【特集】リプロネクスト、シードラウンドで1.2億円調達 「体験」と「対話」で意思決定支援の高度化へ

株式会社リプロネクスト代表取締役・藤田献児氏

株式会社リプロネクスト(本社:新潟県新潟市、代表取締役:藤田 献児、以下 リプロネクスト) はこのほど、株式会社ジェネシア・ベンチャーズ(代表取締役:田島 聡一、本社:東京都渋谷区)を引受先とする第三者割当増資により、シードラウンドで1.2億円を調達した。創業10期目で初の外部資本受け入れとなる。

調達した資金は、体験型デジタルスペース「Roomiq(ルーミック)」と対話型AIコンシェルジュ「NOIM(ノイム)」の機能高度化や連携強化に投じ、進学、就職、転職、住宅購入、移住など、人生の転機における意思決定支援の基盤づくりを加速させる。

 

体験と対話を組み合わせ、高関与領域の意思決定を支える

リプロネクストは2017年創業。デジタル空間を活用した体験設計を強みに事業を展開し、現在は「人生の転機を、ワクワクする瞬間に。」 をミッションに掲げる。

同社が対象とするのは、進学や住宅購入、就職、移住といった人生の大きな選択の場面である。こうした意思決定には本来、十分な情報収集と比較検討が欠かせない。しかし、現実には現地へ足を運ばなければ分からないことが多い一方で、時間的制約から訪問が難しい場合も多い。また、相談や問い合わせの段階で営業を受けることへの心理的抵抗が、情報収集の妨げになるケースもある。

藤田氏はこうした状況を「距離、時間、心理の制約が、個人の意思決定を妨げている」と捉える。重要な選択ほど丁寧な情報収集と比較検討が求められるにもかかわらず、現実には必要な情報に必要な時にアクセスしにくく、納得感を持って判断しづらい構造があるという認識だ。

この課題に対し、同社はデジタル空間による疑似体験、AIによる対話支援などを組み合わせ、利用者が自らのペースで理解を深めながら意思決定できる環境の整備を進めている。

その中核となるのが、同社の二つのプロダクトだ。その一つ「Roomiq」は、施設やサービスを3D空間で可視化し、オンライン上で疑似体験を可能にするサービス。NTTグループから2025年に事業譲受した基盤を活用し展開しており、累計26万超の空間データを有する。自治体の移住促進、大学のデジタルオープンキャンパス、住宅展示場のデジタル化などで導入が進む。

施設や店舗・空間といったリアルアセットを3D化し、オンラインで体験できる体験型デジタルスペース「Roomiq」

もう一つの「NOIM」は、利用者の疑問や不安を対話形式で整理し、断片的な情報を意思決定に必要な形へと構造化する対話型AIコンシェルジュ。既に幅広い分野で活用が始まっており、利用者が自らの関心や条件に即して質問しながら理解を深められることが特徴だ。

さらに、利用者との対話ログが蓄積されることで、どのような疑問が生じやすいか、どの情報が判断の決め手になりやすいかといった知見が積み上がり、意思決定支援の精度が継続的に高まっていく設計となっている。

Web上で自然な対話を行い、登録されたFAQや資料をもとに問い合わせの一次対応を担うAIエージェント「NOIM」

今回の資金調達で同社が目指すのは、これら二つのプロダクトを単独で展開することではない。「Roomiq」による「体験」と「NOIM」による「対話」を接続し、利用者が自分のタイミングで比較し、理解し、納得して判断できる環境を整備することにある。

藤田氏は「例えば住宅や進学のような高関与領域では、利用者が夜間に検討を深める場面が多い一方、相談窓口が閉まっていることも多い」と指摘する。こういった時間的な空白を埋め、夜間であっても、疑似体験と相談を一体的に行える仕組みを構築していきたい考えだ。

株式会社ジェネシア・ベンチャーズ 代表取締役 田島聡一氏

この構想に着目したのが、今回の引受先となったジェネシア・ベンチャーズである。社長の田島聡一氏は、投資判断の決め手として「NOIM」が情報提供にとどまらず、利用者の思考を整理し、意思決定に向けた行動変容を促し得る点を挙げた。従来のデジタル施策が「見せる」段階までの進化に留まりがちだったのに対し、リプロネクストは、デジタル空間による疑似体験とAIによる対話を組み合わせることで、「検討から決断まで」を一気通貫で支える可能性を持つと評価する。

VR空間を構築する企業やAIチャットボットを手掛ける企業はそれぞれ存在するが、両者を統合し、リアルな意思決定の現場にまで踏み込もうとしている点に独自性があるという見方だ。

 

自己資本経営10年の蓄積を踏まえ、新たな成長フェーズへ

今回の調達が注目される理由の一つは、同社が創業以来、約10年にわたり自己資本を軸に事業を積み上げてきたことにある。

一般的なスタートアップとは異なり、リプロネクストは既に一定の顧客基盤と事業の継続実績を持つ。ジェネシア・ベンチャーズの田島氏も、26万件超の空間データの蓄積や、自治体・企業との信頼関係、現場課題を踏まえたプロダクト開発力を高く評価している。

藤田氏は、自己資本で事業を拡大すること、外部資本を受け入れて成長と展開を目指すこと、その過程に大きな違いがあると話す

一方で、藤田氏は今回の資金調達の過程について、「従来とは異なるゲームに入った感覚だった」と振り返る。自己資本で事業を運営する局面では、利益や売上を着実に積み上げることが経営の軸になる。その反面、外部資本を受け入れて成長を目指す局面では、将来どのような市場を形成し得るのか、どこまで大きな社会的インパクトを描けるのかが強く問われる。藤田氏は、資金調達を考え始めてから実現まで1年から1年半ほどを要した背景として、この発想の転換に最も苦心したと明かす。

さらに、同社には長年の事業運営で培った地力がある。新潟在住の若いメンバーと、首都圏の経験豊富なエンジニア人材とを組み合わせながら、組織としての成長を続けてきた。スタッフ数を増やすのではなく、経験のある人材と若手が共に開発を進めることで、組織全体の解像度を高めていく、そうした堅実な積み上げが、今回の調達にもつながっている。

新潟市西区にオフィスを構えるリプロネクスト

藤田氏は今回の挑戦が自社の成長にとどまらず、地方企業の可能性を示す一例にもなり得るとも考える。「新潟のような地域では、ゼロからの起業だけでなく、地元で事業を継続してきた企業が、知識や外部との接点を得ることで、次の成長局面へ移行できる余地があるのではないか」と語る。

地方は不利という見方もあるが、ジェネシア・ベンチャーズの田島氏はむしろ、移住や不動産、地方創生といった「人生の選択」の現場に近いことが強みになり得ると指摘。現場に近い場所で課題を捉え、解を磨き、それを全国に展開する。その意味で、新潟という拠点は最適であるといえる。

「社会にインパクトを与えるところまでやり切りたい」と語る藤田氏

同社が見据えるのは、デジタル化の推進ではない。体験と対話を通じて理解と納得の形成を支える「意思決定の基盤」を実社会の中で機能させていくことにある。検索によって情報を得る段階から、比較し、理解し、納得して選択する段階へ。今回の1.2億円調達は、その変化を支える基盤整備を一段進めるものとして位置付けられる。リプロネクストは、地方から着実な実装力をもって新たな市場形成に挑む。

 

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