ゴルフクラブから医療・航空機分野、さらにその先へ 遠藤製作所・渡部大史社長インタビュー

株式会社遠藤製作所・代表取締役社長の渡部大史氏

ゴルフクラブブランド「EPON(エポン)」で知られる株式会社遠藤製作所(新潟県燕市)が今、医療や航空機分野で存在感を高めている。長年培ってきた鍛造技術を応用し、人工関節や航空機エンジン部品などの生産を拡大。5月20日には医療・航空機第三工場を竣工し、さらなる設備投資も視野に入れる。

同社の現在地とこれからについて、代表取締役社長の渡部大史氏に話を聞いた。

 

ゴルフ人気に追い風

渡部氏は新潟県燕市の生まれで、創業者・遠藤栄松氏は伯父にあたる。大学卒業後はサッポロビールに就職し、50歳の時に遠藤氏からの提案で遠藤製作所へ入社。同社顧問や取締役副社長などを経て、2018年に代表取締役社長に就任

遠藤製作所は1950年設立。金属加工業の集積地として知られる新潟県の燕三条地域で、当初はミシンの部品製造を行っていた。その後、洋食器や金型なども製造し、60年代からは現在も続けるゴルフクラブヘッドの製造を開始。現在はゴルフ用品、医療機器、航空機部品を手がける「ファインプロセス事業」と、メタルスリーブと鍛造部品を作る「メタル事業」の2事業を柱としている。

同社の代名詞ともいえるゴルフ事業は堅調だ。以前はゴルフ人口の減少もあり苦戦を強いられていたが、新型コロナウイルス感染症禍で「密になりにくいスポーツ」として人気が再燃し、ゴルフ業界全体で需要が回復。さらに近年、エポンゴルフの追い風となっているのはYouTubeなどの動画サイトだ。

「ゴルフクラブのアイアンには鍛造と鋳造があるが、弊社で作っているのは鍛造。近年は動画サイトなどで『鍛造は打感が良い』と見直す動きがある」と解説するのは、遠藤製作所・代表取締役社長の渡部大史氏だ。ゴルフクラブは基本的に1年おきに新作を発売するため、波はあるものの「現在、製造数では新型コロナ禍の頃よりも増えている」という。

同社のゴルフ事業は、数量ベースでは大手メーカーのOEMが大半を占め、自社ブランドの「エポン」は一部にとどまる。しかし、店舗でフィッティングを行い、ヘッドとシャフトの組み合わせをカスタマイズして販売する、いわゆる「地クラブ」に魅力を感じるゴルファーも多く、前述の鍛造アイアンの人気から知名度は高まりつつある。

「S:Rシリーズ」 画像提供:遠藤製作所

こうした中で7月に投入したのが、既存のゴルフクラブとは異なる構造を搭載した「S:Rシリーズ」だ。従来の金属ネック構造をなくし、同一レングスのクラブよりもシャフトがしなる長さを確保している。大手メーカーでは踏み込みにくい挑戦も、小回りの利く「地クラブ」だからこそ可能になった。渡部氏も「全く新しい、今までにない機構のゴルフクラブ。個人差はあるので断言はできないが、実際よく飛ぶ」と太鼓判を押す。

OEMがメインとはいえ、利益率などの面では自社ブランドの重要性も高い。「S:Rシリーズ」のような独創的な新商品やブランドの展開で、今後は自社ブランドの比率を高めていきたい考えだ。

 

医療・航空分野は新たな柱に

5月に完成した医療・航空機第三工場

遠藤製作所が医療分野に参入したのは2009年。手がけるのは股関節や膝向けの人工関節などで、「チタンを鍛造して削り出すという点では、ゴルフクラブに近い。材料は違うが、これまで培ってきた金属加工の技術を生かして参入した」と渡部氏は語る。

一方で航空機分野は2019年ごろから本格化。やはり長年の鍛造技術を生かし、航空機のエンジンに用いられるブレードなどを作っている。納入先は国内の重工メーカー。世界的に飛行機が不足し、特に中型機の需要が高まっている中で、同社にも強い引き合いがある。

ゴルフクラブや鍛造部品はタイの工場で生産されているが、特に高い加工技術が求められる医療・航空事業は、主に燕の本社工場が担う。数年前までは売上の大部分はタイ生産での事業が占め、国内は1割程度だったが、医療・航空機分野の拡大により、国内の比率は短期間で2割ほどまで高まった。今回竣工した新工場も、今後の生産増に備えた投資の一環だ。渡部氏は「既存工場の老朽化対応もあるが、これから生産を伸ばしていく中で、それに耐えられるように準備しているところ」だと話す。

さらに同社は2025年に本社を建て替えており、旧本社跡地にも医療・航空機向けの工場建設を検討している。時期はまだ正式決定ではないものの、早ければ2027年ごろの具体化も視野に入れる。昨今の建設費高騰は重荷だが、「(医療・航空分野で)もっと作ってほしいという声は非常に多い」と手応えを語る。

渡部氏自身もゴルフが趣味だという

ミシンの部品から始まり、食卓の洋食化とともに洋食器を、ゴルフの普及とともにゴルフクラブを製造。培ってきた技術はメタルスリーブや人工関節、エンジン部品など、様々な分野へ進化した。消費者向けで目立つゴルフクラブの事業が有名だが、昔から柔軟で多角的な企業であり、一時ゴルフクラブの需要が落ちた時期にはメタルスリーブが会社を支えた。

同社の歩みを踏まえ、渡部氏は「足元では医療・航空分野を伸ばしつつ、新規事業も考えていかなければならない。弊社は、ずっとそれを繰り返してきた」と力を込める。時流に乗り、大きく躍進する遠藤製作所。新工場の竣工はその象徴ともいえるが、渡部氏の視線はすでに「その次」にも向けられている。

 

【関連リンク】

遠藤製作所 webサイト

エポンゴルフ webサイト

 

(文・写真 鈴木琢真)

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