【書評】人様に感謝して歩きながら、逞しく生きる高田瞽女


河村一美著、『昔、瞽女さんが雁木の町を歩いていたんだよ -桃子おばあちゃんの原稿-』

「瞽女」の漢字を、それが何かを知らずに読める人は、ほとんどいないであろう。もちろん、ある女性たちのことを意味する言葉で、「ごぜ」と読む。「瞽」は、「目が見えない」といった意味。同様の意味であれば今では「盲」の方が一般的であるが、とにかく今から100年ほど前の新潟県の一部地域では、「瞽女さん」と呼ばれる、目に障がいを持つ女性たちが活躍していたのである。

舞台は、上越高田。山国の寒村で活躍する「瞽女さん」は、三味線を手に各家を訪問し、「瞽女唄」を歌うことで、人々に娯楽を運んでいた。もちろん、自動車などはまだ普及していない時代。年間300日ほど、集落から集落を、徒歩で移動したのである。

彼女たちは芸を披露することでお米やお金をもらい、生計を立てていたという。十分かどうかは別の話だが、現代でこそバリアフリー化が進み、障がいを持つ人々も健常者と同様、活躍してほしいという機運・仕組みはある。しかし当時にあっては、目が見えない、見えづらいというのは、将来を考えた時、現代よりもはるかに大きいハンデを意味しただろう。そんな子を持った親がそれでも、「我が子を何とか一人前に」と強く願い、瞽女の親方に預けた。

子どもはやがて瞽女になると、大地のぬくもりを感じ、また冷たさも覚える足の裏で、親に感謝し、一緒に苦楽を共にする瞽女さんに感謝し、芸に喜んでくれる集落や家の人たちに感謝する。逞しく生きる瞽女さんだが、彼女たちを支えているのは「逞しい」イメージとは裏腹の、優しい心や感謝の気持ち。そういった心や気持ちは、幼いころに大事だと教えられ、また経験したことがあるはずのものだが、大人になると忘れてはいないか。

競争に勝ち抜くために、出世するために、少しでも仕事を取るために、厳しい交渉を成立させるために。いつも逞しくあらねばならないようだが、生き抜くのに忘れてはならないのは、優しい心、感謝の気持ち。物事が思い通りにならなかったり、現状が期待とは遠いように感じているならば、一読をお勧めしたい。忘れていた何かをきっと、気づかせてくれるだろう。

また本書は、なんとなくイメージだけがある、かつての雪国の暮らしや風習を見事にわかりやすく言語化しており、知識としての学びも多い。児童文学賞である小川未明文学賞の優秀賞に選ばれた通り、ジャンルとしては児童文学であるが、気づきや学びに富んでいることから、大人も楽しめる一冊だ。

『昔、瞽女さんが雁木の町を歩いていたんだよ -桃子おばあちゃんの原稿-』
発行者:河村一美
発売日:2020年2月15日
ページ数:110
価格:1,000円(税込)

【著者】
河村一美
昭和20年1月 満州牡丹江に生まれ、現在75歳。
母と引き揚げ、新潟県高田市(現上越市)にて居住。新潟県立北城高等学校卒業。
50歳の時、祖父のことを書いたドキュメントでBSNドキュメント賞にて優秀賞受賞。
新潟市民文学賞にて、小説・随筆などで最優秀賞他多数受賞。
52歳、「文芸たかだ・井東汎賞」受賞。
昨年74歳で「小川未明文学賞・優秀賞」を受賞。
現在、高田文化協会副会長・事務局長を兼任。
上越市民生・児童委員、上越市立図書館協議会委員等を務める。

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biz Link2020年4月10日号より転載



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