【空き店舗を地域の居場所に】新潟青陵大学の学生らがDIY、フレッシュ本町に「灯り場」プレオープン

「フレッシュ本町」の看板近くにプレオープンした「灯り場」(写真右側)
「地域の人の日常に溶け込むような場所になってほしい」──施設の整備に関わった新潟青陵大学(新潟市中央区)の学生の1人は、そう話した。
新潟市中央区・本町通の商店街「フレッシュ本町」に6月30日、「灯り場」がプレオープンした。新潟青陵大学の教員や学生が進めるプロジェクト「しもまち engawa」により整備された施設で、地域住民が気軽に立ち寄り、交流できる場所を目指している。
ごみであふれていた空き店舗を一新
同大学を運営する新潟青陵学園は2025年度、学生が地域に入り社会課題の解決を目指す「青陵ソーシャルイノベーション推進機構」を発足させた。これまでに、未利用魚を活用した料理を子ども食堂で提供する取り組みや、大学周辺の森林整備・海岸清掃などに取り組んでいる。
「しもまち engawa」もその一環で、大学のゼミや「コミュニティビジネス演習」という授業を履修する学生が中心となり、「フレッシュ本町」にある空き店舗を地域のコミュニティ空間へ一新した。年度替わりに伴い入れ替わりはあるものの、現在は2年生37人が中心的に関わっている。

「灯り場」の外観
同空き店舗はかつて衣料品店や中古品店を営んでいたが、数年前に廃業。プロジェクトを率いる新潟青陵大学福祉心理子ども学部社会福祉学科の三浦修教授は「店内はごみが山積みになっていて、地域の方から『何とかしたい』とお話をいただいた」と振り返る。学生たちは週に2回程度、多い時期にはほぼ毎日店舗に通って清掃や廃棄物の撤去に取り組んだ。一部の品はフリーマーケットで販売して活動資金に充てたが、店舗から運び出した廃棄物は約3,000キログラムにも及んだという。
内装設計は建築家、ベンチや本棚などの設置工事は地元工務店が担い、学生たちはシャッター塗装、左官による壁塗り、庭のデザインと施工などDIYでリノベーションに挑戦した。なお、同プロジェクトではクラウドファンディング(新潟市クラウドファンディング型ふるさと納税を活用した共創コミュニティ推進事業補助金)も行い、170万円の資金を調達した。

「灯り場」内1階の様子。学生たちはシャッター塗装や左官による壁塗り、庭のデザインと施工などに挑戦した

施設の天井には古い店舗の面影が残る
完成した施設「灯り場」は、伝統的な日本家屋の縁側のように「屋内と屋外の中間的な場所」をイメージし、近隣住民が「敷居ゼロで誰でもふらっと立ち寄れる」場所を目指した。現在はプレオープン期間で、正式稼働は10月からを予定しているが、日中は新潟市の地域おこし協力隊が常駐し、誰でも自由に利用できる。地域にフリースペースを設けることで、高齢者の居場所づくりや孤立防止、子どもの放課後支援などにつなげる。
三浦教授によると、こうした「地域の憩いの場」としての役割だけでなく、ゼミや授業の拠点として活用していく予定だ。また、正式稼働後は学生によるカフェの出店やイベント開催も行い、地域との交流を進めていく。「高校生や地域の小中学校の児童生徒も、ここで何か活動できるようにしていきたい」と三浦教授は話す。
また、入り口近くの本棚「engawa文庫ゾーン」には今後、北前船や下町文化の資料、「昭和レトロ」な写真を配置するほか、寄付型本屋・めぐる本屋(新潟市西区)の出店などを予定している。
これからも地域の日常に溶け込む場所へ

6月30日のプレオープンイベントでは、学生たちが施設を紹介した

新潟青陵学園の篠田昭理事長
6月30日昼に実施されたプレオープンイベントには、新潟青陵学園の篠田昭理事長ら大学関係者のほか、商店街関係者や行政関係者、地域の学校の教員なども参加。式典ではなく「空間を体感する」機会として開催し、参加者はコーヒーを片手に学生たちの解説や案内に耳を傾けた。
あいさつに立った篠田理事長は「当初は廃棄物の課題があったが、学生たちが一生懸命きれいにしてくれた。この場所を地域の皆さんにも使っていただき、一緒に賑わいの空間にしていきたい」と語った。

「しもまち engawa」の取り組みを解説する学生

新潟青陵大学では、地域の企業と連携し、水族館・マリンピア日本海のトドのエサ残渣を堆肥化して作物を育てるプロジェクトも実施している。こうして作った農作物や加工品も、「灯り場」で販売していく予定だという(写真はプレオープンで、作った玉ねぎを配布する様子)
2026年度から「しもまち engawa」に参加している新潟青陵大学の2年生4人は、「ここの壁は、一回全部漆喰を塗った。2年生の仕事としては、それが一番大変だった」と教えてくれた。一方で、「作業をしていると『何しているの?』や『これからどんなふうになるの?』と地域の方々が話しかけてきてくれた。それがきっかけでいろいろと話をすることもあった」と笑みを浮かべた。
今回のプロジェクトを進めている「コミュニティビジネス演習」について1人は「地域に根ざした活動を以前からしてみたいと思っていた。この授業を取ることで、今後の職業選びにも生かせると思った」と話す。また、プロジェクトを経て「使われていないものだからと終わりにせず、価値を探し出して活かしていくことの大切さを学んだ」と話す学生もいた。
今後の「灯り場」については「その人の生活や日常に溶け込む場所になってほしい。私たちが『こういうふうに使ってください』と指定せず、地域の人に独自の解釈で利用してもらえたら」と思いを込める。あわせて、「作業していると高齢者の方と会うことが多かった。高齢者の中には歩くのが大変だったり、外出するのを億劫に思う人も多い。この場所が外へ出るきっかけになり、健康維持にも役立てば」と期待する学生もいた。
施設の完成をゴールとせず、学生が地域とつながるきっかけとなる点や、学生本人が語ったように、地域の人が自ら関わり方を見つけていく「余白」を大切にしている点もこの取り組みの特徴だろう。これからのイベント開催などを通じて、「灯り場」がどのように地域の暮らしに溶け込んでいくのかが注目される。
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