新潟県燕市が現代の魔法瓶「発祥の地」? 世界的メーカー・THERMOS(サーモス)、新潟事業所

サーモス新潟事業所に鎮座する魔法瓶のオブジェ、下には「発祥の地」の文字が

国道116号線沿い、新潟県燕市の工業団地で一際目を引くのが、世界的魔法瓶メーカー「THERMOS」のロゴを掲げた建物だ。その敷地内には、「発祥の地」と刻まれた魔法瓶のオブジェが設置されている。1978年、現在の主流である高真空断熱ステンレス製魔法瓶は、この地で開発された。

サーモス株式会社(東京都港区)の新潟事業所は、本社を含め全国に5カ所ある拠点の一つ。製造の主軸は海外に移った現在も、品質管理や商品開発など、同社のものづくりを支えている。

 

100年以上前にドイツ生まれ、燕で進化した「魔法瓶」

新潟事業所内に展示されている古い魔法瓶。ガラス製の真空容器を金属の保護容器に入れた構造となっている。なお、「THERMOS」はギリシャ語で「熱」などを意味する単語で、「サーモス」は英語読み

魔法瓶ブランド「THERMOS」が誕生したのは20世紀初め。1903年、ドイツのガラス職人ラインホルト・ブルガーがガラス製の真空容器「デュワー瓶」を改良して世界初の魔法瓶を生み出し、翌年にTHERMOS社を設立したことに始まる。

その後欧米で事業が広がる中、日本では現・日本酸素ホールディングス株式会社がガス用大型タンクの技術を応用して高真空断熱ステンレス製魔法瓶を開発。ガラス瓶を金属製の保護容器に入れた構造の従来品に比べ耐久性が高く、携帯用途の普及を大きく後押しした。そして同社は1989年、世界のサーモス事業を統合し、現在のグローバルブランドを築いた。

サーモス新潟事業所所長の後藤亨氏

世界初の高真空ステンレス製魔法瓶「アクト・ステンレスポット」。新潟事業所の前に設置されたオブジェはこれを模したデザインとなっている

ステンレス製魔法瓶の開発にあたり重要な役割を果たしたのが、新潟・燕の金属加工技術だ。「新しい魔法瓶を開発する際、燕のステンレス加工や溶接、研磨の技術が一番適していた」。そう解説するのは、サーモスの常務取締役で新潟事業所所長、品質統括部ゼネラルマネジャーの後藤亨氏だ。

かつては新潟で生産も行っていたが、やがて海外へと生産拠点は移転し、現在は中国・マレーシア・フィリピンの自社工場で年間約4,000万本を生産している。新潟事業所の役割は現在、主にロジスティクスや品質管理、商品開発へと変化した。海外工場から日本に届いた製品は、出荷される前に新潟で抜き取り検査が行われる。世界規模のブランドを支える品質管理を、この新潟の拠点が担っている。

一方で、飲食店や学校給食向けの保温容器、水差しなど、業務用製品の一部は、現在も燕市内の協力工場と連携して製造が続けられている。

 

魔法瓶の進化と、周辺分野への挑戦

卓上用の古いものから現代の製品まで並ぶ新潟事業所内のギャラリー

今から100年以上前に開発され、約半世紀前にステンレス製へと進化を遂げた魔法瓶だが、現在も構造の改良やデザインの試行錯誤は続いている。かつて、内側のステンレスの板厚は0.4ミリ程度だったが、現在は0.1ミリ前後まで薄肉化。あいだの真空層も同時に薄く改良されているが、内外の容器が接触しないよう精密に位置を保つ維持する必要があり、高度な加工技術が求められる。

また、かつて魔法瓶は普及に伴い「食卓で一つ」から「個人で一つ」持つ形へ変わったが、近年は山岳向けや手袋をしたまま操作できる仕様、炭酸飲料対応ボトルなど、さらにシチュエーションやターゲットを絞り込んだ商品の開発も進められている。

製品を解説する後藤氏

魔法瓶の断面。左側の古い製品に比べ、右側の製品は材質の薄さも真空層も改良が進んでいる

一方で、国内の魔法瓶市場はすでに成熟段階にあり、同社は調理や断熱・保温のブランドを活かした周辺領域へも事業を広げているという。

2019年に「THERMOS」ブランドからフライパンを発売し調理器具へ進出。そして直近では、保温性を備えた衣料品や、遮熱機能を持つ日傘・帽子など、アパレル分野への展開も進める。こうした中で後藤氏は「燕の技術を活かせる商品があれば、ぜひ地元企業とタッグを組んでやっていきたい」とも話す。

「人と社会に快適で、環境にも優しいライフスタイルの提案」──世界最大の魔法瓶メーカーであるとともに、魔法瓶にとどまらない理念を掲げ商品を展開するサーモス。世界に届けられる「快適」は、今も変わらず新潟・燕の地で磨かれている。

サーモス新潟事業所

 

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サーモス webサイト

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