【地域のニーズに応じた看護のスペシャリストを養成】 長岡崇徳大学の森啓学長(新潟県長岡市)

長岡崇徳大学

中越地域唯一の看護大学として2019年4月に開学した長岡崇徳大学は、地域社会に貢献できる医療・福祉サービスの実践者の育成を目指している。昨年2023年3月、1期生38人の卒業生を輩出し、国家試験に全員合格させ、就職率100%という快挙を成し遂げている。

同学の森啓学長(73歳)に、ご自身のことや同学の魅力についてお話を聞いた。もともと森学長は関西のご出身。大阪市立大学の医学研究科などで教鞭を執っていた。新潟県長岡市とは、同学の田宮崇理事長が経営していた田宮病院の職員研修などで、認知症ケアの講師として招かれた頃からの縁となる。大学ができる以前からのことである。

そもそも田宮理事長は、地域密着型の医療と福祉の実現を目指し、医療のスペシャリストとして森啓学長を、福祉のスペシャリストとして小山剛前総合施設長(故人)を招聘した。
少しずつ環境整備を進め、長岡医療と福祉の里を構想した。超高齢社会を迎えるにあたり、“医療から介護、福祉までの連携日本一”を目指していたが、変化する時代のニーズに応えるために、専門学校なども運営し、人材育成にも力を注いできた。

以前では、看護師などの養成は、専門学校が中心となって行われてきた。3年間、医療や看護についてみっちり学び、国家試験の受験を得て世に送り出されるというケースが一般的だった。ところが、近年では、大学内で専門の学科を設置し、時間をかけて専門教育を学ばせるケースも増えてきている。

四年制大学は、専門の勉強に加え、一般教養などという医療や看護とは異なる専門領域を学ぶカリキュラムになっている。入学時点で既に医療分野に従事しようとしている人材に、専門学校よりも時間をかけて、これらの学問を学ばせる意義はあるのだろうか。このような問いかけにたいして、森学長は、「僕は専門学校が悪いとは思わない」としたうえで、「大学は大学で良いところがある」とする。

そのひとつとして、専門学校より1年多い修業年数や一般教養の存在を指摘する。森学長によれば、これらの余分な学びで得た教養は、長い人生を送る上で、後で必ず役に立つようになるという。

医者は、患者が病気になれば、技術力をもって対応してくれる。一方、治療に必要なものは技術面のサポートだけではないはずだ。どのような患者も人間である限り、不安になったり、鬱気味になったり、塞ぎこんでしまうこともあるだろう。

そういった情動面で一人ひとりの患者に寄り添い、励ます重要な役割を担うのが看護師という仕事である。そういった意味で一人ひとりの看護師に求められるのが人間力となる。その人間力を深く身につけることができるのが大学教育である。

文学など、一見専門に関係ないような学科でも、それらの素養を身に付けることで、人間的にも深みを与える。また、卒業まで、少し時間の余裕ができることによって、学生時代に、友人たちと遊んだり語り合ったりすることができる。こういった経験や思い出が、人間力に深みを与え、社会に出たときに、患者に信頼される共感力を持った看護師になることができると、森学長は考えている。

また、学舎を整備するうえで、優秀な教育スタッフを全国各地から集めることができるようになるのも、大学となるメリットの一つだという。森学長が指摘するように、同学では様々な地域から教員を公募している。全国各地から優秀な人材を集めることができるのも、大学としてのひとつの強みとなっている。

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また、同大学の大学名にもっている「崇徳」は鎌倉時代に法然の説いた言葉に由来し、徳をあがめ仁を尊び、礼節を大切にすることを説いたものである。同学は、崇徳の理念に基づき、豊かな人間性の育成と、多様な健康と福祉のニーズに柔軟に応えうる人材を育成することを目的としている。森学長が、新設大学の初代学長として、特に力を注いだ仕事のひとつが、この設立理念を考えることだったという。

同学が立地している場所は、崇徳厚生事業団の敷地内ということもあり、病院、福祉施設といった関連施設に恵まれている。森学長は、こうした関連施設を活かした形で、新しい看護師を活躍・活かせる場としていきたいと考える。

森学長によれば、将来、必ず医師の数は頭打ちとなり、国民の数は減っていく。その一方で、医療の問題が細分化され、より高度な、複雑なニーズが求められるようになっていくという。「国民の新しい要求にこたえられる教育・研究をしていきたい」と力強く語った。

かつて新潟県中越地区は、石黒忠悳や長谷川泰、池田謙斎などの優秀な医療従事者を輩出した由緒ある地域である。そのような土地から、人間力豊かな、看護のスペシャリストが数多く誕生することを期待したい。

「国民の新しい要求にこたえられる教育・研究をしていきたい」と森啓学長

 

(記事・撮影 湯本泰隆)

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