【ニュースの現場から・市村リポート】どうする?地域交通インフラ、利用者に寄り添った「見える化」の必要性

8月1日から社会実験運行がスタートした新潟市中央区駅南地域の住民バス「駅南むらさき号」発車式のテープカット風景

人口減少地域で公共交通が成り立たない理由

新潟市中央区の駅南地区住民有志が運営する住民バス「駅南むらさき号」の運行が、8月1日にスタートした。まだ社会実験運行の段ではあるが、路線バス空白地帯だったエリアの悲願だけに、住民の注目度は高い。今後、どれだけの利用実績を積み上げられるかで、本格運行への道が見えてくる。

このように、定住人口の多い新潟市中央区ですら、路線バス空白地帯ではコミュニティ交通が渇望される状態で、ましてやさらに郡部となれば交通インフラはライフラインである。地方人口の高齢化については言うまでもなく、その分、公共交通に依存する領域は加速的に増えていくのだが、一方で人口流出・減少がその維持を阻んでいる。地方において、これ以上新たな公共交通網が整備されることは絶望的と言ってよい。そうした意味で、地方の交通手段確保は「次の段階」に入ったのだ。

そして次の段階では「交通サービスをどう維持するか」というより「移動需要そのものをどう設計するか」という発想の転換が必要になってくる。多くの自治体では、「バス路線をどう維持するか」「赤字補填をどうするか」という議論になりがちだが、それは本質的には「供給側」の議論である。しかし、人口減少が進む地域では、供給だけを議論しても持続可能にはならないのが明白だ。

住民バス「駅南むらさき号」と市村浩二県議(JR上所駅停留所)

最大の問題は「利用者不足」ではなく、「需要が分散しすぎていること」にある。

例えば人口3,000人の山間地域でも「朝7時に通院する人」「9時に買い物へ行く人」「昼から役場へ行く人」「夕方に高校生を迎えに行く人」と、一人ひとりが全く違う時間・目的で移動する。対して鉄道や路線バスは「同じ時間に同じ方向へ大勢が動く」ことを前提に成立する仕組みになっている。この前提自体が崩れているのである。

つまり「バスが少ない」のではなく、「一台のバスに乗る人が同時に存在しない」というのが最大の問題なのだ。

周知が進んでいない地域交通の事例

さらなる問題点は「車が走っていないわけではない。車が走っているのに乗れない」という状況が起きている点である。公共交通のほかに、利用可能な交通手段としては、コミュニティバス、スクールバス
、デイサービス送迎車、病院送迎車、福祉有償運送、タクシーが挙げられる。これらが別々に走っているのに「乗れない」のである。理由は「制度上の壁」や「所管の違い」という、いかにも日本的なシステム障害である。これは、いかにももったいない効率ロスと言える。

新潟県議会でも現場主義の実務派として知られる市村浩二県議は、この問題に関連して2024年7月に開かれた県議会6月定例会建設公安委員会で質問している。

地域公共交通が課題になっている中(略)地域にある交通資源をフル活用することも必要となってくる。例えばスクールバスとかホテルのバス、これらを活用して持続可能な移動手段の確保、充実を図ることも考えていかなくてはならない(市村県議)

これは実にもっともな話で「車が走っていないわけではない」状況をどのように利活用するかが大事になる。例えば、生徒を降ろしてから空になって回送するスクールバスを利用して地域の買い物の足にするとか、ホテルの送迎時間以外に高齢者を役所や医療機関への移動手段にするなど、需要に合わせた活用の仕方は考えられる。こうしたサービスに、先の住民バスやコミュニティバスなどの定時運行がプラスされれば、公共交通の空白地帯はかなりカバーされるのではないか。

そこでクローズアップされるのは、サービスをわかりやすく「見える化」する情報プラットフォームの必要性である。

市村浩二県議

点在する地域交通のプラットフォーム

同委員会において、市村県議はこうも言及している。

県内の様々な取り組み事例を、市町村単位の説明会にとどまらせず、情報のプラットフォームを構築して県民に共有してはどうか(市村県議)

市村県議は情報のプラットフォーム構築に関しては、同年10月2日に開かれた建設公安委員会においても、検討の進捗を質している。

こうした「地域交通情報の見える化」は実に有用だ。市村県議のこの質問がきっかけとなり、令和7年3月には新潟県のホームページにおいて「地域公共交通の市町村における取組に関する情報発信」が設けられ、各市町村の取り組みがわかりやすく発信されるようになった。

県のホームページに実装された「地域公共交通の市町村における取組に関する情報発信」。各自治体の取り組みがわかりやすく見える化されている

このプラットフォームに掲載されている市町村ごとの取り組みを見ると、既に佐渡市では「地域住民のスクールバス混乗」や佐渡市、弥彦村で展開されている「レベル4実装に向けた自動運転バスの運行」など多くの事例が紹介されている。

中でも、自動運転バスについては、弥彦村で「ミコぴょん号」の取り組みが進められてきた。残念なことに、現在は2026年4月12日に発生した事故を受け運行を全面停止しており、事故原因などが検証されている。安全性の確保は大前提であり、今後の検証結果を踏まえ、地域交通の新たな可能性につなげていくことが求められる。

弥彦村で運行されてきた自動運転バス「みこぴょん号」、写真左は市村浩二県議(2024年4月撮影)

AIで地域交通を効率化

中から事例を一つ紹介する。加茂市が事業化している「乗合タクシー【かもんタクシー】へのAIオンデマンドシステム導入」だ。

同市では2020年に市民バスの見直し検討に着手し、2022年より「かもんバス」(旧市民バス)が主要軸を運行しつつ、市内全域を「かもんタクシー」(デマンド交通)がカバーすることで、公共交通空白地域ゼロを維持している。市域全体を見渡すと「かもんタクシー」のみが運行している地域も多い中、平均乗り合い人数が少なく非効率な運行が続いていた。そこで効率的な運行に向けて、AIデマンドシステムを導入した。

まず予約受付・乗合ルート生成・車両への配車をコールセンターが担う。「公共タクシー配車システム」 で、利用者から予約を受けると、タクシー内のタブレットに運行ルートと乗降時間が送信され、
AIによる最適な組合せとルートが生成される仕組みだ。これにより一度に多くの利用者の乗り合いが実現され、効率化につながり、タクシー会社の負担も軽減される。

この情報が「見える化」されることで、市民は「かもんタクシー」の存在を知るだけでなく、効率化され使い勝手が向上していることを知ることができる。

県内全市町村の公共交通ネットワーク。こういう発信のされ方は、とても分かりやすく有用だ

これらの多くは市報などで広報されているのだが、情報がまちまちに散在しているため、いかんせん周知に至っていなかったのが実情だ。市町村の取り組みが一覧できるプラットフォームがあることによって、県民の関心の高まりにもつながるだろう。

 

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地方公共交通の危機とは、交通の危機ではない。人口減少社会において『人・サービス・都市機能』の配置をどう最適化するかという、地域経営の危機でもある。公共交通は単なる「移動手段」ではなく、地域社会の持続可能性を映し出すインフラなのだ。

そう考えた時、その情報が周知されていない状況は大きなチャンスロスに他ならない。すなわち各市町村に散在する、地位交通の事例を一覧できるプラットフォームの存在は有用だと言える。

(ディレクション:編集部 伊藤 直樹)

 

 

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