【新学部もお目見え】新潟薬科大学オープンキャンパス 「さらなる多様多彩」を纏め上げる建学精神「実学一体」

  • 5か月前

2027年春に「新潟科学大学」として生まれ変わる新潟薬科大学が8月10日にオープンキャンパスを催行した。「大学が変わる」ことで注目される時期でもあり、見学来場者は例年の倍に及んだ。

現在、1977年の開学以来の歴史を持つ「薬学部・薬学科」に加え、「看護学部・看護学科」「医療技術学部・臨床検査学科」「応用生命科学部・応用生命科学科」「応用生命科学部・生命産業ビジネス学科」という4学部5学科からなる同大学は、新潟で唯一の文系・理系を有する私立総合大学である。2027年にはここに「食農情報学部・グリーンデジタル学科」「医療技術学部・救急救命学科」(いずれも仮称)が新たに設置される予定だ。

総合ガイダンスにおいて「実学一体」の精神を紹介する杉原多公通学長

近年開学する地方の私立大学が、狭い分野をより先鋭化させる傾向にあるのは、その多くがルーツを「専門学校」に持つからだと考えられる。一方で開学当初から薬学部の単科大学でスタートした同大が、より幅広い素養の学生を求めてウイングを広げていくのは自然な流れかもしれない。少子高齢化、地方の人口流出が進む現代の中で、地方私立大学の在り方はますます注目される。多くの地方私大の「ニッチ化」は、何とか存在感を示そうという現れにも映る。

2027年4月に新設される学部学科も展示が行われた

同大はその逆を行く路線だが、実にロジカルな地方私大改革を続けているように見受けられる。そこには建学の精神「実学一体」(「学問探求」と「実践・実用」は一体であることを認識し、常に両立・調和を図る)が、確たる背骨として一本通っているからではないか。

茂木弘邦理事長室長は「47都道府県にはそれぞれに国立の総合大学がおかれていますが、全国から学生が入学し、卒業後も全国の様々な場所で活躍されています。一方で地方の私大は地元の学生も多く、卒業後も地方を支える人材を輩出しているケースが多い。本大学も、それを見据えて自治体との連携事業や地元企業との共同研究も積極的に取り組んできました。共同研究は今まで基礎研究分野が多かったが、文系学科ができたことで多くの人の目に触れるような成果も出ています。文系の柱を増やし、幅を広げることで、総合大学としての魅力はより大きくなると考えています」と話す。

大学が変わる。その将来展望をより鮮明に見せるため、新潟薬科大学の本年のオープンキャンパスの場を特に大事したのだという。

それでは学部ごとに見ていきたい。

応用生命科学部・応用生命科学科

近年における同大学のカラー「文系×理系」を最も色濃く打ち出している学部が応用生命学部。その理系パートがこの応用生命科学科である。応用生命科学を学び、生命科学の分野で地域に貢献する人材の育成ということだが、ここで学ぶ世界は、例えばバイオテクノロジーや環境科学、食品科学など実に幅広い。いかにも新潟らしい、発酵醸造の研究もおこなわれ、長期インターンシップなどを通じて多くの地場産業とも連携実績を持つ。食品産業は突き詰めれば生命科学。この分野が、将来的な新潟フードテックタウン構想においても中核を担う。

根っからの理系にはたまらない研究室ツアーも催行

この日は、佐藤里佳子特任助教の模擬講義が行われた。テーマは「油脂が食品に与える美味しさと発酵技術」で、講義は微生物(酵母)由来の油脂にも及んだ。最後は実際に酵母油脂を研究している研究室ツアーも行われ、見学者たちの興味を集めていた。

佐藤特任助教は「座学だけでなく実験や共同研究が多い。実践を通して社会や企業の課題解決に役立てるような人材を」と話していた。

応用生命科学部・生命産業ビジネス学科

こちらが現行の薬科大学における文系学科だ。食品、農業、環境、健康など、産業の中には生命科学に関わる分野が実に多く、特に食品作業のビジネスシーンで活躍する人材育成に定評がある。食品や健康にまつわる基礎学問に加えて、流通やマーケティングなどビジネス直結の内容が濃い。こちらも座学だけでなくフィールドワークを多く取り入れ、企業や地域との連携に積極的だ。

マーケティングの学びは座学だけでなくフィールドワークを重視する

この日は内田誠吾准教授が、新潟伊勢丹のブランディング戦略について模擬講義が行われた。こちらもまさに、実学一体が色濃く反映された学部カラーだ。

医療技術学部・臨床検査学科

この学部も看護学部同様、2023年4月の創設。臨床検査技師として活躍する人材を養成する学部。現代のチーム医療において臨床検査が治療方針決定の羅針盤になることが常識となる中で、臨床経験豊富なプロフェッショナル教員のもと、基礎知識や臨床検査技術などを学ぶ。基礎研究が臨床に直結する、まさに実学一体を体現する学部といえる。

精巧な人体モデルを擁して採血の実習が行われた

この日は、精巧に人間の腕を模した採血訓練用装置を駆使して、見学に来た高校生が「模擬採血」を行う実習を催行。実習を体験した「理科の実験が好き」という高校1年生の男子は「実習は少し緊張した」と笑い「学内もきれいで洗練されている。ここで学びたくなった」と加えた。

看護学部看護学科

2023年に誕生した。実際の社会では男性の看護師の割合が増えており、同学部でも男子学生が10%程度在籍するという。看護師は、今まさに地域医療が渇望するポジション、人対人の仕事。様々な患者の健康課題や特性に応じた判断力と実践力を磨き、チーム医療体制の中で役割を果たすための力を持った「成長する看護職」を育てている。2~4年次は国立病院機構西新潟病院内にあるキャンパスで、看護師としての高度な実践力を学んでいる。

「生命の音を聞いてみよう」という体験展示。看護師のテクニカルな面だけを追うのではないことが理解できる

この日は「からだをめぐる、いのちのリズムを感じてみよう」と題した展示と実習体験で、脈拍の計測などを行った。見学者は将来の看護師を目指す高校生がほとんどで、あこがれの職場に実際に立つ自分を投影しながら実習に没頭している姿が見受けられた。

本学部に学ぶ2学年のスタッフは「看護師として患者さんにどのような視点で接するのが良いのかを学んできた」と話す。

薬学部薬学科

先述の通り、1977年の開学以来の学部である。薬剤師になるために必要な専門知識や技術の習得と臨床教育の実践。医療人としての倫理観やコミュニケーション力を養うためのカリキュラムが行われている。これからの時代に必要な地域社会に信頼される薬学のプロフェッショナルを送り出している。同大では唯一6年制だが、充実の教育サポートで知られる。

薬剤師を目指すには最適な学びの環境がある

この日は、見学者である高校生が実際に乳鉢で錠剤を摺りつぶして粉薬にする技術や、軟膏を練り合わせる技術などを体験できる実習を催した。

「小さいころから薬剤師になりたいと思っていた」という見学者のひとりは目を輝かせながら「貴重な体験ができてうれしかった。学校の施設もとてもキレイで好印象」と語っていた。

自らも同大学の卒業生という竹野孝慶助教は「こうした体験を通して、薬剤師を目指す若い人材が増えて欲しい」「薬科大学の卒業生は、県内で薬剤師になっているケースが多いように見受けられる」と話した。

この日は、佐藤里佳子特任助教の模擬講義が行われた。テーマは「油脂が食品に与える美味しさと発酵技術」で、講義は微生物(酵母)由来の油脂にも及んだ。最後は実際に酵母油脂を研究している研究室ツアーも行われ、見学者たちの興味を集めていた。

佐藤特任助教は「座学だけでなく実験や共同研究が多い。実践を通して社会や企業の課題解決に役立てるような人材を」と話していた。

食農情報学部「グリーン・デジタル学科」(2027年新設)

この日は、既存の学部学科に加えて2027年に新設される2学部学科も展示を行った。このグリーン・デジタル学科も実に、文系と理系を横断的に交差する学部カラーであると言えよう。「グリーン・デジタル」という分野は近年まさに注目されている。その語感から、食農の分野に特化したものととらえられがちだが、グリーンには「環境」の意も含まれるので、学問の幅がかなり広い。そこには食農の分野に活かされるIOTやビッグデータ収集・分析なども含まれる。

XRやeスポーツの展示は見学者の興味を引いた

ドローン操縦の実習も行われた

学部横断的な学びや企業連携などの機会も多く、実践を通して社会課題の解決に取り組めるような人材を養成する。この分野で知見を広げたい人にはぴったりだ。

この日は、eスポーツなどを通してデータ分析を体験する展示が盛りだくさん。ドローンの展示や操作体験なども行われ、数多くの見学者が足を運んでいた。

救急救命学科

こちらも2027年に新設される新学科。現代チーム医療を担う一員の救急救命士を養成する専門コース。救急救命士は近年の法改正でその職域が広がり、より専門的な知識や技術が必要とされるようになった。具体的には病院への搬送待機中や、病院内での医療措置が行えるようになり、今や活動範囲は救急車の中だけではなくなった。ますます的確な判断力と適切な処置技術が求められる職業になったのだが、地域医療においてその人材を確保するのは容易なことではない。本学部ではその、社会が渇望する人材を送り出していく。

この日の展示では最新の高規格救急車への乗車体験と、救急医療のリアルな現状がレクチャーされた。

救命救急学科の設置検討委員で、同学科の教授就任予定でもある小山諭新潟大学教授

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今回のオープンキャンパスを通して感じたのは、この大学がいかに時代を先読みし、その都度の社会課題を通して必要とされる人材教育に柔軟に向き合っているかということ。それは学部の新設だけでなく、募集定員の枠の確保に対しても表れるという。常に、どの世でも社会に求められる人材の教育が、この現場では展開されている。「需要(ニーズ)」と言えば言葉は軽いが、社会に求められるというのは、それほど簡単なことではない。学術研究を通して、社会の需要をとらえていくことは、学生たちにとっても意義深い時間となり、将来へのモチベーションにもつながるのではないか。

「実学一体」。その意味が的確に伝わるオープンキャンパスだったと言える。

 

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