「Make Wow Moments.つくろう、ワォ!と楽しくなる瞬間。」の実現に向けて 牛膓栄一新社長が語る、三幸製菓3つの強みとは

牛膓栄一代表取締役社長。1983年、株式会社ロッテに入社。2018年同社代表取締役社長執行役員に就任し、2024年に退任。2025年10月、三幸製菓代表取締役社長に就任
2025年10月、三幸製菓株式会社(新潟市北区)の代表取締役社長に就任した牛膓栄一氏は株式会社ロッテの元社長だ。就任から半年以上が経過し、同じ菓子業界ながら「外から来た目」を持つ新社長の目には、三幸製菓の強みと課題として何が映ったのか。
最後発の米菓メーカーだからこその「強み」
──社長就任の経緯について教えてください。
ロッテの社長を退任後、同社の特別顧問として1年ほどを過ごしました。しかし、まだ自分の中では、「現場に近いところで仕事をしたい」という感覚がありました。
そんな折、知人からの紹介で三幸製菓とご縁をいただきました。お話を伺う中で、「会社をこれからも成長させていきたい」という熱意が伝わり、お話を受けることにしました。
──三幸製菓にどのような可能性を感じましたか?
同じ菓子業界の別会社から来た者として三幸製菓に入社してみると、三つの強みに気がつきました。
一つは、商品力とブランド力。「雪の宿」や「ぱりんこ」に代表される柱となるブランドを多く有しています。三幸製菓は米菓メーカーとしては最後発だからこそ、多くのイノベーションを起こしており、それに伴う開発力とスピード感があります。こうした部分は、最後発のチョコレートメーカーであるロッテに近い部分です。

「新潟の県民性かもしれないが、三幸製菓の社員は非常に真面目」と評する牛膓社長。「一方で奥ゆかしい部分もあるので、挑戦できる環境や前へ出ることができる環境を整えたい」という
二つ目は従業員が非常に若いこと。現在の三幸製菓は世代交代が進み、40代の役員や30代の執行役員がいて、その下の部長・課長にも若い社員が揃っています。若いからこそ完成されていない部分はありますが、今挑戦と経験を重ねることで、5年後10年後にはさらに成長が期待できる会社になると思います。
三つ目は、社風が開かれており自由闊達であること。三幸製菓には「Make Wow Moments」というブランドスローガンがあります。三幸製菓は業界2位とはいえ、まだまだ業界1位との差は大きいと感じています。だから、規模の拡大よりも顧客と従業員が「ワクワクできる」商品や環境をつくろう、という意味が込められています。
部署間の壁を取り払って

牛膓社長は神奈川県横浜市の生まれだが、両親は新潟県出身。子どもの頃から新潟にはよく来ていたという
──社長就任から半年以上が経ちましたが、まず最初に取り組んだことについて教えてください。
面談などを通し、会社全体の方向性を揃えることに取り組んでいます。自社の立ち位置、強み、世の中にどう貢献できるか、それをどう実現していけばいいのか……そういったことを明確にし、一人ひとりが共通の認識を持つことが重要です。
──社長ご自身の経営スタイルや、大切にしている点を教えてください。
社長というよりも私個人としていつも大事にしているのは、「仕事も生活も、一人では何もできない」ということです。人は絶えず誰かに助けられながら生きているので、その感謝の気持ちを社員にも持ってほしい。
会社には様々な部署があり、商品を作って店頭に並ぶまでには様々な社員の手助けが必要です。マーケティング、製造、物流、営業など、様々な部署が連携しながら商品をお客様にお届けしています。さらに、商品がお客様のもとに届いた後も、お客様相談室がお客様との大切な接点を担っています。
私は以前から、部署の壁が好きではありませんでした。部署や上下の垣根を超えて社員が自由に意見を言い、何かを生み出し、楽しいと思える環境をつくることが社長としての私の役割だと考えています。
──これまでのご経験の中でも、同様の改革を?
世の中は多様化し、良いものを大量に並べれば売れるという時代ではなくなりました。
目まぐるしく変化する価値観の中で、一人ひとりの従業員が自分で考え、より良い方向性を見出すような環境にしなければうまくいきません。部門を超えて交わり、人が人を助ける仕組みをつくらなければいけない。前職で私が社長に就任した当時は、グループ各社が合併したタイミングでしたので、これはチャンスだと思い部門間の壁をなくし、共通の目標を設定しました。
米菓メーカーというイメージを超えて

三幸製菓本社
──これからの三幸製菓の、課題になってくる部分を教えてください。
販売チャネルが限られている部分があります。例えば、主戦場はスーパーやドラッグストアに集中しており、コンビニエンスストアでの販売は限られています。お土産商品も、展開を進めている段階です。
また、海外展開についても拡大の余地があるため、アメリカと中国をメインに、我々のブランドをどう活かしていくかを考えています。日本市場以上に後発の立場になるので、やはり面白いものを提案しなければいけない。商品だけでなく企画もそうですし、仕組みもオリジナリティ溢れるものが必要です。こうした部分は課題であると同時に、非常に可能性を感じています。
──牛膓社長が就任される前から販売されていますが、三幸製菓は近年、グミやラムネなども展開しています。米菓メーカーのイメージだったので意外でした。
米菓を主力としつつ、色々なお菓子を作る会社になりたいと考えています。ただ、グミやラムネはすでに大きなメーカーがあり、このジャンルだけを拡大しようとしているわけではありません。今の世の中にはまだない、顧客が欲しているものを先回りして捉え、ニッチでエッジの効いた商品を提供していきたいと考えています。

三幸製菓が2025年9月にテスト発売したラムネ「UPROCK」は、ブドウ糖やカフェインなどを配合し、エナジードリンクのようなイメージを打ち出した(写真は2026年8月末までの期間限定「UPROCKサマーギャングパイン味」、画像提供:三幸製菓)
──なるほど。では今後、グミやラムネでもない、全く別の商品を出す可能性も?
米菓の素地も大事に活かしながら、我々の技術に合う物があれば挑戦していきたいですね。様々な企業との協力関係やネットワークも生かしていきたいと考えています。三幸製菓のイメージそのものを「(米菓だけでない)いいものを提供する会社」や「ワクワクを生み出す会社」に変えていきたい。
コンビニや海外へ展開するにあたり、オリジナリティのある商品を提案する必要があります。現代は商品開発が難しくなりました。一つの商品を作ったらみんながそれに飛びつくような時代ではありません。また、流行りが変わるスピードは速く、情報はすぐに流されてしまいます。成功や失敗にとらわれるのではなく、色々な試行錯誤をしていく必要があります。

菓子業界に携わって約40年。「菓子は単なる食品ではなく、老若男女関係なく気持ちを満たせるものであり、コミュニケーションツールでもある」と菓子愛を語る牛膓社長
──今後の三幸製菓が目指す場所を教えてください。
2022年の火災事故を、三幸製菓は絶対に忘れてはいけません。社員の安全を徹底して守ることが、まず第一に目指すべきところです。
それと同時に、若い社員が伸び伸びと働ける環境を整え、そうした文化を根付かせていきたいと考えています。ワクワクしながら働き、お世話になっている新潟に貢献していくこと。それが我々の使命だと感じています。
牛膓社長が語るように、多様な価値観や好みが認められる時代には、菓子に限らずあらゆる商品・サービスで「万人にウケる」ヒット商品を生み出すのは難しくなった。だからこそメーカーも多様な意見を反映できる環境をつくる必要があり、ロッテ時代に改革を進めた牛膓社長の存在は心強い。
築いてきたブランドを土台にしながら、米菓にとどまらない挑戦を続ける会社へ。三幸製菓がこれからどんな「ワクワクする」商品を生み出していくのか楽しみにしたい。