「お金に働いてもらう時代へ」― 新NISA活用で広がる資産運用の裾野 <岡三にいがた証券 江越 誠社長>

長岡の地で120年以上の企業として

「当社に面接に来られた若い人に、こんな話をすることが増えました。『貴方たちが生きる時代は、お金をそのままにしていると目減りする時代。将来的には年金が頼りにならないかもしれない。だからお金に働いてもらう発想をしなければならない。資産のすべてをほかのものに変える必要はないが、保守的に固まったポートフォリオをほかのものに振り分けるなど、資産形成に向き合ってください』と」

そんな話をするのは岡三にいがた証券株式会社の江越誠代表取締役社長。

長岡市の岡三にいがた証券株式会社本社

同社の前身となる丸福証券のルーツは1898年(明治32年)に長岡の地に創業。2014年に業務提携先である岡三証券グループの冠をつけた岡三にいがた証券に社名変更した。地域を大事にする経営方針は、そうした社名変更の際にも「にいがた」を残し、地域と末永く歩んでいくという願いを込めた。

明治の頃の長岡は、東山油田や米相場などの関係で、投資熱が高い土地柄があったとされる。そのため小規模の証券会社が数多く存在した時代もあったが、それらは徐々に集約されていった。これは長岡だけでなく国内全体の流れである。

地方の小規模な証券会社が集約されていった背景には、証券取引の主戦場がインターネットに変わっていったことが挙げられる。大手証券会社も、そうした影響で、日本株の対面取引から外国株の取り引きや仕組債などにシフトしていった。地方証券会社は、株式や投資信託の売買手数料に依存した従来の収益モデルが通用しにくくなった。

そうした流れの中でも岡三にいがた証券は「日本株に強い証券会社」を貫き、大事にしてきた。「日本株に強い証券会社」とは、日本企業を深く調べ、有望企業を発掘し、適切な価格で売買する能力が高い証券会社と投資家からは評価されるため、根強いファン層もあった。

安倍晋三内閣によるアベノミクスを境に日本株が見直された。また、ネット取引におけるセキュリティの複雑化から、一般の投資家が距離を置くケースも多くなり、再び対面の証券取引に人が戻って来た感がある。

では、現在、同社はどのような事業に力を入れているのか。

「昨今、私たちが重要視しているのはソリューション事業です。個人のお客様からの相続や贈与のご相談、企業のお客様であれば事業承継のご相談など、課題解決に向けたお手伝いです。地元の上場企業に対しては、株主づくりの面でもお手伝いさせていただいています」(江越社長)

地方証券会社には、大手やネット証券にはない資産がある。それは、地域の顧客と長年築いてきた信頼関係に他ならない。それが令和の今、再び強みとなって見直されている。

新NISAは地方証券に追い風か

地方証券会社は前述の通り、従来のビジネスモデルからの脱却を強いられる時代でもある。地方における人口減少とそれに伴う経済縮小は歯止めがかからない。

一方で、強力な追い風もある。それは2024年に始まった新NISA(少額投資非課税制度)だ。この普及によって、資産運用に関心を持つ人は確実に増えている。金融庁の2024事務年度の資料では、2025年時点でNISA口座は2,600万を超え、18歳以上のおよそ4人に1人が開設する水準になった。2025年上半期のNISA買付額では株式購入も相当な割合を占め、しかも証券会社経由の成長投資枠における株式買付額の大部分は日本株であった。

「新NISAについては、私どももスタートの前年(2023年4月)からプロジェクトチームを立ち上げ、準備をしてきました。大変画期的な制度なので、積極的に活用していただきたいと考え、セミナーも逐次開催しています」(同)

貯蓄から積極的な資産形成を考える時代に

ここで、記事冒頭の江越社長の言葉に立ち返りたい。「お金に働いてもらう時代。個人が資産形成に向き合うことが大事」これはまさにその通りで、新NISAは大いにそのきっかけとなり得る存在だ。物価高、インフレ傾向にある中での制度改革は、流動的な資産運用を促すきっかけにもなりうる。

一方で「一般にはまだ理解が深まっていない面もあります。新NISAを証券会社の金融商品のようにお考えの方が意外に多いのです。新NISAは商品ではなく制度です。この画期的な制度を活用して、資産形成をしていただきたい、ということです。月5,000円から1万円の積立投資から将来設計に役立ててはいかがでしょうか」と江越社長は話す。

理解を深めるための啓蒙活動たるセミナーの開催、こうした取り回しの良さは地方証券会社の真骨頂とも言える。また新しい制度活用を紹介することにおいて、長年積み上げられた地域との信頼関係は、利用者の理解を深めるうえで力になるのではないか。

ポテンシャル高い!新潟のラーメン文化

江越社長は千葉県の出身。1993年に岡三証券に入社した。まさに新NISAスタートの準備期間となる2022年6月に岡三にいがた証券の代表取締役社長に就任し、長岡に居を移した。

「県外出身者から見ると、新潟の方はとても控えめな県民性に見えました。私から見ても、新潟県は自然、歴史・文化、食など魅力にあふれた土地なのですが、あまりそれを外に発信されない。もったいないと感じます」(同)

経営者として地域経済と向き合う一方、江越社長自身も新潟での暮らしを通じて、地域の新たな魅力を発見している。

江越社長が新潟に赴任して驚いたのは「新潟のラーメン文化」だ。「新潟県には美味しいものがたくさんありますから、こちらに赴任した当初は『ラーメンも美味しいところだな』程度に思っていたのですが、知れば知るほど興味が深まりました。県内各地に様々なラーメンがあって、どれもが美味しい、こんな土地は日本全国でも珍しいと思います」

今ではラーメンの食べ歩きが趣味の一つになったという。

岡三にいがた証券が年1回発行する情報冊子「ON」

同社が発行する情報冊子「ON」では、魅力的な新潟が美麗な画像と共に描かれている。2026年は「美しき新潟の庭園」が特集された。新潟を代表する上場企業経営者のインタビュー記事も読みごたえがある。

同社では、新潟県の将来を応援するため、これまで5つの地域応援ファンドを販売し、その収益の一部を、2016年から毎年県内のさまざまな取り組みに寄附している。大手グループの一員でもあるが、地元への思いが強く地域貢献も大きい企業として知られる。

資産運用の裾野が広がる一方、制度や商品の複雑さに戸惑う人も少なくない。地域の顧客に寄り添う対面力と、大手グループの調査・商品力を併せ持つ岡三にいがた証券。その役割は、個人の資産形成が重要性を増す時代に、むしろ大きくなっている。

岡三にいがた証券はSBI岡三アセットマネジメントとともに投資信託「インフラ関連グローバル株式ファンド」を販売。その収益の一部を県に寄付している。これまで4回にわたって寄付が行われたが、累計額は3,000万円を超えている

 

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