【特集】「初音ミク」や「サンリオ」のコンテンツ制作も 新潟発XR企業Gugenka・首藤姫菜さん、開志専門職大学卒業生

株式会社Gugenka(新潟市中央区)のイラストレーター首藤姫菜さん

「好きを仕事にする」は夢じゃない。アニメやクリエイターの仕事は東京だけではなく、新潟県にもある。

「『好きだから描く』を続けていたら、それがいつか仕事につながることもあるんだって、私自身が実感しています」。そう話してくれたのは、アニメやキャラクターを活用したデジタルコンテンツ制作を手掛ける株式会社Gugenka(新潟市中央区)の首藤姫菜さん。

10代の頃からアニメやマンガが好きで「自分もこういう仕事がしたい」と思っていた首藤さんは開志専門職大学(新潟市中央区)のアニメ・マンガ学部に進学。2025年に卒業後、同社にイラストレーターとして入社し、2年目を迎えた。

描くことへの情熱を原動力に歩み続けてきた首藤さん。その思いは今、新潟から最先端のデジタルコンテンツを生み出す仕事へとつながっている。夢だった世界で挑戦を続ける、その姿を追った。

 

現実世界と仮想世界を繋ぐXRの技術を使って、さらにアニメを盛り上げる

イラストレーターをはじめ、デザイナー、プログラマー、エンジニアなど各専門職の人たちが仕事をしているフロア

首藤さんが働くGugenkaは、XR技術でアニメやバーチャルイベントを手掛けるデジタルコンテンツ制作会社だ。

XR(クロスリアリティ)とは、現実世界とデジタルな仮想世界を融合させる革新的な技術のこと。Gugenkaでは、イラストレーター以外に、エンジニアやアーティスト、アニメーター、デザイナーらが在籍し、最先端技術を活用して、日本アニメのデジタルグッズ制作・販売や、リアルとバーチャルを融合したイベントを企画・制作している。

初音ミク 夜空プログラム2025年キービジュアル

新潟では、2024年に新潟まつり花火大会と連動した演出「初音ミク 夜空プログラム」を実施し、約34万人が鑑賞した。2025年はサントピアワールド(新潟県阿賀野市)で、2026年はメディアシップ(新潟市中央区)を会場に同プログラムを予定している。

2025年「初音ミク 夜空プログラム」で首藤さんはレタッチを担当。レタッチとは3Dモデルをイラストとして自然に見えるよう修正していく細かい作業だ。

「Gugenkaでのイラストレーターの仕事は、キービジュアル用のモデルを『イラストっぽく見えるように』レタッチしたり、3Dに関わる仕事がかなり多いです。3Dチームと連携しながら、図面を描いたり、小物デザインをしたり、テクスチャの加筆修正をしたり、他にもイベント用のちびキャラを描いたりすることもあります」(首藤さん)

デスクでペンを握る首藤さん

同社では、好きなものを自由に描くというよりも「キャラクターをより魅力的に見せる仕事」の比重が大きい。技術が必要なのはもちろん、手掛けるアニメやキャラを「好き」なファンの気持ちを理解することが必要となる。

「原作ファンの方に喜んでもらえるように『このキャラクターなら、こういう表情が欲しいよね』と考えながら作っています。中には好きなキャラクター作品に関わる仕事もあり、驚きと共にファンとして積み重ねてきた知識が、そのまま仕事に活きる嬉しい瞬間もありました。もちろん、まだ見たことのないアニメであれば、資料もたくさん集めますし、原作らしさを大事にして向き合っています」(首藤さん)

卒業した開志専門職大学での学びは、イラストレーターとして働く今も活きている。

 

好きな分野の知識を深掘りして学べるアニメ・マンガ学部

首藤さんが学んだ開志専門職大学。アニメ・マンガ学部は新潟市中心部の複合施設「古町ルフル」にキャンパスを置く

ずっと好きだったアニメやマンガの作品に触れる中でイラストを描くようになり、「将来はイラストを描く道に進みたい」と思った首藤さん。最初は美術大学も視野に進学を考えていたが、デジタルイラストを本格的に学びたいという思いが強かった。そんな折、友人を通じて開志専門職大学を知った。

開志専門職大学は2020年4月、実践的な職業教育を重視する専門職大学として開学した。事業創造学部、情報学部、アニメ・マンガ学部の3学部を設置し、企業と連携した実践的な学びを特徴としている。

中でもアニメ・マンガ学部では、描く技術だけでなく、「物語芸術」を軸に企画や映像、広告など幅広い分野を学ぶことができる。また、在学中には600時間以上の企業実習を通して、現場に近い経験を積める臨地実務実習も用意されている。

吹き抜けのある開放的なエントランス。学生たちの交流の場にもなっている

高性能なパソコンを備えたフルデジタル実習室。学生たちはここで制作技術を磨く

首藤さんの入学の決め手のひとつは、オープンキャンパスで出会った経験豊富な先生たちの存在だった。入学後は、一年次の後半にマンガコース、アニメコース、そしてキャラクターデザインコースの3つの中からコースを選ぶ。首藤さんはキャラクターデザインコースを選び、学びを深めた。

ところが、ゼミで選んだのはイラストやデザインの教員ではなく、脚本・企画・プロデュース分野長の村井さだゆき教授だった。当時、首藤さんはある壁にぶつかっていたと振り返る。

「村井先生の『物語芸術論』を選択した当時、私は絵のスランプに陥っていました。技術的には描けるはずなのに絵がなぜか魅力的じゃない。もしかして『自分に中身がないからかもしれない』と感じていました。だから、よりいい絵を描くためにも、物語を作る力を学びたいと考え、村井先生のゼミを選んだんです」(首藤さん)

アニメ・マンガ学部 脚本・企画・プロデュース分野長の村井さだゆき教授。現役の脚本家でもある

教養系の授業を通して、物語や歴史、美術の背景を学び、「描く」だけじゃなくて、自分の絵にも深みが出た感覚を覚え、表現の幅が広がったという。

実は、アニメ・マンガ学部には、作画技術だけでなく脚本や企画、映像、広告などを専門とする教員も在籍している。マンガ・アニメを総合的なカルチャーを支える大学として、包括的に理解してほしいという考えから、脚本や企画、映像、広告、地域振興など幅広い分野のプロフェッショナルな教員たちから、アドバイスを受けることができる。

「首藤さんは最初から、作りたいものがたくさんあるという熱量を感じる学生でしたね。『ストーリーを軸にしたノベルゲームを作りたいので教えてください』と、自分から私のところへ相談に来てくれました」

そう語るのは、首藤さんの恩師でもある村井教授だ。

村井教授が手にするのは首藤さんの卒業制作。イラストに加え、物語づくりへの探究心も高く評価していた

「自発的に考えて来るところが、彼女の魅力のひとつだと思います。得意なところだけじゃなくて、伸ばしたい部分を学ぼうという発想や自己プロデュース能力もある学生さんでしたね。ストーリーの内容も、『本当に自分のやりたいことを見つけたら』とアドバイスをすると、完成度の高いSFの作品を生み出し、得意の絵心で表現していました。ゼミでは膨大な研究をして、物語として12万文字の文章を書きあげ、完結させたんです」(村井教授)

開志専門職大学ならではの、技術だけではなく、歴史やマーケティングなど幅広く学べる環境は、首藤さんにとっても大きな経験値として蓄積された。同時に、臨地実務実習での学びは入社後も役に立ったという。

「CMやゲーム、広告分野のイラスト制作をしている会社での実習では、人物の『素体』を描く練習をしました。会社で必要な基礎の基礎をここで体験し、鍛えられたからこそ、今の仕事につながっている感覚があります。学校と違って『企業実習だから、生半可なものは出せない』というプレッシャーもありました。企業では本当に『これできないの?』という反応をされるんです。その緊張感が、自分をかなり成長させてくれたと思います」(首藤さん)

他にも撮影現場を見学したり、さまざまな施設を訪れたりする中で、イラストを描くことが制作以外の仕事にもつながっていることを実感した。クリエイターの活躍の場の広さを知る機会になったという。

学生時代はオリジナルキャラクターを考案し、イラスト本や漫画本の制作に取り組む一次創作サークルに所属していた

「開志専門職大学は、『自分自身が豊かになる、人生が楽しくなる大学』だったなと思っています。出版やデザインなど周辺産業について知れたことで、作品の背景や関わる人への興味も広がりました。最初はこの業界って不安定なのかな、と思っていたんです。でも、マーケティングの授業で海外での受容や市場規模を知り、世界中に熱狂的なファンがいる価値ある文化なんだと実感できました」(首藤さん)

好きなことに全力で取り組み、実務経験のある先生方から聞くリアルな話、そして臨地実務実習で会社の実習や仕事に触れたことが大きな財産になったと話してくれた。

 

キャラを活かすために二次元と三次元の橋渡しを担う

最近はイラストだけでなく、ライブステージの図面制作も手掛けている

憧れのイラストレーターになった首藤さんだが、入社後、意外なところで苦戦した。それは、3Dモデルがイラスト映えするようにレタッチをする中で痛感した、イラストと3Dの感覚の差だ。

「例えば、歯の見え方とか、アクセサリーの浮き方とかイラストでは許される表現でも、3Dだと成立しないことがあるんです。『イラスト的な嘘は使えないんだ』と思うことや、『ここには制約があるんだ』『これは再現できないんだ』と、学ぶことばかりでした」(首藤さん)

首藤さんたちが手掛けた世界を3D化して動かしていく作業をするエンジニア

首藤さんの良いところは「わからないことを、そのままにしない姿勢」だと語る三林さん

現在の首藤さんの仕事は、バーチャル背景の図面を描いたり、背景をチェックしたりすることも多い。元々3Dの知識がなかった首藤さんは、手探りで作業してきた。そんな中、首藤さんの仕事ぶりを近くでサポートしてきたのが上司のイラストレーター、三林裕美さんだ。

「首藤さんは、すごく明るい雰囲気の方で、自分からコミュニケーションを取りに行ってくれます。弊社は、チームをまたいで連携する仕事がすごく多いので、自分から積極的に話しかけてくれるのは本当にありがたいです。チーム全体の雰囲気も良くしてくれるので、すごく助かっています」(三林さん)

イラストレーターの仕事を進める中では、絵を描くことが好きなだけでは難しい場面もある。というのも、XRの技術を駆使する同社では、日々新しい技術が出てくる。案件ごとに進め方が変わることも多く、臨機応変さが求められる場面も多い。

他の専門職の先輩たちと連携を取りながら仕事をしていく

「この仕事は、絵を描く上での基礎がないと、アニメ表現や図面に起こす段階で破綻が出てきたり、そもそも修正の意味が理解できなかったりするんです。でも、首藤さんは基本的なことはしっかり理解していると感じました。

3Dモデルを使ってグッズを制作する時は、グッズ化された時の見え方を想定して塗り残しや、線のはみ出しなど、細部も確認しなければいけません。そんな中、首藤さんはフィードバックを素直に受け止めてくれるので仕事も進めやすい。

今後はイラストだけでなく3Dなど他の分野にもどんどんチャレンジしてほしいですね。そうすると、できることが増えて『アニメーションもやってみたい』『映像も勉強したい』と、やりたいことって自然に増えていくんですよ」(三林さん)

最近は任せられる幅も大きくなり、お客様から「立体になるのが楽しみですね」と嬉しい声もかけてもらったという。

 

「好き」が仕事と創作の両方につながる

仕事の息抜きもイラストを描くことだと語る首藤さん

アニメでもマンガでもゲームでも、「もっと知りたい」と思える「好き」がある人ほど、その気持ちが武器になる。

「忙しくて身体的に疲れることはありますが、『大変だったけどやり切ったな』という達成感があります。入社後は『ミスに気づく目』も養われて、趣味で絵を描いている時でも違和感に気づけるようになりました。仕事で得た経験が、そのまま自分の創作にも生きていると感じています。

今後は3Dへの理解をさらに深めて、立体の魅力を二次元で表現したり、イラストを立体として成立させたりできるようになりたい。図面がCGチームによって形になり、ユーザーの反応が返ってきた時は特にやりがいを感じます。二次元と三次元をつなぐ存在を目指しています」(首藤さん)

今日も、首藤さんが手掛けたものが、最先端技術によって形になり、多くのファンへ届いていく。この「好き」の循環は、新潟から全国、そして世界へと広がっている。

 

(文・取材:坂本実紀)

 

【学校情報】

学校法人 新潟総合学院 開志専門職大学 紫竹山キャンパス
住所:新潟市中央区紫竹山6丁目3番5号

開志専門職大学 Webサイト

開志専門職大学は、2019年に創設された新しい大学制度「専門職大学」として、2020年に開学した。実践的な職業教育を重視し、専門知識と理論に加え、現場で求められるスキルや課題解決力を身に付けることを特色としている。

600時間以上の企業内実習や少人数制授業を導入しており、産業界と連携した実践的な学びを展開。専任教員の半数以上を実務経験豊富な教員が占めている。

現在は事業創造学部、情報学部、アニメ・マンガ学部の3学部を設置。経営、AI・データサイエンス、アニメ・マンガなど成長分野における専門職人材の育成を目指している。卒業時には「学士(専門職)」の学位が授与され、就職や大学院進学も可能な日本唯一の総合専門職大学だ。

 

【関連リンク】

「大学とは自らを磨き上げ、己を鍛え上げる場」各務茂夫学長 開志専門職大学で入学式 県内外から249人が新入学

【大学通信・就職率ランキング】開志専門職大学が実就職率全国4位、私立では2位に躍進 

「新潟にいながら世界へ発信できる人に」開志専門職大学、2代目学長各務茂夫氏インタビュー

こんな記事も