【記者ノート】上越ゆかりの陶芸家・齋藤三郎と画家・倉石隆を常設展示する個人美術館「樹下美術館」、地元や話題の美術家の作品なども随時展示
江戸時代から地域医療に携わった杉田家で、館長も子どもの頃から自然の草花描くのが大好き、常設展示は斎藤三郎の陶磁器、倉石隆の絵画

樹下美術館の杉田玄館長のインタビュー
杉田医院から約5㌔程離れた大潟区城野腰に『樹下美術館』を開いたのが2007年(平成19年)6月で、もう既に20年近く経った。樹下美術館では、大正2年旧栃尾市生まれの陶芸家の初代斎藤陶斎(齋藤三郎)の陶磁器と、大正5年上越市生まれの画家の倉石隆の絵画を常設展示する私設の個人美術館としてスタートした。併せて上越ゆかりの作家やいま話題の美術家などの展示も随時開催して来ている。
館長の父が窯焚きから収集した齋藤三郎「色絵椿文鉢」の絵柄を観て、「美術館造りたい」と

陶芸の展示ホール
樹下美術館開設のきっかけとなったのが、杉田館長の父が陶芸家、齋藤三郎の陶磁器を窯焚きからたくさん収集して帰り、館長自身も「幸せの器」として絵柄も含めて、齋藤三郎の陶芸作品の虜になっていった。
特にその中にあった昭和20年代後半に作られた「色絵椿文鉢」を観た時、「この作品を核にした美術館を造りたい」、「多くの人に見せたい」との思いが確信に変わったのだ。「地味ながら麗しく、品がある」と評し、器と会話するようになったという。また、画家、倉石隆とはその夫人と館長はいとこ同士で、図録を見てすっかり作風に魅せられ毎晩のように眺めたとのことだ。
美術館もう一つの楽しみ、庭のテラスのカフェ

庭を眺めながらの陽光のカフェでの食事も魅力
住宅地や企業も近くにあるものの、小さな森の庭に囲まれた心が和らぐ隠れ家的スポットの素晴らしい美術館だ。設計は大潟区出身の“オンリーワン”の建築家、大橋秀三氏が担当した。コンパクトの中に、静寂さが漂う雰囲気を醸し出す設計だ。樹下美術館の楽しみは、展示鑑賞はもとより、額縁のような窓の向こうには美しい庭園が広がり、四季折々の花を眺める庭が心を癒してくれる。
外にはウッドデッキもあり、一面の田園風景も楽しめる。更にカフェスペースは地面が掘り下げてあり、通常より低い視点で庭を見渡せるという工夫もなされている。陽光のカフェテラス(レストラン)では北欧家具とアンティーク食器に囲まれた中で、ケーキやサンドイッチ、コーヒーなどのランチや軽食,スイーツなども楽しめる。そのためか、展示ホールとは別にそうした食事だけに訪れるお客も多いという。中には県外からもファンが訪れることもある。
子どもの頃から自然の草花を描いて来たことから、『山河は緑、人は山河』とのモットーを抱く
昔、小さなリュックを背負わされて満州から引き揚げて来たことも記憶のあるという杉田館長。医者になって半世紀余りになるが、子どもの頃から地元で咲く花々や植物などを画き続けて来た。医院に通院して来る患者さんを診るだけでなく、高齢化が進む中で外来診療や在宅患者の往診にも出掛けることも多い。
自然の緑が大好きという館長は今も『山河は緑、人また山河』と心に刻んでいるという。『夏は来ぬ』という唱歌の作曲家で知られる小山作之助も大潟区出身で、館長とも親族関係にあり、格別の想いがあるという。
中高校時代同級生と館長による『書と絵画展』

小さな森の中に立つ「樹下美術館」
樹下美術館では10月29日~11月16日、杉田館長の中高校時代の同級生(内山順一氏)の書と館長の絵画の『書と絵画の二人展』を開催予定だ。杉田館長は「80半ばというこの歳なので、“おかげさま展”というのでしょうか」と笑う。更に11月19~30日には『越後の信楽焼』として知られる長岡市の陶芸家、今千春の『古今に跳ぶ』展を開催する。
なお、樹下美術館は休館日が火・水曜日で、開館時間は11~17時、入館料は大人・大学生300円中高校生200円。カフェのみの利用も出来る。
竜 哲樹(にいがた経済新聞ライター)