれば、新築と大きく変わらないコストを要することも少なくない。

そんな時代に「+Modify(モディファイ)」という発想が注目されるのは必然だ。

+Modifyはアサヒアレックスホールディングス株式会社(新潟市中央区)と建築設計会社のReeL株式会社(同)が合弁で立ち上げたLiveCity株式会社が展開するリファイン住宅のブランド名となっており、商標登録もされている。これが、新築でもリノベでもない第3の発想なのだ。

「モディファイ」自体は自動車やメカニック、ITの世界で目にする頻度が高く「修正する」「手直しする」といった意味を持つ。もともとの躯体や土台、設計思想を活かしたままで、直す必要がある箇所を直すことを指す。

住宅における「モディファイ」は「新築」や「リノベーション」とどのような差異があるのか。新築は言わずもがなであるが、「リフォーム」や「リノベーション」は、ある意味「現状を否定する」ところから入る。リフォームは「現状の価値を維持」であり、リノベーションは「現状の価値の再編」である。リフォームは既存の価値を維持・回復すること、リノベーションは既存住宅に新たな価値を付加することを主眼とする。

モディファイは「現状へのリスペクト」からスタートする。既存住宅(モディファイではドナーハウスと呼ぶ)の設計思想、技術、美意識を尊重しながら、性能面、間取り、デザインなどをアップデートさせる。その家がもともと持ち合わせる「価値」を「継承」する、それが+Modifyである。

なぜ規格住宅なのか=それが名作だから

リファインの対象となるドナーハウスは1975年から2005年の間に建築された、大手ハウスメーカーや地元の有力なビルダーによって建てられた「名作規格住宅」に限定される。

昨今新築市場の主流となっている注文住宅ではなく、規格住宅に絞るのはなぜなのか。それはやはり、大手メーカーやパワービルダーが、その時代時代の知見を結集して開発された規格住宅は「ものが良い」からだ。まず大手が手掛けていた規格住宅は、工場でファブリケーションされた資材が基本なので、品質の安定性がある。まだデザインについても「長く住んでも住み飽きない」ような汎用性の高いスタイルを採用している。当時の住宅でなければ持ちえない、新築住宅では再現不可能な細部のデザインなども存在する。

耐震性も現代の新築家屋と同水準。「名作」と言われる所以がここにある。

一方で注文住宅は、施主の意向が端々に反映されているため汎用性には乏しいと言える。とりわけ当時の大手ハウスメーカーが供給した規格住宅は、工場生産比率が高く、品質が均質であることも特徴の一つとされる。

アサヒアレックスが33年前に建築した新潟市中央区信濃町の住宅。「名作規格住宅」と言われる高水準の家だ

こうした1975年から2005年の30年間に建てられた「名作規格住宅」は現在、全国に500万戸~700万戸のストックがあるという。しかもこうした名作が毎年「誰にも継がれずに」解体され続けているのが実情。ここに「継承されるべき価値」の寸断が起こっている。

国際比較でよく使われる「既存住宅取引戸数÷既存住宅取引戸数と新築住宅着工戸数の合計」という指標では、2023年の既存住宅流通シェアは、日本が16.2%だったのに対し、米国82.4%、英国74.5%、フランス74.3%となっている。算定方法や各国の統計制度が異なるため厳密な横比較には注意が必要だが、日本の市場が新築に大きく偏っていることは明らかだ。しかも日本には世帯数を上回る住宅ストックも存在する。

人口減少、空き家増加、建築費上昇を背景に、「建てて増やす市場」から「既存住宅を選別し、性能を高め、循環させる市場」へ移行せざるを得ない段階に、日本も入って来たといえる。住宅を「消費財」ではなく「資産」として次世代へ引き継ぐという考え方は、欧州では以前から一般的だ。一方、日本では新築偏重の市場が長く続いてきた。+Modifyの試みは、その価値観そのものを問い直す提案とも言える。

住宅業界になかった「ヴィンテージ」の発想

某日、アサヒアレックス×ReeLが手掛けた+Modify住宅を見学した。立地は新潟市でも高級住宅街のひとつ、中央区信濃町。築33年のアサヒアレックスが手掛けた住宅がドナー。この立地で土地約58坪、延べ床面積約62坪というから、ゆとりある住宅と言える。

外観を見た限り、新築住宅にしか見えないが、中に入るとさらに「アップデート感」が溢れてくる。間取り、生活導線、デザイン、機能面は現代の住宅と比べても遜色ない。。建物の外壁・内壁はすっかり新調され、新築そのもの。サッシや断熱性能も最新でも上位の基準だ。

リノベでも新築でもない第3の選択肢。過去と現代の融合

33年前の部材をそのまま活かした部材。現代の新築ではなかなか表現されないデザイン性がある

一方で現代の新築住宅が持たない温かみやデザイン性、洒脱な遊び心などが節々に感じられる。33年前にアーリーアメリカンを基調として建てられた家だが、さらにその設計思想は先鋭化したようにも見える。過去に創られた価値が、こうして次世代に継がれていく。

+Modifyを手掛けたReeLの弦巻大輔代表取締役に話を聞いた。

―― ドナーハウスのどこを残しましたか?

弦巻代表「基本的な躯体、基礎は前のままです。外構の塀ももともとあったものですね。細かい点で言えば、階段の手すりや入口のドアなどはそのまま残してリペイントしました。このあたりは現代の新築住宅ではなかなか表現されにくいデザインです」

―― まるで新築に見えますね

弦巻代表「これでも壊した壁は4カ所だけ、付け足した壁も4カ所だけです。それでも体感としては、劇的に空間が変わったように思えますね。構造体をいじっていないので、これでコスト的には新築費の6割程度で収まっています」

―― 古いものを新しく直した、作り替えたものと違い、当時のデザインと現代の発想が融合することで新たな価値になっていますね。そのうえ機能的には最先端です

弦巻代表「私たちはこれを『時間のデザイン化』と呼んでいます。当時の傷、使用感、当時の時代背景などですね。服飾や自動車の世界ではすでにストックの差別化がありますね。戦時中のジーンズや過去の名車などが高値で流通するようなビンテージ化がありますが、住宅の世界ではこの発想がまだありません。+Modifyを通してこれを創り出していけたらと思います。

Reel株式会社代表取締役の弦巻大輔氏

オープンハウスが7月18日にグランドオープン

人口減少や空き家の増加、建築費の高騰を背景に、日本の住宅市場は「建てて増やす市場」から「既存住宅を選別し、性能を高めながら循環させる市場」へと移行しつつある。そうした中で「名作を現代へ継承する」という+Modifyの思想は、今後さらに注目を集める可能性がある。

生活導線もアップデートされ現代風に構築されている

この発想は、日本ではまだ新しい。しかし海外に目を向けると、とりわけ欧州では決して珍しい考え方ではない。

日本では長らく「家は新しく建てるもの」という価値観が主流だった。住宅は築年数とともに価値が下がる資産と見なされ、新築を取得すること自体が一つのステータスでもあった。一方、欧州では住宅を世代を超えて住み継ぐという文化が根付いている。建物そのものが持つ設計思想や街並みとの調和、歴史的価値を尊重しながら、必要な部分だけを修繕・改修し、性能を現代水準へと高めて使い続けることが一般的である。

もちろん、日本と欧州では住宅市場や法制度、建築文化が異なるため単純な比較はできない。しかし、「壊して建て替える」のではなく、「価値ある住宅を見極め、磨き上げて次世代へ引き継ぐ」という考え方は、日本でも徐々に現実味を帯び始めている。

+Modifyが提案するのは、単なるリフォームでもリノベーションでもない。「建物が本来持っている価値を継承する」という、欧米の住宅思想に近い考え方だと言える。

ドナーハウスの候補になり得るかつての名作規格住宅は、まだ国内に500万戸以上のストックがある。それを考えると+Modifyという新発想は、国内の住宅流通におおきな影響を与えるのではないか。

 

「これはドナーハウスを建てた大手ハウスメーカーやパワービルダーにとっても好影響だと考えます。自分たちが建てた規格住宅が数十年の時を経て現代にアップデートされることは、住宅そのものの価値が高いという裏付けですから、新築生産にもフィードバックされ、メーカーやビルダーの信用も上がるでしょう。今回はアサヒアレックスが建てた住宅なので『アサヒアレックス×ReeL』となっていますが、ここは様々なコラボが成立する。各社のアーカイブ掘り起しにもつながります」(弦巻代表)

新潟市中央区信濃町にモデルハウスが、7月18日~20日グランドオープン

日本の住宅市場が「建てる」から「継ぐ」へと価値観を変えつつあるのだとすれば、その変化を象徴する一つの事例として、この+Modify住宅は興味深い存在と言える。

7月18日から20日まで、新潟市中央区信濃町でモデルハウスが一般公開される。新築でもリノベーションでもない「第三の選択肢」を実際に体感できる機会となりそうだ。

(文・写真 伊藤 直樹)

【関連リンク】

アサヒアレックス モディファイ

 

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