【働き方改革のトップランナー】サカタ製作所(長岡市)・坂田匠社長に聞いた「最強ホワイト企業のつくりかた」

株式会社サカタ製作所(長岡市)坂田匠代表取締役社長

「働き方改革」の先を走る経営哲学

2026年3月27日、新潟県庁で「新潟県多様で柔軟な働き方・女性活躍実践企業認定制度(Ni-ful)」の知事表彰が行われた。Ni-fulの創設年度に行われた、初の知事表彰である。

表彰企業の中に、株式会社サカタ製作所の名があった。長岡市に本社を置く同社は、金属屋根部品の分野で国内トップシェアを築いてきたものづくり企業である。一方で、働き方改革やダイバーシティ経営、DXにも早くから取り組み、全国的にも高い評価を受けてきた。

同社の特徴は、単に「働きやすい会社」であることにとどまらない。休みを増やし、業務の属人化をなくし、社員の多様な働き方を認めることが、結果として生産性と業績を高める。その考え方を、同社は世の中で「働き方改革」という言葉が広がる以前から実践してきた。

長岡市の株式会社サカタ製作所本社

サカタ製作所は1951年、新潟県三条市で創業した。当初は鉋(かんな)の製造からスタートし、その後、建築金具の製造へと軸足を移した。

大きな転機となったのが、現社長の坂田匠氏の入社である。当時、同社は住宅用と非住宅用の双方で折板屋根金具を手がけていた。坂田氏はそこから、経営資源を非住宅用、すなわち公共産業用に集中させた。これが功を奏し、同社は同分野で国内トップシェアを獲得。一時期、年30%近い成長を遂げたという。

もう一つの成長要因が、2008年以降の太陽光パネル取り付け金具への展開である。再生可能エネルギーの固定価格買取制度、いわゆるFITを追い風に、同社は太陽光パネル取り付け金具に注力した。事業スタート当初は伸び悩んだ時期もあったというが、粘り強く展開した結果、2012年に黒字転換した。その後は恒常的に利益を生む柱となっていった。

2014年には、新潟県阿賀野市に約12億円を投じて新工場を開設し、太陽光パネル取り付け金具の生産拠点とした。

事業面に加え、働き方改革・人的資本経営の面でも同社への注目度は高い。サカタ製作所は1992年、新潟県内の企業として早い段階で週休2日制を導入した。今から34年前の話である。

当時は「週休2日制」という言葉自体がまだ一般的とはいえず、一般企業でも導入は珍しかった。まして製造業では、正社員が週に2日休むことに強い抵抗があった時代である。

その後も同社は、残業ゼロの実現や、男性の育児休業取得率100%の達成など、先進的な取り組みを続けてきた。2018年には厚生労働省の「イクメン企業アワード2018」両立支援部門でグランプリを受賞した。新潟県内企業としては初の受賞である。2019年には「ホワイト企業アワード」最優秀賞、2022年度・2024年度・2025年度には「ホワイト企業認定」PLATINUM認定を受けている。

2021年には、一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)に入会した。新潟県内企業としては2社目である。

工場の自動化に早くから着手し、業務の属人化を解消した

休みを増やせば業績が上がる

某日、長岡市の旧与板町エリアにある本社に坂田匠社長を訪ねた。坂田社長は普段、新潟市に拠点を構え、本社とはリモートで対応している。社長だけではない。社員もリモート勤務が多いという。

こうした新しい時代の働き方を、同社はコロナ禍の前から取り入れてきた。

―― 働き方改革の前提となる業務の属人化脱却には、坂田さんが社長になる前から取り組まれています。そうした企業土壌が、早い段階からのDXにもつながったのでしょうか。

坂田社長 大学で機械工学を学び、卒業後にロボットエンジニアリングを手がけるメーカーに勤めた期間がありました。そのため、20代半ばでサカタ製作所に入社してすぐに着手しました。

学生時代から、「労働事故は機械と人間の接触から起こる。これを減らせば労働事故は減る」という発想がありました。ロボットの会社に就職したのも、その流れでした。

「属人化解消が効率アップと働き方改革への近道」と坂田社長

―― 事業承継で社長になる以前に、会社の週休2日制導入を進めましたね。当時、国内企業には導入例がまだ少なく、製造業では特に遅れていました。納期やノルマへの意識も強く、休みを増やすことに抵抗があったのではないでしょうか。社内でも反発の声は多かったのでは。

坂田社長 当初は私以外、全員反対でした(笑)。特に父、つまり先代社長をはじめ、会社の上層部は反対でした。

「これは社員を味方につけるしかないな」と考え、「給与を15%アップしたらどうか」と提案してみました。そうすると、単位時間当たりの給与が上がります。そこに労働時間減少による売り上げ減を加えると、大幅な赤字どころか、存亡の危機に陥る試算になるのです。

ところが、ふたを開けてみると予想以上に業績が上がりました。売り上げは12%アップ、利益は20%アップ。在庫は大幅に減少し、単位時間当たりの生産効率も上がりました。キャッシュフローもかなり好転しました。

これが当時の労働省に認知され、「ゆとり創造優秀賞」に選ばれました。弊社が初の受賞企業です。

―― 反対があっても推し進めた、最大の理由は何ですか。

坂田社長 休みを増やすと生産性が大幅に上がり、売り上げが伸び、利益も増える。在庫も大幅に減るだろうという想定がありました。

これは、どこかの経営理論や経済学を下敷きにしたものではありません。全部、自分で考えたものです。

 

男子育休のパイオニア

―― 日本で最初期の「育児休業取得率100%企業」となり、厚生労働省の「イクメン企業アワード2018」のグランプリも受賞しています。男性が普通に育休を取るようになったのは最近の話です。まして製造業では、かなり遅れていた分野だと思います。

坂田社長 私も最初、男性も育休を取れるということを知らなかったくらいです。総務から「製造の社員が育休を取りたいけれど、言い出せずにいるらしい」という相談を持ちかけられて、初めて知ったくらいでした。

本人に聞くと、「長期で職場を空けたら迷惑がかかる」と言うのです。私はわざと大きな声で、周りの社員に「おーい、彼が育休を取ったらみんなは困るのか」と問いかけました。すると、他の社員は「困らない」と言うのです。

その時点では、すでに製造ラインの自動化も進み、誰かが休めば誰かがカバーする体制はできていました。その2年後にも、育休取得に迷っていた開発部門の社員がいたので、同じようにしました。

その後は、子どもが生まれた社員がいると、その人のところに行って同じようにやるのです。社員の間では「育休を取らないと、また社長が飛んできてうるさい」というムードになり(笑)、皆が取るようになりました。休暇を取りやすいムードづくりが大切なのだと思います。

―― 育休推進の効用はありましたか

坂田社長 誰かが休めば、その人がやっていた仕事を、ほかの誰かが代わりにやらなければなりません。そうすると、業務の属人化解消が進みます。

また、他人の仕事を引き受けることによって、「なんだ、こんな非効率なことをやっていたのか」という気づきがあります。それが、その後の改善につながるのです。

弊社ではすでに業務の属人化解消が進んでいたので、育休取得についても問題なく進みました。

ダイバーシティーと女性への「えこひいき」

―― 坂田社長はNi-fulの受賞についても、女性活躍に関しては「ダイバーシティ経営の一環」と捉えていらっしゃいます。ダイバーシティに対する考え方をお聞かせください。

坂田社長 ダイバーシティというと、性別や国籍、性的少数者、障がいの有無などに目が行きがちです。ただ、年齢の多様性もありますよね。

私は社員に対し、「一生こき使ってやる」と言っているのです(笑)。実際、70歳を超えても働いている人が何人かいます。

年齢を重ねて身体や頭に衰えが出ても、それをカバーする技術が生まれてきます。足の不自由な人がいたから車いすが生まれたように、今であればAIやICTなど、自分を補助してくれるものが生まれているわけです。だから、働こうとする気持ちがあるうちは働けばよい、と考えています。

結局、会社を去ってしまうと、社会とのつながりが断たれてしまうのが良くない。社会が狭くなりますよね。会社とつながっていれば、世界とつながっているのと同じです。そうすると、ボケようがないでしょう(笑)。

「新潟県多様で柔軟な働き方・女性活躍実践企業認定制度(Ni-ful)」に選出される

―― 女性の活躍の実践で評価されましたが、女性の積極登用にも取り組まれてきたのでしょうか。

坂田社長 女性役員の登用は、当初はなかなか難しかったのです。こちらが役員になってほしいと思っても、女性の方が嫌がるのです。

小室淑恵さん(株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長)に相談したところ、「それは、会社が女性に対して期待していないから、女性が役員になりたがらないのだ」と教えられ、ハッとしました。

「期待されていないから、応えられない」のだと気づいたのです。

―― 興味深い話です。それから社長はどうされたのですか。

坂田社長 それから全社員を集めて謝りました。そして、「これから数年間、私は女性社員に対して露骨にえこひいきをします。同じ能力だったら、女性の方を使います」と宣言したのです。

これは要するに、「今まで女性に期待せずに冷遇してきた罪滅ぼし」なのです。

※           ※

坂田社長の経営理論の多くは、どこかにあった前例をなぞったものではない。自ら考え、仮説を立て、現場で実行してきたものである。

休みを増やせば、生産性が上がる。誰かが休めば、業務の属人化が崩れる。女性に期待してこなかったのなら、あえて「えこひいき」する。いずれも一見すると逆転の発想に見えるが、その根底には極めてロジカルな思考がある。

柔軟でありながら、決めたら断行する胆力もある。サカタ製作所の働き方改革は、制度を整えただけのものではない。経営そのもののあり方を変える取り組みだったといえる。

そんな坂田社長は、「弊社の社員のレベルは県内一だと思っている」と語る。

こういう会社で働いてみたいと思わないか。

実際、サカタ製作所には、毎年多くの新卒希望者から応募や問い合わせが寄せられるという。募集をかけていない時期であっても、だ。

(記事:編集部 伊藤直樹)

こんな記事も